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ミュージカル「ヘタリア〜The Fantastic World〜」

本当に良かった、観劇できて良かった…!!
沢山笑って、心が暖かくなって目頭が熱くなって。宝物がまたひとつ、増えました。

ミュージカル「ヘタリア The Fantastic World」

思い返せば、2017年の夏…。当時の私は2.5の経験は皆無で、それどころか「ミュージカル」というコンテンツ自体を食わず嫌いしていました。ヘタリアの舞台化作品があることは知っていたけれど、手を出す予定はなかった…のに。当時流れてきていたキャスト様のツイート、その熱量に圧倒されて、気がつけば初演SWの円盤を購入していました。

ここからが速かった…!!
あっという間に魅せられて、次々にシリーズの円盤購入して仕事の合間縫って毎日のように円盤見て…。
同タイトルの円盤何枚も積んだのも、カラ鉄コラボのためだけに東京まで出たのも、リリイベ行ったのも、幕張は勿論泊まりがけで大阪まで遠征したのも、後にも先にもこのシリーズが最初で最後だと思います。持てる時間とお金の全てを費やしてのめり込んだ…!

そんなヘタミュですが、ハマったのが卒業発表後だったのもあり、実は舞台を現地で観劇するのは初めて。しかもこの4年ほど別の役者様追いかけて小劇場などに出向いていたので、この規模の作品の舞台を観劇するのは本当に久しぶりです。
ドキドキしながら開演を待ちました。青年館ホールは何度かお世話になっているけど、2階席は初めてです。しかも後方。普段観劇してる小劇場の舞台に比べるとかなり遠く見えました。そしてなかなかの急勾配なので、舞台に対してもかなり角度がある。

ソワソワしながら待つ。閉じた幕の向こうで、あの円陣の声。「パースター!!」
なんだかそれだけで目頭が熱くなりました。
あの軽快な音楽がだんだんと大きくなってきて、幕が上がる。隣に座る観客の鼓動まで伝わりそうな、緊張の一瞬。
幕が上がって見えた景色に、息を飲みました。

ヘタミュだ、大好きなヘタミュの世界だ…!!

まずね、セットがすごい…!!!
ヘタミュのセットには毎度毎度驚かされてるわけですが、今回もとっても素敵でした!!
どことなく、放課後の美術室を想起させる装飾。中身の入ってない額縁に、どこか埃臭そうなカーテン。雨垂れの跡すらありそうな天窓。デッサン用の石膏像…。
今回のテーマが「祭」「文化祭」ということでしたが、文化祭前の、普段はあまり立ち入らない美術室に入り込んだみたいでした。
加えて可動式の建築現場の足場。ヘタミュらしく、世界の観光名所モチーフのパネル…。兎に角凝ってた!石膏像に関しては本編で一度も使用されてないもんな…w
ヘタミュSWのマキャベリさんもそうだったけど、そういうところで手を抜かないのがプロの犯行すぎます笑

ストーリーは…今回は少しいつもと違う毛色のお話でした。というのも、前作まではわりと国や歴史…つまり世界史の教科書をがっつりなぞって、そこに色を加えていった感じだけれど、今回は歴史を背負った「国」をキャラクターとして動かしてストーリーを作り上げた印象です。いわゆる「劇場版」に近いイメージ。
歴史ネタや国民性ネタを挟みながら独自のストーリーを展開した今作は、先が読めなくて、観劇中ずっとワクワクドキドキしていました!アトラクションに乗っているみたいに楽しかった!その中で都度都度入ってくる前作との絡み…。「このセリフはあの場面を意識してるよね!?」と何度沸いたことか…。さすが、わかっていらっしゃる…!!天晴れです。

あっ、セリフと言えば!
いつものことながら、ヘタミュは台詞の一つ一つがとても重い。個人的に今作、1番刺さったのは中国さんの「大人になっても真似しかできないのは…」というくだり。ヘタミュはいつも、ドキッとする台詞を言ってくる。しっかりしなきゃなぁ…と肝に銘じた一言でした。

