見出し画像

【短編】雪の下には

深く積もった雪の下って、何があるのか見えないものじゃないですか。例えば、死体なんかが埋まっていても。
そんなにビビらないでくださいよ。ただ、見えないところには何があるのかわからないって話です。それって怖くないですか?何気なく踏みしめている雪の下は、それが溶けるまでどうなっているのか分からないんですよ。実際、春になって雪が解けて全てが露わになってから凍死体が見つかるなんて事例がごろごろあるわけで。
え?すぐ死体に持っていくって?
すみません。でも、今から私がする昔話に深く関わってくるのでね。
そう、あれは中学校時代。もうどのくらい前ですか。年齢バレたくないのでぼんやりですが、だいたい30年前くらいでしょう。
大雪の年でした。毎日毎日ゆきやこんこで、登校するのも一苦労といったほどです。
みんなはしゃいでましたよ。なんせ今まで経験したどの冬よりも雪にまみれていましたからね。まるで小学生かのように遊びまくりました。
で、一番苦労したのは先生方でした。車で来る方が大半だったので、そもそもたどり着けない人もいましたし、それでも何とかたどり着いた先でも、駐車場に積もるくどいくらいの雪をどかさなければならなかったのです。
そのせいで学校はお休みになりました。私たちがはしゃいでいたのはそれが理由でもあります。
先生方は頑張って頑張って、なんとか成し遂げたそうです。その代わりに、グラウンドの片隅には巨大な雪の山ができてしまいました。私も見たんですが、本当に大きかったです。当時の私の2〜3倍の背はあったんじゃないでしょうか。まるでピラミッドのようでした。
はい。実際にそうだったんです。ふざけてないですよ。お日様が一季節かけてヴェールを剥いでくれました。
その春の日、私たちに衝撃が走りました。あの山から死体が見つかったというのです。
…予想できてたって?いやいや、すごいのはこっからですよ。
その死体の身元を警察が特定したところ、学校とは何の関係もない、なんなら住んでいた地域すら関係ない、都会のイケてる男だということがわかったのです。いったい彼はどうやって山の中に入り込んだのでしょうか。山は、時間が立つにつれて硬くなっていましたし、途中から詰め込むなど相当厳しいはずです。
一人分くないなら何とかなるだろうって?私がいつ死体が一体しかないと言ったんです。
似たような死体が10体も見つかりました。全員死因は凍死でした。
それを聞いたときぞっとしましたよ。私たちはあの山で何度も遊びましたからね。恰好のアトラクションですから、近寄っていない子はいなかったはずです。私たちは、死体群の上で雪合戦をしていたんです。
なんでそんなことが起こったか?わかりませんよ。警察でさえ投げ出したって噂でしたから。
私が言いたいのは、雪山にこっそりと死体を隠す方法などではなくて、あなたが雪の山だと思っているそれの中は、本当に雪しか入っていないのでしょうか。いや、雪山に限らず、上辺で取り繕われたものの本質は、それを払いのけないとわからないということです。
あなたも、ときどき雪山を掘ってみてはどうでしょう。なにか、見つかるかもしれませんよ。


いいなと思ったら応援しよう!