『Identity Ⅴ Stage Episode4 Phantom of The Monochrome 』
ネタバレありの感想です。忘備録のつもりで書きたいことを書きたいだけ綴ったら、約8,000字。
2023年、10月14日。
西武園ゆうえんちで開催された『第五脱出』で、第五舞台EP4の制作決定が告知され、嬉しい悲鳴とともに膝から崩れ落ちました。会場内大音量で流れる、大好きな『Diagnosis』のイントロを聴きながら。
あれから約8ヶ月。間にクリスマスイベントなどを挟みながら、第五舞台を観劇できる日を待ち侘びていました。役者の皆様が稽古期間に突入し、観劇予定日が迫ってくるともう毎日が楽しくて楽しくて、「観劇まで後○○日…!」という自分の中でのカウントダウンだけが仕事のモチベーションでした。…こんなにも待っている時間すら愛おしい舞台、本当に久しぶりなんです。
で、待ち侘びた当日。
まさかの人身事故により電車ストップ!しかも乗っていたまさにその電車で。
騒然とする現場に焦った車掌さんの声、「人が飛び込んだ」「電車に巻きこれている」など…嘘か本当かわからない情報。なにより、目の前で失われた(かもしれない)命と、物理的にその上に「乗っている」異常性…。
今考えるととんでもなく恐ろしいことなのですが、この異常事態に脳が急速に冷静になっていきました。目的はただ1つ。駅から脱出し、開演時間までに有楽町に辿り着くこと…!
乱れに乱れまくったダイヤに阻まれながら、タクシーを拾ってなんとか開演に間に合わせました。(新幹線での遠征代ぐらいかかってしまって痛い出費でした笑)
前説でオルフェウスさんのお声を聞いた時、「『例の荘園』に帰ってきた…!」という高揚感と事故現場からの脱出完了した事への安堵で、思わずへたり込みそうになりました。そんなこんなで、やっと、やっと開幕です。
○サバイバー公演
正直、今回の第五舞台は今までとストーリーの雰囲気も違うし、かなり物語やキャラクターの公式設定に踏み込んでいたから、途中何度か(何度も)「こんなに風呂敷広げちゃってどうするの…!?」と心配になったのですが…凄い、ちゃんとまとまった…!!
ファントム登場による白黒無常の連携バグ→そこに介入しない「荘園の主」への不信感→荘園そのものへの疑問…と、ルカの辿る思考は私のような凡人には到底思いつかないのだけれど、綻びがなくて「なるほどな…(頭を抱える人の図)」の連続でした。すごかった。
チェイスシーンや音楽、キャラクターの口調などが懐かしく、でも映像や主題歌、挿入歌など、今までとはまた違って新鮮な印象を受けました。新たな「第五舞台らしさ」が見えた今作でした…!
今回のサバイバー編、お当番は「囚人」ルカ・バルサー。3年前、『High & Low』で落とされて以来、穴沢ルカさんは推しのひとりです。EP2を観劇したときに、「いつかルカの物語が見たい…!」と願いましたが、やっと叶いました。
サバイバー編全編を通して、彼、本当に格好良かったです…!!大好きな「『囚人』ルカ・バルサー」の全てが詰まっていました!
ルカさんって、囚人服を纏って目にあざを作ってなお、隠せない品の良さがあるんですよね…。なんと言ってもあの『舞う』モーションに趣味はピアノという公式設定ですし。開幕直後のチェイスシーン(この時だけは、普段聡明で物事を冷静に判断できるルカさんがパニックになって怯えているので、色々胸がざわつきました。)ですら品がある。そんなの、ズルいでしょ。
舞台のルカさんも、私が夢見るルカさんそのものでした。あんな凄惨な過去がありながら、そこに縋り付くことはしない。思考するたびに激痛にもだえるけれど、それでも止まらない。何度崩れても絶対に這い上がってきて、自分の脚で立ち続ける人。かといって傲慢というわけでもなくて、柔軟に他者の意見を聞き入れて頭を下げることができる…完璧です。
色々苦悩もしたし、順風満帆には行かなくて苦戦も強いられたけど、最初から最後までずっと気高かった。
最後、ルカさんの頭脳をもって荘園の正体と謎を突き止め、死ぬほど焦がれた「永久機関:荘園」を自分の手で破壊しましたよね。そうして、最後荘園から出て行く寸前までこぎ着けた…。正直、このシーンは鳥肌が立ちました。結局最後は「荘園」の勝ちだったけれど、ルカさんと荘園の一騎打ち、ルカさんが荘園に風穴開けてしまった…。今回は上手くいかなかったけれど、脱出まで時間の問題なのでは…?もしかして次のターンでは、ルカが勝ってしまうのでは…!?
