神話の力
先週末から今日まで、昼走夜読で、夜は『神話の力』を読んでいた。
以前読んだのは、20年くらい前だと思うが、そのときは、比較神話学のテキストとして紐解いて、主に西洋と東洋の神話が物語る宇宙観や自然観の違いを知識として取り込んだような覚えがある。
今回、時をおいて読み返してみると、20年前とは違ったところに心を惹かれた。
例えば、人類共通のよりどころである自然と人を結びつける普遍性を志向する神話と、特定の社会集団や宗教と結びつける社会的な神話があり、キャンベルは、普遍性を志向する神話のリアリティを失ってしまったことが、現代の人類とその文明を危機に陥れていると明確に語っている。そして、社会的神話は乗り越えていかなければならないと。
「個々人を地域グループと同一化するのではなく、この惑星全体と同一化するような神話が必要です…」
また、人間なら誰でも理性を持てるはずであり、人間の知性が真の知識を持つことができるからこそ、誰もが特別な権威を持つこともなく、特別な権威を認める必要もないということこそが民主主義の基本原理だとも明確に語っている。
現代がどうしようもない袋小路に追い込まれているように感じられるからこそ、紐解くべき一冊だろうなと思わされた。
日本人を一つにまとめるのでも、東洋の価値観を優れたものと自慢するのでもなく、地球人を一つにまとめるための神話というのは、何なのだろう。
キャンベルは、その一つのヒントとして、芸術の可能性をあげている。
(2021.3.16)