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和菓子屋の娘
干し柿がほぼ完成しました。
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干してから2週間が経過し、現在はあんぽ柿のようにやわらかく食べごろです。
中はトロトロで自然の甘味の奥行きに感動しきりです。
自然が作り上げた和菓子ですね。
もう少し固めのものも作ってみようと、何個かはまだ吊るしておくことにしました。
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和菓子と言えば・・・・・・
東京の実家は小さな商店街で和菓子屋を営んでいました。
朝は餡を練る甘い香りと餅つきの音で目覚めていました。
繁忙期は小学生でも立派な働き手。
子どもの頃からお嫁に行くまでずっとお店を手伝っていました。
NHKの連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」までは時代は遡りませんが、まさにヒロイン安子のような暮らしでした。
和菓子の世界は四季と共にあります。
1月のお雑煮のお餅、新年を祝う花びら餅、お年賀のねりきり・上生菓子から始まり
2月は節分、椿の花や初春を告げるウグイスが愛らしく並びます。
3月になると、雛祭りの道明寺・桜餅や春のお彼岸のおはぎ、卒業式の紅白饅頭やお赤飯。
4月、春爛漫の季節には、お花見や花祭りのお団子、入学式の紅白饅頭やお赤飯。
5月と言えば、こどもの日の柏餅やちまき、初夏の訪れを知らせる鮎が泳ぎ始めます。
6月、夏至の頃に水菓子の季節が始まります。水羊羹や水まんじゅうが涼を誘います。
7月の半夏生には邪気払いの大納言。七夕には透き通る寒天菓子、夏祭りにはひんやり冷たいかき氷。
8月のお盆には「精霊馬」「牛馬」のナスとキュウリ、果物を模ったお菓子や落雁を籠に入れて先祖の霊をお迎えします。
9月になれば、秋のお彼岸のおはぎ、十五夜さんはお月見団子、敬老の日のお祝いの贈り物。
10月の紅葉の季節は、ねりきりのモミジや栗羊羹など和菓子も秋の装いに。
栗がまるごとゴロゴロ入った大きな栗饅頭は人気でした。
11月、七五三には千歳飴、口に入れるとすっと溶けるお子様に人気の可愛らしい和三盆。
12月、和菓子もクリスマス!!苺大福の登場です。
師走は年末のご挨拶の折り詰めが人気でした。最中や月餅、桃山や酒まんじゅう、年末年始ように日持ちするものが人気でした。
毎月何かしらの行事があり、自分事ではないのに毎月お祝い事があるようでした。
父の仏前にはいつも季節のお菓子が供えられていました。
和菓子屋を営む前、父は喫茶店を営んでいました。
カムカムエブリバディのカフェ「ディッパーマウスブルース」のような感じだったのでしょうか?
私が生まれる前のことでした。
そして、私が生まれた時にはケーキ屋さんに変わっていました。
ケーキ屋さんの屋号は「ポエーム」。
フランス語で「poème」は”詩”と言う意味です。
父は詩を綴るようにケーキを作っていたのかもしれません。
私が詩を好きなのも父の遺伝なのかもしれませんね。
時々文章を綴りながら父の言葉のように感じる時があります。
そして、いつの日か父は年中行事の多い和菓子店の方が良いのではないかと思い始め、新しいお店をオープンするために奔走し始めました。
寝る間もなく動き回り、疲労がかなり重なってしまっていたのでしょう。
ある日突然倒れ帰らぬ人となりました。
享年42歳。心臓疾患でした。
新築の店舗付きの住宅がほぼ完成するのと同じ頃、これからと言う時に。
愛する妻、幼い子供たち、新しいお店を残し、さぞ無念であったことと想います。
父亡き後、母と父の姉弟や職人さんたちが遺志を継ぎ和菓子屋をオープンし切り盛りしていました。
職人さんの子どもたちも含めると、総勢13人の大所帯でした。
職人さんも皆高齢となり数年前に閉めてしまいましたが、賑やかな日々を今でも懐かしく想い出します。
実家の母と姉に贈る分の干し柿をひとつずつ包みました。
こんな作業をしている時は和菓子屋の娘の血が騒ぐのです。
お饅頭を包んだり、柏餅に葉を付けた子ども時代に想いを馳せ、ひとつひとつ心を込めて包んでゆきます。
味だけではなく、見た目も美しく丁寧に丁寧に。
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こんな時にふと感じるのですよね。
父が横に座って見つめているようで、
心がぽかぽかしてくるんです。
父がニッコリと微笑んでくれるように
話しかけてみたりして・・・・・・。
お重に積めて完成!!
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何となく始めた干し柿づくりでしたが、父がこの時間をプレゼントしてくれたように感じました。
昔を愛おしむ時間、母や姉を思う時間、そして、父を傍に感じる時間を。
幻のようで、でも確かにここにある優しい時間でした。
Thank you always!
You are my hero, Dad!
Forever・・・・・・