Freedom's Cup 2022 ライブ観戦
9月23日に、フリーダムズカップと言う名前の競技が、飛天のフロアで開かれました。トップの写真は、有料配信のほう(後で書きます)の、スクリーンショットです。
フリーダムズカップは、ブラインドダンスを支援しているバルカーさんがスペシャル後援されているそうで、この日は、ブラインドダンスの人たちがたくさん競技にエントリーされていました。障がい者の数を考えると、本当に凄いことだと思います。
実は、視覚障がいのある人たちと、聴覚障がいのある人たちの数は、身体障害(がい)者手帳を取得している数だけで判断するとだいたい同じぐらいなんです。これは、厚生労働省の5年ごとの統計があります。それによると、視覚障がいは31万人ぐらい、聴覚障がいは34万人ぐらいということがわかります。日本の人口が1億2400万人ぐらいなので、その割合で考えてもらったら、障がいダンサーのエントリーの数が凄いということがよく分かると思います。今を生きている人でダンスに親しむ人がほぼ参加しているという感じです。そのために配慮を尽くし、準備された場ということでもありますね。
さて、私はブラインドダンサーの方と、ブラインド×デフでデモンストレーションというか、競技ではないほうで組ませてもらって、2022年5月に東京で発表する機会をいただきました。なぜそうなったのか、これは運命のような感じですが、今回はその話ではないので割愛します。
そのブラインドダンサーの方も当然、フリーダムズカップに出られるということで、情報保障はないけれど初ライブ観戦、ということになったのでした。その様子を書こうと思います。この方ですよ!と100ポイントぐらいのフォント(字)でお伝えしたいところですが、プロの方ではないので、ここではお名前はメンションしないことにします。ふるえる手でYouTubeのライブをぽち、としたのでした。
情報保障(手話通訳や文字、字幕など、きこえない人に音声の情報がわかるように視覚化された支援)がないことは初めから分かっていたので、ここではそのことに対する直接的な文句というかクレームは言いません。それが目的ではないです。でも、どういうハプニングが起きたのか、どういうストレスがあったのかをお伝えすることで、どういう支援があればきこえない人たちが少しでも一緒に楽しめるかを分かってほしいと思い、書くことにしました。毎回、文章が長いのですが、どうぞお付き合いください。
まず、ブラインドダンスのラテン部門。こういうふうに、エントリーの名前と背番号が画面に出てきたので、MC(司会)の言うことがわからなくても画面に目を凝らして見つけ出すことができました。
こうしたことも「情報保障」のひとつとなるんです。とてもありがたいです。私もずっと音の情報のないYouTubeを見つめていることはできません。欲を言えば、ここに種目の名前のキャプション(ルンバとかダンスの名前)があると、ダンスに興味のあるきこえない人たちも、もう少し、楽しめる幅が広がると思います。今のままだと、きこえない人には入口が狭いのは確かですね。もうすこし門戸が開かれていくことを望みたいと思います。
さて、ブラインドダンサーのみなさんは、とても楽しそうに、生き生きと躍られていました。デフダンスはこういうふうに競技をするほどには数が集まっていないので、少なすぎて、仮に何かやるとしても逆に人間関係にひびが入ってしまいそうです。私も今のデフダンスの人口だけで競技をすると言われたら、ちょっとそれはどうかなと思ってしまいます。
ラテン種目のあとは、ボールルーム部門といって、スタンダート、いわゆるワルツとかの種目で、長いドレスを着て踊るというのがあったのですが、「ブラインド部門のYouTubeライブ配信はラテンだけ」ということを私がわかってなくて、ハプニングが起きました。中継がぜんぜん始まらないし、チャットにも何も出ないし、MCが延々しゃべるだけ。何言っているか分からないMCのしゃべりの画面をちらちらと見つめること20分、30分。ちょっと目を離して浮世の用事をしておりました。
そしたら、出場されたブラインド部門のペアの方からLINEの返信が返ってきて、ボールルーム(スタンダード)の順位が出たと書かれているではありませんか。
(うそ、終わったの…いつの間に…見たかったのにワルツ!)