と考えたら、興奮で手が震えました。「囚人」ルカ・バルサー、格好良すぎる。
と、ここまでが「劇場で初めてサバイバー公演を観たとき」の感想。
ここからは、「サバイバー公演後にハンター公演を観て、なおかつ配信でもう一度サバイバー公演を観たとき」の感想。
ルカ・バルサー…あまりにも恐ろし過ぎん??
確かに彼は倒れても何度も立ち上がって、目的達成のために柔軟に手段を変えられる人です。彼の原動力にある「知りたい」という気持ちが前へ前へと話を進め、結果として見えなかったものが見えてくる…。
でも、それって「見たくない」「ここにいたい」と願う者にとっては堪ったたものではありません。黒無常からしたら迷惑この上ないんですよね。あれだけの凄惨な過去を背負いながら、それでも前にしか進むことができない、「そういう風にしか生きられない」のは、ルカの欠落部分でもあるような気がします。ルカが「永久機関:荘園」の爆破を企てたのも、もしかして、ファントム(いわばバグ)が生じた時点でルカにとって荘園が「完璧な永久機関」ではなくなったからなのかな…?などと考えました。真相はわかりません。ですが、もしそうだとしたら彼が行っていることはとんだエゴイズムの数々で、サバイバーの過去が暴かれたあのシーンへと繋がっていくわけです…。
見えているものがぼやけて、見えなくなっていく感覚。あまりにも「第五人格」すぎる。
○ハンター公演
マチネのサバイバー公演を観劇し、興奮冷めやらぬまま、ああでもない、こうでもない、と考察をし…その答え合わせにもなったハンター公演。こちらは白黒無常の…とりわけ黒無常の気持ちにフォーカスされておりました。
とにかく、辛くて堪りませんでした…。2人でひとつだったのに、2人の目的は気がつけばそれぞれ違っていて、謝必安は「范無咎と一緒にいたい」、范無咎は「謝必安を守りたい」…。この違いに誰も、ルカはもちろん、白黒無常当人たちも気付いていなかったのが悲劇の始まりな気がします。
謝必安にとって、大好きな范無咎の姿を見たのはいつぶりなんだろう…。姿は見えても声が聞こえなくなり、誰よりも近くで感じていた大好きな存在が見えなくなるの、本当に辛かっただろうな…と思います。そして、そんな謝必安を誰よりも愛して守り抜く范無咎、ハンターの皆も含めて誰にも理解されず、独りで孤独な戦いを繰り広げましたね…。
こちらも劇場観劇後にオンラインシートで観劇したのですが、キャラクターの表情が見えるので苦しさ倍増でした。
前述しましたが、今回のストーリーは今までと違って、随分深く公式設定へと踏み込んでいます。それに伴って印象的だったのはサバイバーの過去が暴かれるシーン…。第五舞台Ep1で初めて『Diagnosis』を聴いたとき、千葉さんの歌い方も相まって「イッタイドコガワルイノ…?ダレカオシエテヨ…」の部分で鳥肌が立ちました。サバイバーたち、何も反省してない。自分がやってきたことを棚上げしてこの被害者ヅラ、最低すぎる…!って。(ここの歌詞大好きだし、私はサバイバー陣営でサバイバー推しです)だからEp4のこのシーンも、サバイバーたちの黒すぎる過去が見えてゾッとしました。
だからこそ、余計に范無咎の苦悩が見える。今回のストーリーは勧善懲悪にはならないし、ルカの気持ちも白黒無常の葛藤も見えるし、荘園の存在を否定される事への戸惑いや恐怖もわかるから…何処をどうに切り取っても苦しかった…。
最後まで苦しくて、雨の音に追い詰められるような、そんな世界でした。
そして、今作引っかかった方がもう一人。そう、ジョゼフさん…!
今回の第五舞台、サバイバー公演ハンター公演ともに、個人的にめちゃくちゃジョゼフが刺さりました。大好きです…!
ジョゼフさんは第五舞台EP1でのお当番でした。今回の「例の荘園」がEP1と同じ世界線の荘園かはさておき、今回のジョゼフさんからは、どことなくEP1の経験を背負っているような雰囲気を感じました。同じキャラだけど個体として違う、でも過去の経験をどこか共有しているような…(伝われ…!)そんなジョゼフさんです。今回はお当番ではなかったけど、彼の全ての瞬間に苦悩が詰まっていて、苦しかったし愛おしかった。あの時の苦悩を知っているからこそ、今回のジョゼフさんには色々としんどかったです。
お芝居はもちろんのこと、チェイスシーンやダンスシーン、何処を切り取っても全ての瞬間に、ジョゼフさんの全てが詰まっていました…。 神経質で苛ついていて、でも年齢と重ねた苦労の数だけの優しさやゆとりが見える…。チェイスの緊張感がすごくて、時空残像のシーンは怖すぎたし(殺陣が速いし殺気立っているし重い)、『燃え上がれこの情念の炎』で髪を振り乱しながら踊るジョゼフさんは、照明効果と相まって彼の情念や執念が滲み出ていて鳥肌が立ちました…気怠げなのにキレッキレで、解釈一致にもほどがある。立ってるだけで高貴だし、そこにいるだけで空気が締まる五十嵐ジョゼフ…もうどうしたらいいですか。本当勘弁してくださいありがとうございます演じてくださってありがとうございます…!!
