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YouTube用の動画編集データが飛んだ!?2度と再現できない動画を取り戻す方法

こんにちは!デジタルデータリカバリーです。

データ復旧やハードウェアについての情報を掲載しているこのnote。今回は、弊社にご依頼いただく、動画データの復旧事例について触れたいと思います。

動画データといえば、子供の運動会の撮影データや旅行の思い出のデータをイメージする人が多いと思います。

もちろんこのようなデータの復旧を弊社にご依頼いただくことは多いですが、ドライブレコーダーのデータや、映像制作会社様・YouTuber様動画編集データの復旧をご相談いただくこともあります。

動画データは、静止している画像データと比較し、どのような特徴や復旧の難しさがあるのでしょうか?

動画データの復旧について、論理エンジニアの新名さんへ直撃インタビューを行いました。


前回の「ドローンからもデータ復旧!?珍しい機器に入った記憶媒体やデータ」の記事はこちら


1.動画データはデータ保存の仕組が複雑で修復が難しい

聞き手:これまでご依頼を受けた動画データには、どのようなデータがありましたか?

新名さん(以下、新名):圧倒的に多いのは、映像制作会社様の動画編集データドライブレコーダーのデータですね。旅行や家族イベントなど個人様の思い出のデータも、もちろんありますね。
後は、HDDレコーダーに撮りためたコレクションなどでしょうか。

聞き手:なるほど。映像制作会社様のデータは特に、関係者のスケジュールを合わせるのは難しく、制作費用もかなりかかっていると考えられますし、撮り直しはできませんよね。

動画データの復旧のご依頼は、どのくらいの頻度でありますか?

新名:1日2-3件はご依頼を受けている印象ですね。

聞き手:結構多いのですね。動画データを消失する原因や症状にはどのようなものが多いのですか?

新名:誤ってフォーマットしてしまったというのがかなり多いですね。たくさんの撮影動画を保存している為、ごちゃごちゃしていて間違ってフォーマットをかけてしまったというような状況だったと聞きます。
誤フォーマットの場合、更にデータが上書きされているケースもあります。

次に多いのは、撮影中にビデオカメラなどの撮影機器の電源が落ちてしまったり、ファイルシステムに異常が発生したりといったような内容ですね。

※フォーマット:HDDやSDカードなどの記憶媒体を初期化すること。様々なエラーを解決できるが、保存データが見られなくなる。
※ファイルシステム:記憶媒体にデータを書き込む際の管理方式のこと。

聞き手:撮影中に電源が落ちてしまうとどのような仕組みでデータにダメージがあるのですか?

新名:撮影途中に電源が落ちてしまうと、動画という連続したデータのかたまりを管理する機能が構築されないまま、データが保存されてしまうので、データがバラバラに保存され、データを動画として再生できなくなってしまいます。

聞き手:なるほど、動画という一つのかたまりとしてデータを保存するためには、正しい工程を踏んでデータが保存される必要があるのですね。

ファイルシステム異常には、どのような原因があるのですが?

新名:ファイルシステム異常は、原因が様々あるのですが、データを保存しているSDカードメモリチップ部分に読み取り不良が発生したり、SDカードがファイルシステムを破損してしまうこともありますね。


2.出回っている復旧ツールでは修復が困難なため、復旧ツールを自社開発しての修復が必要

聞き手:動画データが消失したり再生できない原因には、様々なものがあるのですね。
原因を見極めて、的確な方法で復旧することは難しそうです。


新名:そうですね。原因を見極めて、的確な対処を施さなければ、動画データを復旧するのは難しいです。



聞き手:これまでのご依頼の中で、他社様では的確な対処ができず、弊社にご相談いただき、復旧できた事例はありましたか?

新名:ご紹介しますね。YouTubeの動画制作会社様からご依頼を頂いた動画データで、他社様で復旧できず、弊社にご相談いただき、復旧したものがありました。

ご依頼いただいた動画データは全部で3本あり、元々はそれぞれ数十分のデータでしたが、他社様で復旧したところ、それぞれ6分、6分、1分しか復元できなかったようです。

弊社でデータを見てみたところ、他社様ではファイルシステムが破損したままファイルを修復しようとしたため、連続する動画データとして全てのデータを完全に復旧できなかったようです。

聞き手:動画データを完全に再生できるように復旧するのは難しいということですね。弊社では復旧できたとのことですが、他社様とどのような違いがあるのですか?

