広島県のデジタル人材育成の取り組み②
前章ではデジタル人材育成という脈絡で広島県の背景や執筆の動機などを記載させていただきました。下記が広島県の各アクターの取り組みを図示したものになりますが、広島県を中心として地元企業、銀行、教育機関などがアクターとなって広島県内のデジタル人材育成を取り組まれています。
広島県のDXの現在地は?
広島県が強く推進しているデジタルトランスフォメーション(DX)の現状についてまずは確認をしたいと思います。2022年の帝国データバンクによる「広島県DX推進に関する企業の意識調査」(広島県に本店を置く企業 248社が回答)によると、調査結果として下記3点が浮き彫りになったと指摘しています。
1. 「DXに取り組んでいる」は14%にとどまる、大企業ほど意識高く
2. 「オンライン会議設備の導入」がトップの50.4%、DX初期段階が上位に
3. 取り組む上での課題、「対応できる人材がいない」が5割超
帝国データバンク
「特別企画: 広島県 DX推進に関する企業の意識調査」要旨より
特にデジタル人材育成という観点では「3. 取り組む上での課題、「対応できる人材がいない」が5割超」という調査結果について、DXに取り組んでいく上での人材不足が大きな課題であると浮き彫りになっています。調査によると、DXに取り組む上での課題は、下図のとおりになっています(図.1)。「対応できる人材がない」(51.2%、127社)、「必要なスキルやノウハウがない」(47.6%、87社)などデジタルを推進する上での量および質量面に課題がある。企業からの声として「広島県がDX推進に力を入れており、情報が定期的に送られてきて意識が維持できている」という声も聞かれ、県全体のDX推進の取り組みが企業の意識向上に繋がっているものの、やはり「人」への課題を解いていかなければDXは進まないということは広島県特有というよりも社会全体の課題感であると考えます。
広島県のDX推進・デジタル人材育成の取組み
広島県ではデジタルトランスフォメーション推進のためにDX関連事業として「仕事・暮らしDX」、「地域社会DX」「行政DX」の3つの柱およびベースとなる広島県DX推進事業を土台として、令和4年度予算として全46事業 約53億(広島県の総予算は約1兆円)を計上しています。人材育成関係では、仕事・暮らしDXや広島県DX推進事業として下記の通り予算計上をされています。
広島県として2022年末に発表した「広島県DX加速プラン」において、「DXを加速させるには,各主体における経営者層の理解に加えて,情報システム人材だけでなく,働き手一人一人が,DXを自分事としてとらえ,デジタル技術を使いこなすことが重要」と述べています。これはデジタルスキル標準における「DXの自分事化」を想起するものであり、広島県ではビジネスアーキテクトやデータサイエンティストなどのDX推進スキル人材の育成とともに、DXリテラシー標準を市民にも習得できるような取り組みを行っていることが特徴です。
広島県DX加速プラン
「柱2.人材の確保・育成の促進」に関する重点的な取り組みの方向性
▶ 組織全体のデジタルリテラシー向上
- 広島県リスキリング推進検討協議会での議論を踏まえた必要な知識やスキルの 習得支援,「みんなのDX研修」や「事例研究会」,IT パスポート等の取得促進等を 通じた県内の民間事業者のデジタルリテラシー向上 - 専門家の伴走支援による,実践的な課題解決を通じた変革を企画し実行できる人 材の育成(特にマネージャー層)等
▶ 県・市町の情報システム人材の確保・育成 (主な取組の方向性)
- 県・市町それぞれにおいて情報システム人材を確保し,県全体として人材プール・ シェア制度の構築 等
学生に対してもデジタル人材育成の支援を行っており、県内大学や高等機関での学生に向けてのデジタル関連授業や講座の開講や、県内の情報系学部・学科などで学ぶ学生を対象として奨学金制度の創設などを県として支援を行っています。次回は広島県で取り組んでいるデジタル人材育成の就業意識向上やキャリア教育支援の取り組みを紹介したいと思います。
文責:デジタル人材育成学会副会長 中村
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