今作、作中でキーパーソン(キーカントリー??)になるのが日本さん。祭の開催国を引き当てちゃったのをキッカケに自分が見えなくなってぐるぐると引きこもっていく…。
その様子はなんだか自分を見ているようで、胸の痛くなるようなシーンが沢山ありました。
彼の言動のひとつひとつ、私たちが日頃、ふと思ってしまうようなことばかり。そうやって悩んで答えを出せない自分が嫌になって…。私たちが原作からイメージする穏やかで強かな「祖国 日本」とは少し違って、そこにいるのは完璧でもなんでもない、ごくごく普通にいる「人」でした。その彼の成長物語、涙なしでは見られなかった…。私は今作の日本さんが大好きです。

さて、ヘタミュFW…。
世界の情勢がまた大きく変わって、今まさに戦争で命を脅かされている人が存在している、という現実を突きつけられてから暫く経ってしまいました。
今までの作品のように、「戦争は過去の傷跡」と捉えることが難しい時代になってしまったのを実感します。卒業ライブの2018年の3月、幕張であの国も含めて全員で平和を祈ったことを考えると、本当に悲しい。
そんな世界において、逃げずにこの作品を上演したこと、真正面から平和を祈ったことが何よりも素晴らしいと感じました。
作中、何度も大砲の音、銃の音が嫌に重苦しく響きます。セリフにも「戦争」を想起させるようなものがあり、かなり挑んだな…と感じたのも事実です。(特に聖書と武器のくだりは観ていて鳥肌が立ちました。)

それでも、やっぱり私たちは世界と繋がっているんです。

火薬を開発したのも、それを奪ったのも、武器にしてしまったのも、そうしてそれを花火にしたのも、全て「国家」がしたことです。奪うのも与えるのも、全てが全て国の歴史。国の歴史と戦争は切っても切り離せないし、発明と発展も切り離せない。「相手」がいるから争うわけで、作中で日本が言う通り、独りでいられたら無用な血は流れなかったかもしれない。

それでも、独りだったら発展もしなかったと思います。全てが全て悪い人がいないように、全てが全て悪い国もいない。大昔に争った国に助けてもらう今があったり、その逆があったりするわけです。
決して戦争を支持するわけではないけれど、戦争も平和も、持ちつ持たれつしながら私たち、ここまで来たんだなぁ…となんだか感慨深くなりました。

今回のヘタミュ、色々な意見が出ているようではありますが…。個人的には、今作も大好きなヘタミュワールドでした。もしかしたら1番好きかもしれないってくらい。(原作は原作で、ヘタミュはヘタミュで、キャラ解釈も何もかも、まるっきり切り離して考えているからかもしれませんが。)

私は勿論、原作ファンでもありますが、原作『ヘタリア』が大好きなのと同時に、国をキャラとして愛することに少しばかりの後ろめたさがありました。「尊い」「しんどい」って叫んでるけど、実際にはそんなことを言っていられないくらい、国の歴史には戦争、もっと言えば人の生死が絡んでくるわけで…。原作はあくまでも「擬人化作品」で、メッセージの入らないフラットな作品なんだけど、時折、自分が平和ボケしながら無意識的に都合よく「国」、ひいては「戦争、人命」を消費してるんじゃないか…と怖くなっていました。(もちろん、「私個人」に関しての話で、作者様、および他の方のことは一切考えておりません)

だから、舞台版『ヘタリア』に出会った時、少しホッとしました。今までただのオタクでしかなかったけれど、ヘタリアを通して平和を祈ることができたから。原作『ヘタリア』のフラットさとは別の視点を持つ「ミュージカルヘタリア」が「平和」を謳ってくれたのが本当に嬉しかった。

エンディング曲が『まるちきゅ』からオリジナルに変わった時点で、ヘタミュは原作ヘタリアとはまた違う道を歩み出してるのかな、と勝手に解釈しています。(勿論大人の事情によるところが大きいとは思いますが…。)
もっと言えば、メッセージ性を持たせることができるのが「舞台化作品」の強みなのかなとも思います。

ミュージカル「ヘタリア〜The Fantastic World〜」 

私の中ではやっぱり、原点にして頂点でした。
みんなで見た祭りも花火も、きっと一生の宝物。だから世界は今日も賑やかで、楽しいのです。

『ミュージカル「ヘタリア〜The Fantastic World〜」』
2023.4.22(土)昼
日本青年館ホール

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