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『Episode 犬紀村〜MOMOTARO〜』

辛いのはわかっていたんですけどね…。

ベストオブ2023の一本に入るくらい刺さった『MOMOTARO』…まさかの前日譚『犬紀村』が上演決定!配信での視聴にはなってしまいましたが、あまりにも嬉しくてワクワクしながら再生ボタンを押しました。

期待通り、非常に良かったです。ただ、あまりにも隙がなく完成されていたから自分の思考が入り込む余地がなくて…。いつもの数十倍、感想の言語化に苦労しました笑。それぐらい、整合性の取れた欠けのない作品でした。ということで、自分なりの精一杯の忘備録です。

『MOMOTARO』を想起させるような、昔々の物語への導入…。そして、間髪入れずにリキャップされる例のシーン…そう、涙腺ガバガバになる程苦しかった、兄弟の最期のシーンですね。
序盤からマックス苦しいけれど、ここに至るまでの物語が『犬紀村』であることを考えれば納得です。
ですが、そこから場面は変わり、『MOMOTARO』の鬼退治後のシーンへ。舞台の色が急に『MOMOTARO』へ変わるからすごい。
配信で視聴する日替わりゲスト様は悩みましたが、ここは前作主人公ダン君を召喚。前作と今作を繋ぎ、観客を『犬紀村』の世界へと誘う重要なシーンでしたが、存在しているだけで大喜利状態のちひろ君(吉田さんのお芝居が大好きです!)が和やかな空気を作り出してくれました。

で、物語の舞台はいよいよ『犬紀村』へと移ります。今作はとても登場人物が多い…!!なので、公式様がXに載せてくださっている人物相関図と睨めっこしながらの視聴でした。資料があって助かった、本当にありがたい…!!
「犬」というだけあって、家族や仲間を本当に大事にしている犬紀村の人々。文字通り「群れて」いるし、厳しく上下関係がきまっている…その一方で忠誠を誓った相手は命をかけて守り抜く点も非常にわんこっぽくて良かった。(これが『猫ステ』だったら、きっとみんな即解散して物語にならないだろうな笑)
ビジュアルについても、皆様もふもふしていてとっても可愛かったです…!あと、名前が可愛い。みんな近所のわんこにいそうな名前をしている。

ですが、そんな犬紀村でうまく馴染めていない方がひとり…そう、ドギーさん。生い立ちから何から何までしんどいお方ですが、非常に気品に溢れていらっしゃる方。「裏切り者の息子」として、村の人々は勿論、実の父からもやっかまれる日々…。彼の周辺で描かれるすべてのシーンが辛かったです。
あまり表情豊かなタイプではなく、自分の気持ちを閉じ込めてしまう彼にとって、生きる軸になっていたもの、それが家族…もっと言えばココとマットだったように思います。彼らと話をしている時は本当に穏やかに笑うドギーさん。改めて考えてもしんどい。
それにしてもドギーは全世界の長男・長女の夢を背負っていると思う。自分も長女ですが、ドギーは小さな頃から憧れ続けた理想の兄です。理想の中の理想。あんなお兄ちゃんが欲しかったと何度思ったかわからない。
そして、ドギーの境遇や心境を想像すると胸が痛くなります。何でもないふりをしてしまうのも、それを一番近い人に(今回はマットでしたね)見抜かれてしまう甘さも、しんどい。(長女として覚えがありすぎて余計にブーメランです笑)
そうやって独りで全部抱え込んでいく兄とは対極にいて、愛されることを知っている弟。きっと、お兄ちゃんに愛されてるのを知っているから、彼も温かい人なのでしょう。ドギーが父から村を出ていくように言われた後、マットはドギーに何かが起きたことを察して、抱きつきに行きましたよね。そこからマットとドギーの稽古への流れのシーン、涙なしには見られませんでした。マットはお兄ちゃんの背中を追いかけ続けている。そんなマットからの愛情や尊敬は、ちゃんとドギーに伝わっているんだなぁ…。

兄からすれば、それこそケージのような犬紀村ですが、マットからみれば自分を愛してくれる大切な仲間がいる、大切な故郷。2人の気持ちがわかるから見ているこちらも複雑な気持ちになってしまう…。恐ろしいですね。
そんな犬紀村の面々、個人的に惹かれたのは(というか全人類惹かれますよね!)ドッゴさん。最高の守護神でした…!体術は勿論なのですが、人として完成されすぎています。村長パピーさんからも一目置かれているドッゴさんは、リクさんとの関係からもわかるように、本当にフィジカル面メンタル面ともに頼りになりすぎる…。その上、役者様がこれまた「強面お茶目」という属性マシマシマンなので、ドッゴさんもユーモラスで、そこも含めて大好きです。

