全体像で勝負する!ゲシュタルト心理学で教員採用面接を攻略する方法

レトリカ教採学院(教採塾)、学院長の川上です。

本日も、教職教養の知識・理論と、実践の往還です!

昨日までは、教育現場での実践・応用をテーマにした教職教養の知識・理論のご紹介でしたが、本日は、面接攻略のために必須の教職教養を、皆さまにご紹介したいと思います!

では、さっそく! 



ゲシュタルト心理学(Gestalt psychology)とは

ゲシュタルト心理学は、20世紀初頭にドイツで発展した心理学の理論で、人間の知覚や認識のプロセスを探る学問分野です。

 「全体は部分の総和に勝る」という中心的な原則に基づいており、個々の要素がどのように組み合わさって、私たちが知覚する全体的なパターンを形成するのかに着目しています。

 ゲシュタルト心理学では、人間は個々の刺激を単独で認識するのではなく、それらがどのように関係し合うかという文脈を考慮し、全体をひとまとまりとして知覚する傾向があると主張します。

 たとえば、複数の点が並んでいると、それを単なる点の集合ではなく線として認識することがあります。

 これをプレグナンツの法則(よく形作られたものが好まれる傾向)として説明し、人間はできるだけシンプルで整った形やパターンを好んで知覚するという考え方です。

 

主要なゲシュタルトの法則

 1. 近接の法則
刺激が近くにあると、それらが一つのまとまりとして知覚されやすくなります。

たとえば、近くに配置された点は、離れて配置された点よりも一つのグループとして知覚される傾向にあります。


2. 類似の法則
形や色、サイズが類似している刺激は、それが同じグループに属していると知覚されます。

類似した物体が並んでいる場合、これらを一つのパターンやグループとして見ることが一般的です。


3. 連続の法則
刺激が連続的に配置されている場合、人はそれを途切れのないものとして知覚します。

たとえば、カーブを描く線がいくつかの点で構成されていても、その線が連続的であるかのように感じます。

 
4. 閉合の法則
部分的に欠けている形であっても、脳はそれを完全な形として補完して知覚します。

 たとえば、丸の一部が切れていても、全体として丸い形を知覚します。

 
5. 共通運命の法則
同じ方向に動いている物体は、同じグループに属していると知覚されます。

たとえば、群れで移動する鳥を見たとき、それらが個別の鳥ではなく、まとまった一つの群れとして知覚されることがあります。

 

ゲシュタルト心理学の応用

 ゲシュタルト心理学は、視覚芸術、デザイン、教育、認知科学など多くの分野に影響を与えています。

 特にデザインにおいて、ユーザーがどのように情報を整理し、理解するかを考慮する上で、ゲシュタルトの法則が有用です。

 教育の場でも、学生が個別の情報をどのように統合して理解するかを説明する理論的基盤となりえます。

 この理論は、人間の知覚が単なる感覚の寄せ集めではなく、脳が文脈や関係性を重視して全体像を把握しようとするプロセスであることを強調しています。

 そのため、心理学のみならず、視覚や認知に関わる広範な研究領域において、ゲシュタルト心理学の影響は今日でも非常に大きいものとなっています。


 教員採用試験の面接への応用

 ゲシュタルト心理学は、教員採用試験の面接においても非常に有用な理論であり、特に面接官が受験者を評価するときに、全体的な印象がどのように形成されるかに影響を与えるポイントが多くあります。

 具体的な例を交えて説明します。

 1. 面接官の全体的な印象形成(プレグナンツの法則)
 ゲシュタルト心理学の基本的な考え方である「全体は部分の総和に勝る」という原則は、面接官が受験者を評価する際にも当てはまります。

たとえば、面接官は受験者の服装、態度、話し方、内容といった個別の要素をすべて別々に見るわけではなく、これらの要素を総合的に見て全体的な印象を形成します。

この全体的な印象は、どれか一つの要素が目立つだけでなく、調和がとれているかどうかが非常に重要です。

つまり、清潔感のある服装、落ち着いた態度、自信のある話し方がバランスよく取れていれば、面接官に好印象を与える可能性が高まります。


 