新名:そうですね。ファイルシステム情報が完全に失われている状態なので、出回っているような一般的な復旧ツールでもできるような単純な拡張子抽出では、データが破損してしまいます。

そのため、弊社では動画データを復旧するのに特化したツールを使用します。この方法で、特にGoProやSONYのMP4/MXF形式のビデオカメラ、一部のドライブレコーダーなど、一般的なツールでは復旧できないようなデータの復旧事例は多数ありますよ。

※拡張子:1つ1つのファイルごとに与えられている、ファイルの種類を識別するために利用される情報のこと。(例:ワードファイルの場合「.docx」、エクセルファイルの場合「.xlsx」)

聞き手:高度な機能を持つツールで復旧しているのですね。ツールが使えないような場合もあるのですか?また、そのような場合には復旧できるのですか?

新名:ツールで復旧できないような場合もありますね。ツールでも対応できない場合には、自作ツールを作成し、復旧しています。

特殊な形式の動画であっても、構造を解析して復旧が可能です。産業用ハイスピードカメラのcineファイルを誤って削除してしまい、ご依頼を受けた際には、復旧ツールが使えないものでしたが、復旧に成功しました。

※cineファイル:ビジョン・リサーチ社製のPhantomデジタルビデオカメラで撮影したビデオファイルのこと。

聞き手:ツールが使えない場合には、自作ツールで復旧してしまうのですね。
先ほど言っていた一つの連続する動画データとして保存する為の管理機能が破損しているようなデータの復旧もできるのですか?

新名:はい、そのようなデータも復旧した経験があります。

聞き手:難易度の高いケースも復旧してしまうのですね。
動画データの復旧は複雑なことが分かりましたが、データの構造はどのようになっているのですか?

新名:基本的には、複数のユニットで構成されています。また、ユニットは連続したデータ保存領域に保存されておらず、ばらばらな場所に保存されていることも多いです。
また、動画データは撮影を停止するまでデータサイズが未確定のため、あらかじめ連続したデータ保存領域を確保することができないという事情があります。

そのため、全てのユニットを正しく構築できなくては、動画として再生することが難しくなります。MP4やMXFなどが典型的な例ですね。

ものによりますが、100箇所以上の領域にデータが散らばっている場合もあります。ですから、これらを復旧するためには、全て正しく組み合わせなくては動画として再生できません

こうなると、市販の復旧ツールではデータの先頭に来る1つのユニットしか検知できないものが大半なので、散らばったデータを組み合わせることができず、復旧できないというわけです。

聞き手:なるほど、ところで気になったのですが、データ保存領域への保存のされ方は、画像データと動画データでは違うのですか?

新名:そうですね、画像データはデータサイズが小さく、バラバラにならずに保存されることが多いです。
それと比べ、動画データはデータサイズが大きく、撮影中にメタデータや別の動画が同時並行で生成されることが多いです。

※メタデータ:データについてのデータを指し、あるデータが付随して持つそのデータ自身についての付加的なデータのこと。

聞き手:動画データを安全に復旧するために、ユーザーに伝えたいことはありますか?

新名:復旧ツールで復旧しようとしてデータを上書きしてしまわないように注意してください。
復旧ツールを、復旧したい動画データが保存されたSDカードなどの記憶媒体に保存したり、復旧ツールで抽出したデータを上書きしてしまうと、復旧したいデータが消えるだけでなく、私たち専門家が復旧する為に行う解析も難しくなります。


3.革新的なデータ復旧技術の開発への取り組み

聞き手:ここからは新名さん自身についてお聞きしたいと思います。入社後、これまでどのようなご経験をされてきたのですか?

新名:入社後すぐはエンジニアとしてスタートしましたが、その後はマーケティングやカスタマーサポートなどの他部署を一時的に経験し、エンジニアに戻ってきました。

聞き手:そうなんですね、様々なご経験をされてきた中で、今の仕事に影響している気づきなどはありましたか?

新名:エンジニアに戻った際に、作業報告書というお客様にどのような復旧作業を行ったのかを報告するための資料作成を行っていたのですが、その中で復旧できない事例をみているうちに、復旧するにはどうしたらいいかを考えるようになりました。
試行錯誤して、過去復旧不可能とされてきた事例が復旧できるようになったケースがたくさんあります。今では「どうやったら復旧できるか」と頼られる存在になれました。

聞き手:暗号化により復旧難度が高いとされてきたHDDレコーダーの復旧方法を確立させたのも新名さんですよね。
今後の展望としてはどのような事を考えているのですか?

新名:独自の復旧ツールを標準化して、誰でも使えるツールを開発したいですね。
現在、独自の復旧ツールを作成して、既存のツールで復旧できないデータを復旧していると言いましたが、自分だけが使えても意味がないと思っています。社内でエンジニアの誰もがそのツールを使用して復旧できる仕組みを作っていきたいです。

また、プログラミング言語を用いて、復旧作業時間を短縮することも可能にしています。こうした点でも、スピード復旧の点でお客様になるべく早くデータをお手元に戻せるようにしたいですね。

聞き手:革新的な取り組みを次々とされている新名さん…本当に頼もしい存在です!本日はありがとうございました!


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