そんな犬紀村と関係拗らせているのが流狼族…。
はい、こちらめちゃくちゃ騒がし…元気が良くて可愛いです!w
勝手にコタロウはレトリーバーだと思ってます。(うちにはでっかくてうるさいラブラドゥードルがいるのですが、うちの子出演しちゃったかと思いましたw)リーダー大好きで、あのでっかいのがうろちょろついて回るの可愛いかったですね。レオさんもレオさんで、色々抱えながら先頭に立つ心優しい方…さらにそのレオさんを見守るみんなのパパ、カイさんがいる。カイさんの考え方「物語はそれが嘘であったとしても、聞いた人の心には真実として残り続ける。貧しくても、心は豊かに。」が印象的で、本当に大好きな言葉です。文学の意味がここにある…。
苦しい過去があって、奪われてきたからこそ、自分たちで選んで家族になった流狼族の人たち…何と穏やかな方達だろうと思います。
そんな流狼族、やっぱり個人的に惹かれちゃうのはリクさんでした。本当に格好いい。信念があって、守るものがあって…。自分が強くないということを認められる点も含めて、すごく強い。
とても素敵な青年ですが、彼の人格形成にドッゴさんが大きく関わっているのだろうなと思うと、もう唸るしかないですね。

さてさて、そんな流狼族と犬紀村を争わせて、潰そうとする奸計を企てているのが鬼ヶ村。今回のボス斬鬼さんは犬紀村に恨みがある方…。「鬼を殺すために鬼になった」と大義名分を掲げて挑みます。…今回のボス、斬鬼さんからはかなり「私怨」が感じられて、前作のボス叉鬼さんとはまた少し違う印象を受けました。言ってしまえば、鬼ヶ村の存在を利用しているような…?どうでしょう。いつか『鬼ステ』が上演されたら彼に対する印象もまた少し変わるかもしれません。 
…余談ですが、『MOMOTARO』はヒールにも同情してしまう一方、今作のヒール(フク・ナギ)はとことん悪くて、同情の余地がないんですよね…。正しく「鬼」。世の中、どう頑張っても分かり合えない存在もいるもんだなぁと、そんなことを考えました。

話を戻して…ここ鬼ヶ村には厄介な暗殺者がいるんですよね…!そう、鬼狂さん!!今作の推しのひとりです!あんなに優美なビジュで、あんなに穏やかなお声で(キャスト鈴木さんのお声が大好きなんです!)あんなにキレッキレなの、狡すぎやしませんか…??おまけに善悪の概念がない。最高にぶっ飛んでいて最高に楽しそうで…。見ていて気分爽快でしたね。(後半、ナギ戦の時は「行け!殺っちまえ!!」と画面越しに応援上映してました笑)
鬼狂さん、強すぎる。因縁の対決のシーン、ドッゴさんは鬼狂さんに「守るものがないから弱い」と言ったけれど、どうでしょう。失うものが何もないバーサーカー状態って恐ろしすぎやしません…?
結果は相打ち…ですが、ドッゴさんが鬼狂さんを止めてくれました。いやほんと、止めといてくれて良かった…。ここでドッゴさんが止められなかったら、ダン君たち、アレと戦うことになるんでしょ??いくら桃黄郎兄さん仕込みの剣だとしても、桃太郎にも倒せなかったかもしれない…ヤバい相手でした。
それにしても鬼狂さん、死に際まで楽しそうだったから天晴れ。大好きです!

と、ここまで各陣営について書いてきましたが…。
前作『MOMOTARO』同様にこの作品も、ラストの畳み掛けが凄まじかったです。
あのね、まず殺陣がすごい。マジですごい。目にも止まらぬ速さです。全員の殺陣スキルが高いのに大人数で行われるからかなり迫力がある…。格好良かったです。
女子ズも負けず、特にあの鬼狂さんと互角に戦っていたモカさんは本当に格好良かったです…!!頼れる姉御、惚れました…一生ついていきたい。

そんな中で最後、ボス戦。マットは斬鬼さん相手に、大好きなお兄ちゃんドギーと共闘…。最初はなりふり構わずに斬鬼さんに切り掛かっていたマットが、兄の姿を確認するやいなや、大切なことを思い出したように左手を後ろに組むの…動きにゆとりがある兄とは違い、どこかぎこちなく、けれど必死に兄を真似るその動きに涙が出ました。怒涛の死戦を潜り抜けてきたマットは確かに強いはずなのに、兄と並べばその背中はやっぱり頼りなくて、そんな子がこれから独りで生きて行かなければならないこと、仲間に出会えること、仲間と一緒に大好きな兄を倒さなければならないこと…色々なことが頭に浮かんで、もうダメでした…。
ドギーもドギーで、どれだけの覚悟でマットの元を去ったのでしょう。最後のダンのセリフ「ドギーはマットの手でココちゃんのもとに行けるのを待っていたんだよ」にも繋がりますが、犬紀村を出ていくように言われた時から、ドギーは死場所を探していたのかもしれません。だとしたら、大好きなマットの手で終われることは幸せだった…?よく、わかりません。

さて、ドギーとの訣別を経て、ストーリーは『MOMOTARO』へと戻ってきます。『犬紀村』は『MOMOTARO』に比べて舞台(照明)が全体的に暗いので、明るいこのシーンで「帰ってこれた…」とホッとしました。
最後、ココちゃんに「笑って?」と言われた時のドギーの姿、忘れられません。いつかマットがそちら側に行った時、穏やかな笑顔で待っていてくれるといいなと心より祈ります。

あまりにも纏まらない感想になってしまいましたが…。本当に素晴らしいステージでした。

昔々の物語。桃太郎の勝利につながる前の悲劇のお話。
『犬紀村』、あまりにも寂しく残酷で、優しい物語でした。素敵な物語に出会えたことに感謝いたします。

『Episode 犬紀村〜MOMOTARO〜』
2024.10.24(木)夜
オンライン視聴

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