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エルサレム

 先日、友人に、「今いちばん行きたい場所はどこか」と質問されて、「はてどこだろう?」と考え込んでしまった。

 このコロナのご時世、「今」現実的な旅がしづらい状況で、リアルな旅が俄に想像できなかったということもあるが、逆に、心に引っかかっている「場所」は無数にあって、そんな質問をされたときに、沸騰しそうな湯に現れる無数の泡のように、小さなイメージがたくさん浮かんできたからだった。

 だけど、その後、その質問がずっと心に引っかかっていて、ふと本棚を見上げたときに飛び込んできた地名に、「そうだ、いちばん行きたいのは、ここだ!」と、焦点が定まった。

 エルサレムほど、様々な「幻想」が詰まった場所はないだろう。4000年に渡る歴史と、それにともなう人の思いが、狭い範囲の中に凝縮されて、いきり立っているような土地。

 「人の思い」とは何か、そんなことが、エルサレムに行けば感じられるのではないか、そんなことをずっと思い続けてきた。

 そんなエルサレムという幻想を基礎にしたような街に生まれ育ったアモス・エロンが著したのが『エルサレム ー記憶の戦場ー』だ。この書には、「リアルな幻想」が詰まっている。

(2021.2.25)


「聖地学講座第128回「エルサレムに見る『聖地性』」
https://note.com/dcl_issey/n/n54bf09f309ba

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