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知識の記録方式(2) 背景

私達は結局のところ手書きをデジタル化しただけじゃないのだろうか。確かに昔からの紙のバインダーは減った。しかし紙であったがゆえに、置き場に困ることから、その文書の保管期限を決め、ファイリング担当を決め、必要なことと、そうでないことを工数をかけて選択をしていた。今はといえば、いくらでもデジタルデータは保存できるために、文書(データ)管理は大変ルーズになってしまった。さて、この昔と今日の方法はどちらが良いのだろうか?ちょっとしたメモでも20年前のメモが捨てられない私には、今日の無制限ともいえる記録の方法が気に入っている。これはコンピュータの恩恵である。一方で困ったことが起こってしまった。それは、探せないという問題である。かつては、その場所にバインダーが無ければ、もう焼却されたものと素直に理解できていた。しかし今日は、どこかにきっとあるはずであるとスッキリとできなくなってしまったことだ。ゆえに、どのように記録すれば後から過去の思考を見つけ出せることができるのだろうかということに興味を持ってしまったのである。
 あの時からずっとこのテーマを考えることを楽しむようになってしまった。そんな中で最初に知った先人は南方熊楠先生の存在だった。この先生の執念や情熱も探究心も凄まじさのある博物学者であったようだ。そもそも博物学という言葉はその時初めて知った。恥ずかしい体験であった。関心が湧いて、その後、和歌山にある記念館も訪問した。もう1人が川喜田二郎先生。さすがに、先生のKJ法は若い会社時代に教えていただいた。実際にカードで実務に使っていた。最後にもうひとりの先生。知的生産の技術で有名な梅棹忠夫先生である。この3人の諸先輩の書籍が私の近年の思考を変えたと思う。では、50年前に出版された先生の本にある方法は今日どうなったのだろう。先人達の思想をその後私達はどのように進化させることができたのだろうか?私はこのように疑問を持ち、IT技術と関係させて解決方法を研究してきたのである。
 最初に手掛けたことはものづくりの仕事の中での気づきをQCDに分けて記録することや、製品開発から生産までの業務をセットメーカーから部品のサプライヤーまでグローバルな業務に用いることのできる業務定義体をRDBに定義した。これはA4バインダで1冊分にびっしりとkeyと属性項目を記述してみたのである。どこまでの詳細化を行うかについては、前職で経験していたエンジニアリングの粒度で記載した。いわば、ものづくりデータのマスター化である。品質、生産性、リードタイムだけでなく、在庫、原価、工程、作業、検査、物流など考えられるマネージメント対象を網羅させた。この時、気づいたことがその後の考えの原点になった。続く。

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