専門エンジニアが語る!SDカードの基板が欠けていても、データ復旧が可能な理由
こんにちは、デジタルデータリカバリーです。
データ復旧やハードウェアについての情報を掲載しているこのnote。今回は、SDカードをはじめとしたメモリ媒体のデータ復旧について、メモリ専門のエンジニア大下さんへ直撃インタビューを行いました。
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デジタルデータリカバリーでは、約10年前からSDカードやUSBといったメモリ系機器のデータ復旧を手掛けています。これまで、機器のタイプや症状を問わず、多数のデータを復旧してきました。
データが保存されている領域にアクセスできなくなり、データが見られなくなってしまったマイクロSDカードのデータを復旧したり、
カメラで使用していたSDカードを復旧ソフトにかけて、データを上書きしてしまった場合からでもデータ復旧も行います。
同じメーカーの同じ製品であっても、内部構造の異なることが多いメモリ機器。HDDとは異なる難しさがありますが、どのように復旧を行っているのでしょうか?
それでは早速いきましょう!
1.欠けてしまい、「SDカードが異常です」と表示され、データを読み取れないマイクロSDカード
今回、数あるメモリ系機器の事例の中から紹介するのは、欠けてしまったマイクロSDカードからのデータ復旧です。
このマイクロSDカードは、タブレットから取り出すために画鋲で押し出そうとした際、針先で傷付けてしまい、肉眼でもわかるほど欠けてしまっていました。このような状態では、多くの復旧業者では復旧不可と判断されてしまいます。
ただでさえ緻密な構造の機器にもかかわらず、欠けてデータを見られなくなってしまった状態から、どのようにデータ復旧を行ったのでしょうか。メモリ系機器の復旧に詳しい、エンジニアの大下さんを直撃しました。
2.メモリ系機器のデータ復旧に詳しいメモリエンジニアの大下さん
聞き手:今回、欠けてしまったSDカードから、データ復旧成功に至った決め手は何でしょうか?
大下さん(以下、大下):目視で確認できるような傷が入っているというのは、珍しいケースでした。復旧できたのも珍しいですが、やはりSDカードの復旧実績が数多くあることが一番ですね。過去から蓄積してきた復旧経験やノウハウを応用し、珍しいケースにも対応できました。
聞き手:珍しいケースの復旧すら対応できてしまうほどの実績やノウハウが積み上げられているのですね。
デジタルデータリカバリーでは、HDDから復旧サービスをスタートし、メモリ系機器の復旧は後発のサービスとなっていますが、いつ頃から復旧に対応するようになったのですか?
大下:メモリ系機器は、約10年前に対応を始めました。SDカードやUSBからスタートし、次第にSSDやスマホにまで対応範囲を広げ、現在に至ります。
聞き手:どのようなことがきっかけでメモリ系機器のデータ復旧にも対応するようになったのですか?
大下:ご依頼が年々増えていたのが大きいです。データを失い困っているお客様を助けるために、私たちとしても対応範囲を増やしてきました。
元々メモリの機器は復旧技術すら確立されていなかったのですが、更に復旧率を向上させるため、研究を重ねてきました。
聞き手:スマホやSDカードなどは使用している方も多いですしね。安全にデータを復旧するために、ユーザーに伝えたいことはありますか?
大下:復旧ソフトなどを使用したご自身での復旧は控えて欲しいですね。データの中身が変わってしまったり、ファームウェア破損だけ生じていたのが、コントローラー破損も併発してしまうといったことが起こりやすくなります。通電するだけでも悪化の恐れがあるので、抜き差しもあまりしない方が良いです。
聞き手:今回、欠けたSDカードのデータ復旧を紹介していますが、他にはどのような障害のSDカードの復旧をご依頼いただくことが多いですか?
