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自然を読む力

 山岳ガイドに連れられて縦走路を歩いたり、スマホの地図をナビゲーションに使ったり、はたまた、何かあれば携帯で気軽に救助を要請する今の登山では幻のようになってしまったノウハウが、昔の登山にはあった。

 短波放送の気象通報を聴いて自分で天気図を起こして、その日の行動を決めたり、地方独特のものも含めた天気俚言を理解していることも必須だったし、もちろん地質や植生のことも理解して、常に自然を観察しながら歩いていた。

 そんなノウハウの中で、地名の意味を知っておくというのもあった。日本の古い地名はその土地の地形や地質を意味するものが多く、地名から想像できることがたくさんあったからだ。

 この『失われた、自然を読む力』は、主に欧米のフィールドが舞台だがが、やはり同じように、地形やその土地の性質を物語る地名の話が出てくる。

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語尾の「-ness」は岬のことを言っていて、「pen」は丘の頂上を意味し、「-hurst」は近くの森のある丘への手がかりだ。
アメリカではローマ街道は見つからないだろうが、開拓者やアメリカ先住民の出自を反映する場所の名前はたくさん見つかるだろう。たとえば、「-kill」で終わる小川の名前はたいていオランダ語に由来している。
アメリカ先住民の使っていた接尾辞「-amack」は釣りに向いている場所を示し、ニューイングランドとロングアイランドに多く、「-suck」は小川を、「-pauk」は水の場所を、「kuppi」は風雨から守られた場所を表しており、ほかにもたくさんある。歩いているとき謎を求めているなら、アメリカ先住民が、幽霊が出ると感じる場所のことを言うために用いた「-manito」と「-waken」が名前についた場所を探すとよい。
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 ちょっと綴りが違うが、私の大好きな俳優、Christopher Walkenも、もしや元は幽霊が出る場所もしくは幽霊そのものが由来の名前だったのかも……彼の風貌と、演じるキャラクターほど不気味なものはないから……などと想像しながら、土地を思い浮かべるのも、楽しい一冊。

(2021.3.8)

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