目的地
J2も42試合が終わり、本日43試合目があった。
そしてその結果、熊本と山形が勝ち上がり、この2チームが熊本の地で、J2代表を決める戦いに臨むことになった。
一方我らがアルビレックス新潟は、J2優勝によりJ1昇格が決まっており、来年は2022 J2リーグのチャンピオンベルトを巻いてJ1リーグに挑むことになる。
今回は、私目線で、来季における期待と不安を書こうと思う。
重く、厳しい内容になると思われるが、是非お付き合いいただきたい。
J2で5年間戦った新潟の「目的地」
アルビレックス新潟は2017年のJ2降格以降、2018シーズンから5年にわたってJ2で戦った。
その中でもJ2で最初のシーズンとなった2018年は苦しみまくったが、当時から「目的地」、つまり目標はただ一つだった。
それはもちろん「J1昇格」である。
J3降格が迫っていた2018シーズンは途中で目標をJ2残留に切り替えてしまったが、その後のシーズンはというと割と最終節近くまで「J1昇格」という目標を掲げ続けて戦うことができていた。
そして2022シーズン、最終節の開催日時である「10.23」にどこにいるべきなのかをサポーターが説き、それにクラブが応える形でJ2優勝とJ1昇格という目標を達成した。
J1参入プレーオフが設定されてからのJ2リーグ3位のチームの戦績
さて、話は変わり、本日も岡山と熊本で行われたJ1参入プレーオフの話をしよう。
そもそも、「J1参入プレーオフ」は、前身となる「J1昇格プレーオフ」から通算して9回開催されているサバイバルゲーム。プレーオフから勝ち上がったチームが1年で降格するという悲劇が続いたこともあり、J1の16位のチームも参戦する「J1参入プレーオフ」となったのだ。
そして、J2で3位から6位のチームまでの中で、プレーオフの一回戦を勝ち上がった回数は以下の通りである。
3位・・・4回
4位・・・6回
5位・・・1回
6位・・・6回
※2014シーズン4位だったギラヴァンツ北九州、及び2018シーズン4位だったFC町田ゼルビアは当時J1ライセンスが付与されていなかったため不参加。そのため3位のチームが自動的に2回戦に駒を進めた。
一回戦は4位と5位、3位と6位のチームがぶつかり合う。そして、3位、4位のチームのホームで行われる。
4位が5位のチームに勝つのは納得がいく。やはりホームアドバンテージは大きい。
問題は3位のチームが4回、6位のチームが6回と、6位のチームの方が勝てているという現象である。
さらに、直近の2シーズン(2019、2022)は6位山形が3位の大宮、岡山にそれぞれ勝利を挙げている。
一見すると謎現象である。
「山形はプレーオフに強い」
確かにその見方もある。実際、2014シーズンではプレーオフ準決勝で磐田相手にGK山岸がゴールを決めてJ1昇格を決めている。
だが、それだけが理由ではない。
読者の皆さんもよく思い出してほしい。
2022シーズンのファジアーノ岡山は我々をアウェイで倒すなど勢いがあり、自動昇格圏に肉薄していた。そして、第41節まで昇格の可能性を残していた。
そして、2019シーズンの大宮アルディージャは最終節までその可能性を残しながらも自動昇格を逃し、プレーオフで敗れて今に至る。
この2チームに共通して言えることは「目標達成を逃したことによる著しいモチベーションの低下」である。
モチベーションの下がった上位チームをモチベーションの高い下位チームが食う。ある意味当然のことではある。3位のチームが6位のチームに敗れる傾向にあるのはこれが何よりも大きい。
2022のアルビレックス新潟
一見関係なさそうな先ほどの話、実はとてつもなく関係がある。
たしかに、新潟には2020シーズンから積み上げたスタイルがある。
しかし、そのスタイルはなぜ選ばれたのだろうか?
そして、何のためにそのスタイルは磨かれたのだろうか?
前者の答えに絞るならば、今までのスタイルでは戦えないと判断したからと言える。また、そのスタイルをベースに今後10年、20年と戦い続けることもれっきとした答えであると言える。
しかし、これらは後者の回答にはならない。
この2問の答えは両方とも「勝つため」である。
新潟に限らず、J2で戦うチームがJ1に上がるには勝つしかない。
新潟は「J1昇格するには勝つのみ」という言葉を最初に浮かべた後、「じゃあ勝つためには?」という問いが現れ、その結果が今のスタイルであると言える。
言ってしまえば、J1昇格という明確な目標があったからこそ、一戦必勝の理念が芽生え、このスタイルで戦うということに行き着いている。
J1でのアルビレックス新潟に対する期待と不安
私がアルビレックス新潟に対して抱えている期待と不安は以下の通りである
期待
・J2で磨いたスタイルはどこまで通用するだろうか
・どんな選手が新たにやってくるのか
不安
・J2で磨いたスタイルはどこまで通用するだろうか
・どこを「目的地」として戦うのか
期待の二点目についてはどちらもそのままにさせてもらう。これは強化部が頑張ってもらうしかない
J2で磨き上げたこのスタイル。J1で見てみたいという気持ちはとてつもなく強い。
ただどこかにちょっとした不安がある。
この不安を払拭する活躍を期待したい。
問題は「どこを『目的地』として戦うのか」である。
「目の前の敵は最強の敵」
リキさんはそう言い続け、チームをJ2優勝へと導いた。
しかし、今度はJ1の舞台。どこを目的地にして「目の前の敵は最強の敵」と言って選手を鼓舞するかによってやはり印象は変化してくる。
J1優勝を目標にするのも確かにアリかもしれない。しかし、アルビは2004年から2017年にかけて、一度も優勝できぬままJ2に降格したことを忘れてはならない。
厳しいことを言うが、アルビがいきなりJ1優勝というのは目標設定としていかがなものかと言わざるを得ない。
かといって残留を目的地とするのはあまりにも低すぎる。
「目標としたところよりも現実は下になる」ことの方が多いのが通説であり、残留の下とはすなわち降格である。
つまり、下手に目標を上げすぎてはあまりにも遠くてただの理想と化す、低すぎるとモチベーションアップにつながらないということである。
あまり考えたくない話だが、仮に優勝を目指したとして、とても優勝の目標を達成できそうになくなり、残留争いに勝つことが目標となったとき、選手のモチベーションは維持できるだろうか?
自動昇格を目指していた3位のチームがその目標を達成できそうになくなった時、プレーオフで勝つという新たな目標でモチベーションを維持できるだろうか?
J1のアルビレックス新潟がどこを目的地に設定し、走って行くのかが不安であり、楽しみである。