にじさんじARKを振り返る ~アイランド編~
去る4月15日、にじさんじ所属ライバーの本間ひまわりより、ARK新サーバーの告知配信が行われ、にじさんじARKシーズン2『ラグナロク編』がスタートすることが決定した。そこで今回は、2020年の2月から4月初めにかけて行われたシーズン1『アイランド編』を、時系列順に振り返ってみたい。
シーズン1は、白熱する戦争とエモーショナルなドラマが繰り広げられ、Twitterのトレンドやニュースに取り上げられるなど、大きな反響を呼ぶ結果となった。今回の記事を通して、一連のできごとや思い出を振り返るきっかけにしていただければ幸いである。
序章 にじさんじARKの夜明け
2020年2月。VTuberの同業事務所であるホロライブ界隈でARKが社会現象化しつつあった頃、にじさんじでもARKを遊び始めるライバーが現れた。
プレイ時間が四桁にも達する廃人ARKプレイヤーだった本間ひまわりは、後輩で仲の良いラトナ・プティを誘ってARKのテストプレイを配信した。
美麗なグラフィックで表現された広大な自然と、どこからでも凶暴な恐竜に襲われる危険な環境。Minecraftのようなゆったりした状況とは異なる、常に張り詰めた緊迫感とシステムの難解さから、リスナーの多くはにじさんじ内での流行に懐疑的だった。
「ゲーム慣れしたライバーであれば、やっていて面白いかもしれない。けれど、操作のおぼつかないライバーはゲームを進められずに飽きるだろう」
彼女たちの熱意はともかく、あくまで他所の便乗に終わるコンテンツではないか、口に出さずともそう思っていたリスナーは少なくなかっただろう。
当時、本間ひまわりは体調不良から復帰してそう日も経たない時期であったし、ラトナ・プティもMinecraft内でFPSゲームのマップ再現の建築に取り組んでおり、こちらの作業配信の方が望まれていた。また、公式のライブイベントも全国各地で行われている最中であり、年度末に向けてライバーの大半が多忙を極めていた。
実際、サーバーが本稼働を始めてから一週間ほどは最初の二人でそれぞれ遊んでいることが多く、ゲームの進行も緩やかなものであった。この頃は手探りで建築や農業を行っていたこともあって、危険の多いMinecraftという印象が強かったように思う。他のライバーがサーバーに参加してもなお、しばらくはその傾向が現れていた。
初期のリスポーン地点を含めて未開地が多かったために、危険度が高い恐竜との遭遇も多かった。苦労して捕らえた草食竜をアルファ個体の肉食竜に全滅させられたり、押し入られて住居を破壊されたりといったハプニングに見舞われ、資源や資材を揃えることもままならない。そうした状況が半月近く続いた頃、状況が一変した。
開拓時代 退かない新人と戦争への気運の高まり
徐々に参加者が増えてきたことで、初期リスポーン地点の周辺には多くの建築物が並ぶようになった。浜辺を埋めるように林立するライバーの家や共有ハウスのおかげで恐竜の出現が減り、比較的安全な環境が狭い範囲に生まれた。
初期の活動範囲で理不尽な襲撃が減り、新規参加のライバーは安全に降り立つことができるようになった。しかし、その一方でライバー達は建築可能な場所と資源に困るようになった。恐竜と同様、オブジェクトの生成が建築物に制限されたことで、木材や岩石といった採取できる資源も住居付近から姿を消してしまったのである。
また、密集して各ライバーが建築を行ったことで、お互いに範囲を制限し合う状況も生まれてしまった。崖上に陣取った加賀美ハヤトと、崖下一帯を拠点にしたイブラヒムとの間で生じた確執は、非常にわかりやすい一例と言えるだろう。
この時、後輩のイブラヒムには二つの選択肢があった。
一つは加賀美ハヤトの立場を尊重し、同盟を結ぶか自身の拠点を移築するという無難な解決法である。当時はほとんどのプレイヤーが文明的に進んだ状態ではなく、作り直しが効くレベルの小さな住居しかなかった。そのため、イブラヒムが相手を立てようと思っていればできないこともなかったのである。
もう一つは、自身の領有を明確にした上で、対等に交渉なり戦闘なりを行って決める方法である。真っ向から先輩に楯突くという形になってしまうため、言動次第では彼に対する反感や敵意が強まる危険もある。しかし、彼はこちらを選択し、崖の上下を挟んで軍拡競争を繰り広げることとなった。
イブラヒムが正面対決の姿勢をとったことで、平穏な開拓ゲームに終わるかに見えたにじさんじARKは動乱へと舵を切り始めることとなった。
ゲーム攻略に長けた元ゲーマーズの叶や、一人淡々と開発を進めていた渋谷ハジメは、保有する技術や装備の差を周囲から注目されるようになっていく。また、本間ひまわりとラトナ・プティも共に新たな拠点を構え、強力な恐竜達を多く囲う勢力となっていた。
