見出し画像

ウィルソンじゃなくてキングの『アウトサイダー』

キングの「幻想世界」は、「ホラー」と言ってしまえばそれまでだが、彼の作品を通観すると、「スタンドバイミー」のようなセンチメンタルな作品も含めて、この世は不条理だけれど、それでも何かを求めて生きるに値すると力強く訴えてくる。

この作品は、エピグラフに、コリンウィルソンの「アウトサイダー」からの一文が掲げられていて、キングがウィルソンへのオマージュなんて珍しいなと思いつつ読み始めた。

ウィルソンが展開したアウトサイダー論をベースに、キング独自の解釈を加えた話にでもなるのかなと思ったら、キングの十八番、スラップスティック的悲劇へとまっしぐら。

だが、彼が今まで描いてきた悪の中でも一、ニを争いそうな悪でありながら、生存への意思を吐露する場面で、その邪悪と人間の行う邪悪がオーバーラップして、一瞬、何が悪なのかを見失いそうになる。

そこに、ウィルソンの一文をエピグラフに使い、「アウトサイダー」をタイトルにしたキングの意図が、パッと浮かび上がる。

一昨年くらいから、キングのTwitterをフォローしているが、けっこう頻繁に投稿していて、よく気分が散漫にならないもんだと、関心する。

しかし、そんなふうに、マルチタスクを処理できなければ、複雑なプロットの作品は書けないよなあ…と、妙に納得も。

いいなと思ったら応援しよう!