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新約クラド

現地にて観劇してきました。
実は今回はすごく、すごく複雑な感情があって、チケット発売の直前まで、劇場に向かうかどうかを決めかねていました。
自分は文学部出身の人間です。在学中は外在的に作品を批評してきましたので、どうしても、作品を作品の内側だけで完結させることができず、外側のあれやこれやを考えてしまいます。
そんな自分だから尚のこと、きっと今回に関しては、手放しで「楽しい!好き!!」とは言えなくて、観劇中も色々なことを考えてしまう。だから、ずっと悩んでいました。

はっきり言ってしまえば、そのなかで観劇を決めた理由は、たったひとつ。2週間というあまりにも短い稽古期間の中で、最善を届けようと必死に頑張ってくださっているキャストの皆様がいるから。
座長(最推しです)を始め、皆様の「仕事に対しての誠意」に感動したから。

だから、複雑な気持ちは変えられないまま、一年振りに出雲水都を訪れることを決めました。

今回の『新約クラド』、すごく難しかったですね…。(単に私の理解力が追いついていないだけかもしれません…!)
『新約クラド』の前身となった前作『クラド』と、今回の『新約クラド』の続編にあたる『弐心協奏』は観劇しているのですが、今回は前作に比べても登場人物が多く、更に『弐心協奏』で登場してる人物がサラッと出てくるため、全くの初見だったら難しかったかもな…という印象です。(豊鷲見さんや辰爾さんなど、初登場なのに初登場ではない、というなんともややこしい展開…笑)

そして、前作より更に鎖が重くなったな…とも感じました。特にニックさんと出雲水都の鎖、真琴さんと八戸掛さんの鎖…四部作のうちの、風呂敷を広げる部分にあたる今作ですから、かなり設定も盛り込まれています。
それに伴い、前作と印象の変わった方もいらっしゃいましたね。

とりわけ、ニックさんはかなり変わったんじゃないかな…?キャスト様が変更になったわけではないのにこれだけの変化があるのも面白かったです。
『クラド』の時はもっと「野心家」なイメージがあり、過去のトラウマから心を閉ざした孤独な人…印象で、冷静で凛とした人でした。
それに比べて、新約版のニックさんは…ちゃんと過去を抱いて前に進もうとする人。(縁の鎖で雁字搦めなので進めないんですけれどね)
刺々しさが鳴りを顰め、少し柔和になりました。主人公として、感情移入のしやすさが増したような気がします。
そして、今回新たに出てきた両親の存在…!新國家、とてもとても素敵で温かな家族でした。多分どうやら絶対的に「ただの父と母」ではなさそうですが。言ってしまえば曰く付き…この2人が登場したことで、ニックさんの出雲水都との縁が強調されましたね…。もう逃げられない。

そして、そんな彼を繋いだ1人、そして自分自身も繋がれている人…それがテネシー。彼も随分印象が変わった方です。
今回は前作『クラド』の時のふわふわした掴みどころのなさよりも、彼の立場がはっきりしたように見えます。抱える苦しみや矛盾も見えるようになり、その分わかりやすいしんどさも増したような…。どちらのテネシーも好きですが、いずれにせよ呪われている。終盤の絶叫シーン、演じてくださった鈴木さんのお芝居に惚れ込みました。本当に苦しかった…。欲を言えば、テネシーの「結ビ唄」、今作でも聴きたかったなぁ…と思うのですが、そもそも新約のテネシーはこの唄を知っているのかな…?謎が残ります。
それにしても、ニックとテネシーの2人が幸せになる未来、あるんですかね…?(見えない)

幸せになる未来といえば、未来がない2人。クソデカ感情を引き摺り回した挙句全てを巻き込んで死んでいった男たちがいましたね。真琴さんと八戸掛さん。
はっきり言いますと…何度、他所でやれ!と思ったことか笑(できない)
お互いからお互いに対するベクトルが強すぎて、この感情の大波にみんな飲まれて沈んでいきました…。お二人とも新キャスト様でしたが、ジンさんは今までの「狂人」のイメージよりも精悍な印象、八戸掛さんは今までよりも、より湿度が高くなったように感じます。これもこれで素敵!

他にも、より硬派な印象になった定直様や、キャス変してもイメージが変わらない進堂くん、更には回を追うごとにクセが強くなっていくモノザネ様に、今回新たに投入された性癖爆弾、不破タイラさん…。ストーリーは勿論のこと、キャラクターを楽しんでいるうちに2時間が経過してしまいました。やはりクラド、面白い…!

手短な感想にはなりますが、今回はこの辺で…。
色々複雑な感情はあれど、やはりこの作品が好きだなと感じます。次は三作目になるのかな?
どうか、この作品がちゃんと終わりますように。そして、その終わりを見届けられますように。

『新約クラド』
2024.7.13(土)昼
六行会ホール

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