#13 列に割り込まれただけなのに
僕はラーメンが大好きでほぼ毎日食べている。X(旧 Twitter)はただ食べたラーメンを投稿するだけのアカウントになっているくらいラーメンが大好きだ。
人気店はかなりの確率で行列になっていてラーメン一杯食べるのにも一苦労する。
先日、いつものようにラーメン屋に行くと、14時過ぎにも関わらず店の外に10人ほど並んでいた。
僕は必ず、その日行く店のシステム等を調査してから訪問するので、その店のシステムである「食券を購入してから列に並ぶ」を実践した。
食券を買う僕の後ろには若いチャラい男2人がいた。
食券を買って列の最後尾に向かうと、そこにはギャル2人がいた。
僕はギャルの後ろに並ぶと、先ほどの男2人がギャルのところに行き、食券を手渡した。
ギャル2人を先に列に並ばせて男2人で食券を買って、先に買っていた僕を堂々と後ろに並ばせた。
理解できなかった。
いやいやいやいやルールがデカデカと書かれているのにそれをガン無視ですか??
どういうつもり??
明らかに僕のことを舐め腐っている。もしくは人として扱っていない様子だった。
僕は注意したかった。
「これ俺が先ですよね?」
すごい言いたかった。
でも言いたくなってから3秒経って、完全に言うタイミングを逃してしまった。
この3秒の間、4人は僕を一瞥することもなく談笑していた。
眼中にないのは明らかで、言うに言えなくなってしまった。
もし僕がサウナに行った時に喋っている人たちがいたら、
「あの、目の前に『会話をお控えください』って書いてあるんですけど、読めます?」
と言って黙らせる。
これ毎回やる。
今回も同様の事例のはずなのに注意できなかった。
なぜ言えなかったのかを考えた。
答えはすぐに出た。
今回の事例は被害者が僕一人だったからだ。
サウナの時は他の客も迷惑にしているので、謎の正義感が働いて自分が注意しに行く。
今回はただ僕一人が列に割り込まれただけだ。
自分だけが被害を被った時、僕は泣き寝入りしてしまうんだと気がついた。
なんとも惨めなんでしょうか。
オーディエンスがいる時は存分に正義感を振りかざして、誰からも頼まれていないのにヒーロー気取りな真似をするが、オーディエンスがいない時は悪事を黙認する惨めな男だった。
ヒーロー感を味わうことと自己犠牲をすることでしか自己肯定感を感じられない男だった。
しかも列に割り込むというのは軽犯罪になりうる。いや絶対にならないけど、サウナの中で喋る行為よりも悪質である。
それなのに何も注意できなかった。自分の正義感はただ見せつけるだけの正義感だった。
かなり落ち込んでしまったので、せっかくのラーメンを前に気を持ち直したくて、劇団ひとりさんのホストのネタを頭の中で再生して気分を上げていた。
すると前の4人の会話が聞こえてきた。
※「今日暑くない?」
「ここ日差しめっちゃ当たるわ」
「暑い?それ一枚脱げば?」
「いやめんどいわ」※
※繰り返し※ ×4
で????
そんなことを思っている間に店内に入れた。
前の4人と僕は一緒に案内された。
すると年配の店主が
「おお、いつもありがとうね」
と前の4人に笑顔で声をかけていた。
おい常連かよ!
え、常連なの?
一見さんじゃないの?
じゃあ毎回ルール違反マナー違反の応酬?
愛想よく話している4人と店主。
俺は圧倒的な疎外感を感じていた。
なんか、不良がちょっと良いことしただけですごい褒められる的なものを感じた。
どうせ世界はそんなもの
なんだか悔しさでいっぱいになった僕は、その4人よりも先にセルフの冷水機に行き水を取った。
こんなどうでもいいことで先手を取ろうとするみみっちい男
というかどうでもいいことを考えすぎて勝手にどんどん落ち込んでいく男
僕はただ列に割り込まれただけなのに、なんで自分を惨めに感じなければならなかったのだろうか。すごい疲れた。
ラーメンは美味しかった。
悔しさと切なさと惨めさをなんとか解消したくて、帰りの電車で赤ちゃんを抱っこしているパパさんに席を譲った。ここでも責任感と自己犠牲を貫いた。
些細なことで頭の中が文字で埋め尽くされるほど考えすぎてしまって疲れて20時に寝た。
どうすればよかったのだろうか。
あの場で注意したとしても、余計なことを言ってしまったと反省してしまうだろう。
何がいけなかったのか。
「こいつなら割り込みしてもいいだろ」という風に舐められる雰囲気を出していた自分が良くなかったのか。
なんか舐められる雰囲気あるんですよね。
歌舞伎町のキャッチに急に因縁つけられて殴られたり、電車でヤンキーに「お前何見てんだよ」と詰められたり、ユニットでやろうと思っていた同期にネタを送ったら10日間既読無視されたり、勝手な嘘を流されて悪者にされたり
もう散々なので、舐められないように努力していかなきゃいけないですね。
もう!列に割り込まれなければこんなに考えずに済んだのに!
明日は楽しい一日にしたいです。