○個人的な推しポイント
今回の第五舞台の個人的に好きなところ…沢山ありますが、まずはなんと言っても『フレンド革命』!!
初めて聴いたとき、2代目エマちゃんの声の可愛さとポップでキャッチーな音楽、そして歌詞の攻撃力の高さに頭を抱えたこの曲。現場で拝見して、息止まるかと思いました。可愛い。エマちゃんもフィオナさんもトレイシーもあまりにも可愛い…。ビクターくんも可愛い。鈴木ビクター、あまりにもキレッキレで流石踊り慣れてる方だな…という印象です。
そして何より…イソップくん!!まさかあなたがここで踊ってるなんて…!イソップ推しの私、無事にロケチェ着席しました。社交恐怖の彼、一番このダンス似合わなそうで踊らされてる感がハンパなくて(でもちょっと楽しそう)、可愛い以外に言葉がない…。「なのなの」のフリのところ可愛くて大好きです。イソップらしく控えめなんだけど、キレが同居していて理解が追いつかない。所作の1つひとつが上品で丁寧なのに、大胆さも見えて、目が離せませんでした…。(平井イソップ、平井さんは割としっかりした体躯の方だと思うけれど、イソップくんはスレンダーなので不思議…衣装さんありがとうございます。)刺さりすぎました。
『フレンド革命』、可愛いダンスがそれぞれ完璧なキャラ解釈で踊られているので、もっともっと見ていたかった…メインダンサーの5人だけでなく、後ろで踊ってくれている皆さんも可愛かったです。それにしたって目が足りない。
推しポイントその2、推しが最高に良い。
さて、原作ゲーム第五人格にも複数推しキャラがいますが…最推しはイライ・クラーク。そして、5年前にEp1初演初日を観劇した際、彼を演じてくださった千葉瑞己さんの沼に転がり落ちました。最推しが最推しを演じてくれている舞台、第五舞台。
ということで、チバイ・クラークのオタクだから、どうしてもイライさん定点になりがちなんですが…。今作のイライさんも最高でしたね!?
今回は第五人格の設定そのものに切り込んだストーリーだったから、イライの背景推理を思い出して震えました。今まであまり意識したことなかったんだけど、そうだった…イライさん、婚約者がいる方なんだよな…と。(あの雰囲気とこの事実のギャップがすごい)
そんなことを考えたら、ステージ上にいる、少しの胡散臭さを纏った穏やかお兄さんの背後に何かが(何とは言わないけれど)見えてしまった気がしました…。決して台詞として語られるシーンはないけれど、相棒をそっと撫でたり、フードを目深にかぶって目元を隠したり…そういった動きの1つひとつに彼が(きっと意図的に)隠してきたもの重さが見えるようでした。(Ep1でのイライの「ここに来た理由…もう少し仲良くなったらお話ししましょう」が好きでした。)新人ハンターガラテアちゃんを気にかけてみたり、社交恐怖のイソップを気遣ってみたり…台詞も出番も決して多くはなかったけれど、そのなかで、印象を残していくのってすごいですよね…。千葉さんが本当にイライくんを愛し、丁寧に彼を演じてくれているのがわかります。優しくて、穏やかでちょっぴり胡乱な、大好きなイライさんが実在してました…。
さて、推しポイントその3。今作から参加してくださった新キャストの皆様…!ありがとうございます、とっても素敵でした…!
今回のEp4、3年ぶりだしキャスト変更は仕方ないな…と思っていたけれど、初代の皆様が大好きだったので寂しかったのは事実。ですが、2代目キャストの皆様も、素晴らしかったです。
なんとなく、Xや公式TikToKの様子から今作のナワーブくんは夢女子製造機かもな…と思っていましたが、見事に勘が当たりました。可愛くてやんちゃな才川ナワーブも大好きだったのですが、松藤ナワーブはみんなの頼れる兄貴。安定感がすごい。たまに見せる笑顔が眩しい人でした。
アンドルーくんもキャス変でイメージが変わった子の一人。今までの陰鬱としてキレ芸が得意なお兄さん(つっつくと面白い)も好きな解釈でしたが、今作はとにかく可愛い。何をしていても可愛い。そしてキャラ崩壊しないギリギリを攻めていく面白さ…!好感度めちゃくちゃ高かったです。ずっと見ていたい可愛さ。
新キャラとして登場したエドガーさんも最高でしたね。まさかの今作お笑い担当。振り切った高慢さが最高に良かったし、解釈の一致がすごかった…。宮城さん、ドラムを叩いているところしか存知あげなかったのですが、彼のお芝居良いですね…この画家さんにまた会いたくなりました。(Ep5で弁護士先生と絡むの、楽しみにしています!)