心の中で絶叫です。それをすぐLINEに打って伝えたら、聞いてくれたみたいです。
「ラテンだけだって!」
と返信が来ました。つまり、放映されるのはラテンだけだったのですね。なぜなのかはわかりません。そこは大人の事情があるのでしょう。でしたら、ひとこと画面にテロップを、またはチャット画面にさらっと、「ブラインドのボールルーム部門は放映しません」と書いてあればと思いました。見れると期待していただけにがっくりときました。というのは、私はスタンダードの種目が好きだからです。ブラインドダンサーたちの表現力を見たかったです。
そうこうしているうちに、もうひとつハプニングがありました。それは、フリーダンスでときどきお世話になっているところのプロのダンサーさんがSNS上で、フリーダムズカップで出演されるタイトルを発表されていて、それが私的にとてもユニークだったので、ぜひ見たいなという気持ちがありました。直前に迷惑だとは思ったのですが、情報がないので本人にDMして、出演の順番を聞いて教えてもらいました。
しかし、ブラインドの種目がちっとも始まらないので、私が浮世のほうに目を移して、画面に戻った時は終わってしまっていたのでした。出演のプロのダンサーは、その先生ともう一人ぐらいしか知らないので、ちょっとがっかりというかかなりがっかりして、ザ・セカンド・絶叫タイムとなってしまいました。絵文字で言うならあのムンクのやつです。
あまりに悔しいので、その後、とんでもない行動に出まして、1000円の課金をして、情報保障がないのに有料配信観戦に挑戦するということになったのです。その間に、先ほどのプロの先生から連絡がきて、Twitter見ました、今日なら配信見れますよとリンクを教えてもらいました。千葉テレビは関東しか見れないから無理です、ととんちんかんなことを答えて送られてきたリンクをクリックしたら、なんと、さかのぼってみることができました。こういうことができる、ということを私は知らなくて、いろいろと勉強になります。音声も音楽もきこえないので見つけにくいと思ってくださったのか、わざわざタイムも教えてくださりました。それでタイムバーをスクロールして見つけることができ、すっきりしました。フォローありがとうございました。
さて、有料配信のほうです。字幕の無いテレビを見るようなものです。情報保障してほしいですね。でも、ないとわかって見ているので、文句はいいません、と見始めたけれど、やはり情報保障がないのは悲しいです。ITの技術をもって、ここはMCのマイクを接続して、音声認識を無修正で流すぐらいはできるのではないかと思うからです。関係者の皆様なにとぞご一考くださいませ。
スマホで音声認識をパソコンのマイクにたてかけましたが、MCの語りのほうは全然というかほぼ認識しませんでした。家族は聴こえるので、ちょっと呼んで手話通訳してもらったら、まったく違ったので音声認識結果は信用ならないということになりました。じゃあ家族が通訳すればいいじゃないかと思われるでしょうか。家族にそこまでの負担を毎日かけるわけにはいきません。日常的にもっとエセンシャルな部分、たとえば買い物や外食の時のやりとり、もう少し重くなると緊急の病院での通訳などはお願いしてしてもらっていますが、趣味のことにまで巻き込むと、家族の人の自分の時間がなくなります。そこは今日の本題ではないので割愛して、ああ、そんな感じなのね、もういいよとすぐ解放しました。
そんななか、私がすごく感動したペアは加治屋貴士・清水舞組の先生たちのダンスです。コミカルで、劇というかダンスのなかで劇のように会話しているのが表情からわかりました。そしてそれが、ろう者の会話みたいで凄く分かりやすかったんです! 手話ではないだろうけれど、『何!』という手話がそのまま入ってました。男性と女性のかけあいに、思わず吹き出して笑ってしまいました。デフの人たちにはぜひ見てもらいたいです。
加治屋先生とは、関東在住中、どこかでお会いしたかなあ?と思います。お名前は最近、別の先生に写真を見せてもらって聞いて分かったのですが、もしかしたら、イベントのときに踊ってもらったことがあるかもしれません(もし、ちがってたらすみません)。
1位2位3位に入られたダンサーさんたちは、どれも素晴らしいダンスでした。『黒猫のタンゴ』は優勝おめでとうございます。私も黒猫役をやりたいなあと思って、猫らしい動きに見入ってました。
引退会見は、なぜか音声認識が少しまともに機能していました。きっと、しーんとした会場だからマイクの声がきれいに通ったのだと思います。
今回、きこえないお友達に何人か、無料配信のYou Tubeのリンクを送りました。でも、情報保障がないというものをお知らせするということが、とても心苦しい感じがしました。きこえない人たちも楽しみたいけれど、字幕や手話通訳がついたものを選びます。そうでないとわからないからです。そういうふうに視覚的な情報サポートを必要とする人たちがいるということを意識して行動に移してもらうためには、どう取り組めばダンスの世界は開けていくのでしょうか。ダンスの世界に関わり続けている間は、当事者としてこのことに向き合い、考えていきたいと思います。こうして発信するのも、私としてのソーシャルアクションのひとつです。
チャットの画面があったけれど、とくに誰かが情報保障のことを意識して打ち込む、ということはなかったようです。いちおう、無料配信のときに、きこえないけど見てますみたいなことは書き込みをしました。でも、何もアクションがなくて、そういうことに慣れてないんだろうなあと思います。私なら、たとえば手話がわからないですと言われたら、チャット画面に文字を打ち込みます。ふだんからそういう行動様式がある感じですね。ですから、どなたか、きこえる人がこの課題に気づいて、架け橋となってくださると嬉しいです。
歌もありましたね。歌はちょっとよくわからないので、画面から目を外して別のことをしていました。最後まで中継はつないでいたけれど、ミニチュアパンを作っている最中だったので、ワークデスク周りでニス塗りやトップコート塗りをしていました。写真は、工程を終えてベランダに干してるミニチュアクロワッサンの様子です。ピントがきれいに合ったので載せておきます。
飛天のフロアに自分が立つことはあるのでしょうか。それはわかりません。神のみぞ知る、です。ですが、私はチャンスのあるところには行きます。そういう心構えです。デフダンスとして、きこえない自分という存在を届けること。それは、きこえなくても、さもきこえるかのように踊ることではありません。きこえないことを、きちんとアピールする方法を考えたいと思うし、伝えたいと思います。
フリーダムズカップに出られた皆さんのダンスから、ひとつひとつヒントをいただきました。ありがとうございました。
この記事を読まれた方は、きっと、デフダンスのことをそれぞれの形で応援してくださると信じています。どこかでお会いしたら、肩をトントンとして話しかけてくださいね。