大下:よくある障害は、ファームウェア破損ですね。また、症状で言えば、フォーマットを要求される状態も多いです。
SDカードのようなNAND型フラッシュメモリの場合、物理破損と論理破損が併発して起こることがとても多いんです。認識しない、データにアクセスできないといった場合、両方の障害が発生している可能性があります。
聞き手:メモリ系機器は緻密な構造で、配線がたくさんあったり、同じメーカーの同じ機器でも配線パターンが多岐にわたるなど特徴がありますが、データ復旧における難しさはどこにありますか?
大下:媒体によって種類が異なります。配線パターンが異なるなどの難しさも媒体によりますね。
SDカードやマイクロSDだと、一体型の構造をしているため、工場から出てくる段階でチップセット(部品の組み合わせ)が完成しており、同じメーカーの同じ型番では配線がほとんど一緒です。その組み合わせには、あまり変化もありません。
USBメモリは、主要な3つの構成部品が最終工場で組み立てられるため、チップセットに様々なパターンがあります。その時々の価格により組み合わせる部品が変化するため、配線も頻繁に変化します。
スマホもUSBメモリと同様の事情から、チップセットの変化が多い媒体です。
3.デジタルデータリカバリーのメモリ系媒体の復旧における差別化ポイント
聞き手:メモリ系機器の復旧において、デジタルデータリカバリーの強みであるポイントは何ですか?
大下:技術力・スピード・設備・セキュリティ・実績の5つのポイントが強みです。
弊社は年中無休で復旧作業ができる体制を整えています。設備投資がなされており、復旧作業スペースには、顕微鏡やブロワー(ホコリなどのゴミを飛ばす機会)、半田ごてなどの設備が、多くの機器を同時作業できるように整備されています。
聞き手:これだけ大きな復旧設備があるのは、世界でもおそらく弊社だけですよね。
大下:そうですね。また、論理破損の修復に使用する業者専用ソフトも取り揃えています。研究用のツールとして、ピンアウト解析ツールやXR(比較的新しいNANDに使用されている技術)を解析するツールもあります。
これだけ設備やソフトが整っていても、使いこなせなければ意味がありませんので、弊社のエンジニアは研修に参加するなど積極的に情報を取り入れ、技術力やノウハウを常にアップデートしています。
4.エンジニアを経験して見えてきたこと
聞き手:大下さんはこれまでエンジニアとしてどのようなご経験をされてきましたか?
大下:初めは物理エンジニアとして経験を積み、大阪支店で診断から復旧に至るまでの全ての復旧工程を担当していた時期もありました。その後、メモリ系機器の対応をスタートした時期から、ずっとメモリエンジニアとして復旧や復旧ツールの開発などを手掛けてきました。
聞き手:エンジニアとして復旧にあたっている中で、やりがいのある瞬間はどのような時ですか?
大下:エンジニアは基本的にお客様と直接関わる機会が少ないので、出張診断を行うためにお客様先に伺う際には、モチベーションが上がります。実際にデータ復旧を手掛けることで困っているお客様を助けられている、自分の仕事が役に立っていると実感します。
聞き手:エンジニアとして技術力向上や研究など注力していることは何かありますか?
大下:研究は常に行っています。研究の日々ですね。
つい最近では、スマホのパスワード解析や、スマホのデータ削除の研究を行っていました。半田付けのスキーム作りも行っていましたね。
聞き手:エンジニアの間で、研究から分かったことや復旧実績をもとにした技術・ノウハウを共有する文化があるのですよね。
大下:その通りです。
メモリチームでは、基本的に個々で1,2個テーマを決めて研究しています。世の中で未だ復旧できていないケースなど、誰もできないことを第一人者として研究しています。その際には、海外など外部から情報を集めたり、自分で1から研究を行ったりしています。
聞き手:今後、挑戦したい研究や取り入れたい知識、向上したい技術などはありますか?
大下:SSDのファームウェアに関する研究に注力したいと考えています。また、比較的新しい技術が使われたメモリ系機器に対応できるよう、復旧ツールメーカーと手を組んでツールの開発や導入を行っている最中です。
聞き手:新たな技術や機器の出現にも対応し、復旧できるよう、常に研究の日々なのですね。本日はありがとうございました!
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