ガラテアチャンも最高だったし、フィオナさんや美智子さんも、皆さんとても大切にキャラクターを愛してくださっているのがお芝居から伝わってきて、温かい気持ちになりました。
2代目キャストの皆様が素敵だったのと同時に…続投組の皆さん…文句なしに最高でした…!
みんなで待ち侘びた3年間、戻ってきてくださるのが本当に嬉しかった…!もうね、貫禄がすごい。とりわけEp1から皆勤賞の皆様なんて、試行錯誤を重ねてこの作品をゼロから作り上げてくださったのを知っているから、なんだかとても感慨深かったです。座組を引っ張っていらっしゃる皆さん、どの瞬間を切り取っていても輝いていて、最高でした。この作品を愛してくださり、皆様本当にありがとうございます…!
そして、キャストさんは勿論、この作品に関わってくださった全ての方…!
どの作品もそうですが、私たち観客が見ている「制作サイド」はあくまでも板の上に立つ数名の役者の皆様。ですが、1つの作品の裏に、膨大な数のスタッフの皆様がいて、そのそれぞれが完璧に仕事をこなしていらっしゃるんですよね…。第五舞台はハンターの武器など、「それさっきまで持ってなかったよね!?どこから出してきたの!?」となるシーンが多々あるわけですが、小道具1つとっても、それをデザインして作る方がいて、メンテナンス等、管理する方がいて…。上演中はしかるべきタイミングでしかるべき場所にそれを置き、観客の視線を誘導するために照明操作がなされる…。そうして初めて、舞台上の役者がそれを手にできるわけですよね…。誰か一人欠けても成り立たない、奇跡のような構図。特に第五舞台はチェイスシーン(このチェイスも計算され尽くされていて、本当に格好良かったし興奮しました)が多いから、何か1つ崩れたら大きな事故になりかねない。こう考えると、本当に、数え切れない方々の手によって公演が支えられているんだなぁと感動します。脚本、舞台セット、衣装、音響…その他たくさんの部門の皆様…プロの仕事、格好良かったです。関わってくださった全ての方に御礼申し上げます。
と、ここまでまとまりのない文章を連ねてきましたが…。
最後に。
Ep4の詳細が発表された時、嬉しかったのと同時に、キャスト変更や今まで出演していたキャラクターの不在に少しばかり寂しい思いをしました。過去作が大満足の出来だったからこそ、今作への少しの不安もありました。
ですが、あるキャスト様が(個人の配信で)仰った「皆さんそれぞれがゲームをしていて、それぞれに『荘園』があるように、そこにいるキャラクターや、その使用率が違うように、今作は今作の『例の荘園』でお待ちしてますね」と言う言葉がすごくしっくりときて、素直にEP4を楽しもうという気持ちになることができました。
結果、すごく、すっごく楽しかったです…!
2019年11月29日、あまり期待せずに見た第五舞台Ep1でのクオリティの高さやエネルギー、伸び代に惹かれて、そうして大好きな「推し」に出会って、私の観劇ライフがスタートしました。何もかもが楽しかった。あの日から今日まで、コロナのパンデミックなど社会も様変わりしたし、自分を取り巻く環境や自分自身にも変化がありました。きっと、舞台制作に携わる皆様や板の上に立つ皆様も同様だと思います。残念ながら、もう「ありがとう」の声を届けられない場所に行ってしまった方もいらっしゃいます。
その中で、みんなで1つの作品の再演を願えたこと、そこに戻ってきてくださる方がいること、全員で笑っていられたこと、それが何よりも幸せだなぁと感じるのです。
新たにスタートしたこの物語が、次へ、その次へと繋がっていきますように。誰かの帰る場所でありますように。
第五舞台、最高でした。
『Identity Ⅴ Stage Episode4 Phantom of The Monochrome 』
2024.6.8(土)昼夜
ヒューリックホール東京
2024.6.9(日)昼夜
オンライン
P.S. テテステ名物(珍百景?)特別公演観ました…!大人の本気とツッコミ不在の恐怖を感じました。これだからテテステのオタクやめられない…!