更に、長時間配信で作業を進める夜見れなの下に、ARKを遊んでみたいと参加したライバー達が集まっていく、巨大な組織が形成された。彼女の認識では、新規参加者のサポートや互助関係を目的とした勧誘であったのだが、独立したトライブ(アイテムや設備などが共有できる集団)で活動するライバーからは、大集団を抱える頭目として警戒されることとなった。
加賀美ハヤトがにじさんじARKの強者となった四人を『四皇』と呼んだことを契機に、サーバー内は情勢を左右する『四皇』と下剋上の野心溢れるライバー達とが繰り広げる戦絵巻として、多くのリスナー達に注目されるようになる。ここにきて、にじさんじARKはホロライブからの流行と一線を画すコンテンツとなったのである。
最初の戦争 ヨルミナティVSアルファユニオン
戦争の機運が高まっていることを受け、本間ひまわりは時間帯制限付きのPvPモードを導入すると発表した。以降、加賀美ハヤトが属する『アルファスレイヤーズキングダム(ASK)』は、戦争を見据えて本格的に軍備を強化していく。
一方、対人バトルの発生によって、にじさんじARKをプレイしづらくなることが危惧され、初めて『四皇』が一堂に会することとなった。共有ハウスに集まった彼らは今後発生するであろう戦争についての検討を行い、四者による取り決めを結んだ。
しかし、同時期に発生したASKによる拉致監禁事件が『四皇』となった夜見れなとの対立を生んでしまう。その後の会談においても、ASKは夜見側で参加した天宮こころを監禁するなど、無法行為を重ねる。結果、夜見れなからの正式な宣戦布告が行われ、史上初のサーバー内戦争が勃発することとなった。
圧倒的な人数差や置かれた立場から、当初は不利と見られていたASKだったが、他トライブへの巧みな交渉、イブラヒムとの信頼関係の構築など、各方面に調略を巡らして軍事面での逆転を達成。また、戦争のルールが前線拠点を新たに作る野戦方式で決定したことで、拠点の不備や物資喪失のリスクを無視して戦える状況となった。
一方の夜見れな率いる『ヨルミナティ』にも、ASKの多重契約を快く思わなかった叶から支援が行われ、フリーだった葛葉が傭兵として参戦するなど、戦力差を埋める要因が加わった。同時に、トライブ間の対立で始まったこの戦争は、『四皇』達の代理戦争の様相を呈することとなる。
当日になってもなお、ASKは兵器を売りにやってきたアルス・アルマルを自陣営に引き入れるなどの策謀を講じて万全を期していた。一方、ヨルミナティの方では輸送時のトラブルや報連相の欠如によって、本来の力を引き出せない事態に陥っていた。
しかし、決戦の火蓋が切られると序盤は互角か、ともすればヨルミナティの方が優位に立っていた。日頃からFPSを嗜む葛葉が銃器で遊撃に徹する中、頑丈に武装した恐竜で防衛地点を固めていた彼らは、直前のごたつきを含めてなお十分に抗するだけの戦力があった。
戦況を一変させたのは、新人ライバーであるメイフのメンバー達だった。迷走の末突入してきたフレン・E・ルスタリオによってヨルミナティの本陣が襲われ、出番待ちの貴重な戦力を喪失。追い討ちをかけるかのごとく、前線に出た航空隊もイブラヒムによって殲滅されてしまう。葛葉の叱咤激励や移動要塞の雄々しい抵抗もむなしく、拠点を破壊されたヨルミナティは敗北した。
戦間期 強者三つ巴の成立と技術文明の成熟
ヨルミナティの参戦メンバーのうち、緑仙と奈羅花は叶の提案を受けて『猟友会』の身柄預かりとなった。また、賠償の物資を工面する条件として夜見れなの脱退と猟友会入りが決定。これらをもって、庇護組織としてのヨルミナティは解体されることとなる。
一方、戦争前から葛葉と密談を重ねていたラトナ・プティは、『四皇』の片腕の立場を離れ、彼と共に獲得に動くと表明。本間ひまわりとのトライブを解消することとなった。葛葉もまた、昔からのよしみでARK内での同盟関係を持っていた叶と決別。これにより、ASKとも猟友会とも系統の異なる、第三の勢力『アレクシード・ファミリア(AXF)』が新たに成立する。
最初の戦争を終えたにじさんじARKは、トライブの合流と消滅を経て、東西北三つ巴の勢力間闘争に移ることとなった。渋谷ハジメと合流し西部の大同盟となった『ジュラシック・アルファ・コーヴァス帝国(JaCK)』、北方の大地に基地を置いた『AXF』、そして歴戦の猛者と戦闘に長けた人員が揃った『ラベンジャーズ』こと『猟友会』。歩みを一つ違えれば全土が戦場になるとさえ語られる緊迫状況の中、島の各地で資源の収集と戦力の拡大が進められていったのである。
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