マガジンのカバー画像

妄想書簡

10
いつか、どこかで誰かが誰かに書いた手紙を妄想して書く。
運営しているクリエイター

2014年5月の記事一覧

妄想書簡 工具箱の裏に

妄想書簡 工具箱の裏に

息子よ。もう片方の眼に完璧に似ることはない。

お前のその両眼は決して同じ景色を映さない。

3度程ずれた世界を投影する。この差異が右目と左目の生き方を変えていく。そのずれを感じたら一人前。

ずれなく見てきた隻眼をじっと見ろ、無骨な輝銀鉱がみえてくる。

義眼職人 から 義眼職人へ

妄想書簡 8/31日消印

妄想書簡 8/31日消印

この手紙にはさして意味はありません。手紙を読んで悪しき気になるやも知れません。でも書かせてもらいます。この紙タバコアナタの吸う銘柄とは違うことは承知で…私は紙タバコがいつかアナタと口づけすると想いタバコを巻いているのです。

(煙草巻きから酒屋の若旦那へ)

妄想書簡 買い物の書き置き

妄想書簡 買い物の書き置き

ネギ
白菜
豚肉
リチウム電池2個
アルミニウムイオン電池
作動油
貴方ってリチウムでよかったかしら?もし他の物なら別の買ってきてくださいね。

妻より

妄想書簡 宛先不明

妄想書簡 宛先不明

名を売り歩いていると、なぜ名があるのかと血が巡る。

呼応したいから名があるのか。

明日恋い焦がれたアナタの名を売る。

この手紙も届かないことを知って、恋名をパンに替えるのです。

さもしい私の名を忘れずに。

※王立郵便 未発送書簡 宛先不明。3年保管を過ぎたら破棄すること。

妄想書簡 Schneewittchen

妄想書簡 Schneewittchen

この世界の隅で生きることも死ぬこともできずにいる君はきっと絶望なのだろうか。このことが僕の医師としての死生観を揺さぶる。完璧なエンバーミングに成功した歓喜よりずっとこのままでいる君のことを思い憂鬱が煙を巻く。

アルフレッド・サラフィアからロザリア・ロンバルドの棺へ