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コンフェスコ 18/n 声と声
きれいな月が見える夜、ダフネはいつもの小さな広場へ向かいました。
広場に着くといつものようにジャンが歌を歌っています。
ジャンの歌にしばらく耳をすませて、歌のリズムに歩調を合わせてゆっくりとジャンの近くへ進みました。
ダフネはジャンの歌う旋律に合わせて自分の声を重ねて歌を歌い始めます。
驚いた表情を見せたジャンは、やさしく笑い、ダフネの歌を導くように音程を少し上げます。
そして、肩を小さくゆらしてゆっくりと二人の間の音のテンポをとります。
ダフネも嬉しくなって一緒に小さく肩をゆらして、きれいな夜空を見上げながらお気に入りの歌を歌います。
ジャンののびやかな声とダフネのやわらかな声とが時に重なり、ときに高低に離れて、まるで二人で踊っているかのように艷やかな音色を紡いでいきます。
歌の終わりが近づくと、二人は向かい合い、互いに笑みを浮かべながら、声と声との調子を合わせて、音の余韻を感じて、丁寧に丁寧に最後の一節を歌い切りました。
声の去った空間にひとときの静寂が訪れます。
歌い切った二人の息が弾んでいます。
ジャンは少し息を整えて、ダフネに歩みよると、上手だねと言って、彼女の頭をそっと撫でてあげました。
ダフネは嬉しくて、涙が彼女の頬を伝いました。
月の光がやさしく辺りを照らしていました。