受験者がスムーズに自己紹介をし、姿勢も良く、自然な笑顔で応対している場合、面接官はその一貫した全体的な印象を「プロフェッショナルで信頼できる人物」として捉えます。

 これが、ゲシュタルト心理学に基づく全体の調和がもたらす効果です。

 

2. 第一印象の重要性(近接の法則)
ゲシュタルトの「近接の法則」は、物理的または時間的に近い要素がまとまって認識されやすいことを指します。

 面接の初期段階、特に最初の数分は非常に重要で、面接官はこの短い時間で受験者の全体的な印象を強く形成します。

 自己紹介や最初の挨拶がスムーズで好印象を与えると、その後の質問にも好意的な目で見てもらえることが多いです。

 逆に最初に不安な表情や準備不足を感じさせる発言をすると、その後のパフォーマンスが多少良くても、最初の印象が悪影響を及ぼします。

 

面接室に入った瞬間、堂々とした姿勢で笑顔を見せ、丁寧に挨拶することで、面接官に好印象を与え、その後の質疑応答においても一貫してポジティブな評価を得やすくなります。

 

3. 部分的な欠点を補う全体的な印象(閉合の法則)
「閉合の法則」は、欠けている部分があっても、人はそれを補完して全体として意味のあるものとして知覚するという考え方です。

 受験者がある質問で十分に答えられなくても、それまでの回答や態度が良ければ、面接官はその一つのミスを大きく取り上げず、全体としてポジティブに評価する傾向があります。これは、面接官が受験者を一つの「まとまり」として見ているからです。

 

 仮に一つの質問に対して少し自信のない答えをしてしまったとしても、それまでに誠実な態度や積極的な姿勢を見せていれば、面接官はその部分的なミスを軽視し、全体として「良い候補者」として認識する可能性が高くなります。

 

4. 一貫性と信頼感の維持(連続の法則)
「連続の法則」に基づき、面接官は受験者の言動が一貫していることを求めます。

 自己紹介から質問への対応、最後の挨拶に至るまで、一貫して落ち着いた態度を保ち、考えをしっかりと伝えることができる受験者は、面接官に対して信頼感を与えます。

 もし途中で態度が変わったり、話し方が急に不安定になったりすると、一貫性の欠如が目立ち、全体的な評価に悪影響を与えることがあります。

 

 自己紹介で落ち着いた印象を与えた受験者が、質問に対しても冷静に答え、最後までその姿勢を崩さず面接を終えることで、面接官に「信頼できる」といった一貫したポジティブな印象を与えます。

 
5. 面接官の無意識の偏りに対処する(類似の法則)
「類似の法則」は、面接官が受験者の特定の特徴を他の受験者や以前の経験と比較し、無意識にバイアスを持つことがある点に関連します。

たとえば、ある受験者が、過去に面接官の印象に残っている受験者と似た振る舞いをすると、その受験者に対しても同じような評価がされる可能性があります。

このため、受験者は他者との差別化を図り、自分自身のユニークな強みを明確にアピールすることが重要です。

 

 同じスーツを着て同じような言葉遣いをする受験者が多い中で、あえて独自の教育理念や経験に基づいた具体的なエピソードを語ることで、他の受験者との差別化を図り、面接官に強く印象づけることができます。

  

まとめ

このように、ゲシュタルト心理学の理論は、教員採用試験の面接において、全体的な印象形成や部分的な要素の影響を理解するための有効なフレームワークとなります。

 受験者は、単に個別の質問に対して正確に答えるだけでなく、全体的な印象や一貫性を意識して面接に臨むことで、面接官からの評価を高めることができるのです。


ではまた!

レトリカ教採学院(教採塾)
学院長
川上貴裕

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