父の死
父が亡くなったのは6年前。74歳、肺炎だった。
九十九里で母と二人暮らし。
弟は近くに住んではいたが、うちの両親とお嫁さんとの関係が良くなかったのであまり行き来はなく、夫婦で旅行に行ったりしながら年金暮らしの老後を楽しんでいた。
うちでも夫が喉の手術のため入院していたとき、
「お父さんが熱出して入院したのよ」と母から連絡があった。
「熱出したくらいだったらすぐ退院するでしょ…」
と私も夫の手術で忙しいのを理由にお見舞いに行くのが遅くなった。
父はただの風邪だったはずが肺炎になって、熱が下がらない。
それでも大部屋で点滴を打っていて、普通に会話もしていたので、大した気にもせず家に帰った。
何度も「お見舞いに来ないのか?」とお見舞いの催促があった。
歳をとって入院すると寂しくなって不安になるらしい。
催促される度にお見舞いに行くと
「俺はもうだめだ。母さんをよろしくな」
そんなことを言い始めた。
「何言ってんの!熱があるくらいで大袈裟な…」
そう思っていた私も、あまりにも熱が長引き体力が落ちてきた父を見て
「本当にまずいのかな…」と不安になり始めた。
父はここ数年タバコをやめていたが、若い頃からハイライトのヘビースモーカーだった。お医者さんにはそれを指摘され
「喫煙のせいで肺が弱って回復できない」と言われた。
父に転院しようか、と相談すると父の返事は
「もういい。疲れた」だった。
ずっと頑張って家族のために働いてきた父。
父の実の妹はその一年前に癌で亡くなっていた。
母方の親戚もずっと年上なのに、子どもたち(私の従兄弟たち)に連れてきてもらってみんなに会えた。
最後は呼吸器に繋がれ、静かに眠るように逝った。
なかなか親孝行もできなかったけど、最後はずっとそばにいれて本当に良かったと思う。父は母のことだけを心配していた。
「母さんのことたのむな」
若い時、駆け落ちをしてまで結婚したかった両親。
ずっと仲が良かったわけではないが、老後は夫婦二人で仲良くやっていた。
父が心配する気持ちは痛いほどわかる。
友達もいることだし、慣れた土地にいるほうが楽しいということで
しばらく母は一人暮らしをすることになり、また次のストーリーが始まる。
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