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彼岸にふと思い出し…

 私の父は若い時に写真に凝っていて、地元の風景や珍しい文物を撮影し、自分で現像していた。

 そんな父のコレクションの中に、円山応挙の幽霊画を掛け軸にした写真があった。

 子供の頃、これが怖くて仕方なかったのだが、ふと思い出して、探してみたが見つからない。

 この幽霊画は、無量寿寺という古刹に伝わるもので、昔、若くして亡くなった母親が、この世の未練を断ち切れずに夜な夜な現れるのを村人が恐れていたところ、鹿島神宮へ参詣する途中の親鸞が寺に立ち寄り、話を聞いて供養したところ成仏したという話を絵にしたものだった。

 たしか、あの絵は彼岸に公開されるのではなかったかと思い出して、調べてみると、この1月に本堂が焼け落ちてしまい、今はご開帳どころではないとのこと。

 でも、掛け軸は無事だったそうだ。

 趣のある茅葺の大屋根を載せた本堂が無くなってしまったのは残念だが、落ち着いたら、掛け軸を参観させてもらおうと思う。

 しかし、空海同様、親鸞にまつわる伝説も全国にある。それに、円山応挙の幽霊画も。こうした伝承で、何を伝えようとしたのだろう。

 写真は、ありし日の無量寿寺。

(2021.3.21)

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