
【短編】夢うつつ
深い闇が開けて、目の前に光が差した。
ここは、俺の部屋で布団の中だろうか。
景色が分かるくらいには輪郭が出来たが、いまだぼんやりしている。なんだかはっきりしない。あのへんに勉強机が在ったはずだが、よく見えない。
とにかく、早く起きよう。
俺は体を起こし、ベッドから降りた。
俺は体を起こし、ベッドから降りた。
えっと、次は何をすればいいんだっけ俺は体を起こし、ベッドから降りた。
朝食を頬張っていると、妹が2階から降りてきた。まだパジャマだ。
おい、早く着替えなさい。
父さんがそう言う。いや、母さんか?いや、新聞を読んでいるから父さんだ。
ん?なんか違うな。あっ、そうだ。
俺は体を起こし、ベッドから降りた。パジャマから部屋着に着替える。1階に降りて、洗面所まで行き、顔を洗う。鏡はやはりぼんやりしていて、俺の顔はしっかり映っていなかった。
リビングに行くと、父さんと母さんと中学時代の友人がすでに朝ご飯を食べていた。
食卓を見てみると、今日はごちそうのようだった。何の料理があるかはわからなかったが、ごちそうであることはわかった。
朝食を頬張っていると、妹が2階から降りて
おい、早く着替えなさい。
父さんがそう言う。いや、母さんか?いや、新聞を読んでいるから父さんだ。
友人が話しかけてきた。
なあ、お前、あの子のこと好きなんだろ?
えっ、何で知ってるんだよ。彼とあの子は面識ないはずなのに。
すると、チャイムが鳴った。玄関まで行き、ドアを開ける。
はーい。
って…
そこにいたのは、絶賛噂中のあの子だった。
おはよう。はい、おはようのキス。
ちゅっ、と小気味のいい音が俺の頬から鳴った。俺は今顔が真っ赤になってしまっている。
そんなことより!このままじゃ遅刻しちゃうよ!早く!
そう言うと、彼女は俺の腕を掴むと、勢いよく道路へ飛び出した。
俺は制服を整えながら、彼女と共に学校への道を走る。
なんだか見たことがあるような無いような、ぼんやりとした街並みを一生懸命走る。
なんだか見たことがあるような無いような、ぼんやりとした街並みを一生懸命走る。
おかしいな。いくら走っても全く進まないぞ。遅刻してしまうというのに。俺の視界に表示されたタイマーでも、始業の時間まであとちょっとを指している。
橋を渡り、坂を登り、やっとこさ見えた学校からチャイムが鳴っている。くそ。結局遅刻かよ。
ジリリ…
まあ、彼女からキスしてもらえたし、いいか。
ジリリリリ…
俺は、さっきの場面を思い出す。
ジリリリリリリ…
おはよう。はい、おはようのキス。
ジリリリリリリリリ…
おはよう。はい、おはよう。はい、おはよう。はい、おは
ジリリリリリリリリリリ…
「はっ!」
俺はその音で反射的に起きる。学校のチャイムではなく、目覚まし時計だ。だいいち、チャイムはあんな音ではない。
今度こそ景色が明るく冴えた。俺の部屋だ。ちゃんと勉強机もある。
俺は、すでに薄れつつある甘美な光景を思い出し、現実ではあり得ないことであったと気づき、呟いた。
「なんだよ、夢か…」