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Webフリーマガジン「特技でメシを食う」 第5回 【特別編】 吉田貴司さん(漫画家)
インタビュー企画「特技でメシを食う」シリーズ。
累計200万PV、1.3万回以上のシェアを記録したネット漫画『やれたかも委員会』の作者である漫画家・吉田貴司さんが先日ツイッターで「インタビュー募集企画」を発表。早速、数年前よりファンの私が応募して実現した【特別編】を今回はお送りします!
吉田貴司(よしだ たかし)
1980年生まれ。2006年『弾けないギターを弾くんだぜ』でデビュー。2015年までに『フィンランド・サガ(性)』(講談社刊)、『シェアバディ』(作画:高良百)(小学館刊)などを発表。2016年『やれたかも委員会』がネットで話題に。6月27日に書籍化される。
「あのとき、もしかしたら僕はあのコとヤレたんじゃないか」――正解のない甘酸っぱい思い出を3人の個性的な審査員が冷静に「やれた」「やれたとは言えない」のジャッジをするという漫画『やれたかも委員会』。はあちゅうさんがツイッターで紹介したことで話題になり、単行本化も決定するなど、まさに“昇り竜”の勢いの漫画家・吉田貴司さんに「特技でメシを食う方法」を聞いた。
①あなたがメシを食べている特技は何ですか?
マンガを描くことです。
・・・と言いたいところですが、今のところ、『海猿』や『ブラックジャックによろしく』の作者・佐藤秀峰さんが経営する佐藤漫画製作所のスタッフとしても働いているので、まだマンガ1本で食べているとは言えない状態ですね。
そういう意味では、私の特技は「人柄の良さ」と「マンガ」が6:4くらいの割合だと思います。
マンガ1本の道を実現するためにも、現在はMakuakeでクラウドファンディング「あなたも委員会メンバーに参加!?【やれたかも委員会】単行本出版記念プロジェクト」を実施しています。
※『やれたかも委員会』はこんなマンガです。(一部抜粋して紹介)
(C)吉田貴司(以下同) 『やれたかも委員会 7』より
※審査員の「やれた」「やれたとは言えない」判定の結果を知りたい方は・・・本編をご覧ください!
このクラウドファンディングの期限は6月29日18時までで、1,500円からコースがあるので、気になる方はチェックしてみていただけるとうれしいです。単行本の巻末クレジット掲載や「やれた」判定札などが特典になっています。
ご支援いただいたお金は続編執筆の制作費に使わせていただく予定です。
②特技でメシを食っていこうと思ったキッカケは?
僕は高校卒業後、フリーターをやりながら漫画家を目指してマンガを描いていたのですが、22歳の頃になると周りのみんなが就職していくのを見て焦りだしました。
それで一回、漫画家になるのを完全に諦めて、ハンバーグ屋に就職したんです。これからはマンガの次に好きなハンバーグを焼いて暮らして行こうと思ったんですね。
そのハンバーグ屋さんはこれからチェーン展開をしていこうという勢いのある若い会社で、飲食業ということもあって休みがないし、出張も多ければ、仕事自体も非常にキツいものでした。
だから、家に全く帰れず、毎日のように店に泊まっていました。
冗談抜きでネズミと一緒に寝る暮らしをしてたんです。
そんな生活を続けていたところ、ふと「これはさすがに過労死するな。どうせ死ぬのならば一番好きなことやってみよう」と、もう一回マンガを描いてみることにしました。
その後はマンガを描き続けて、2006年夏に小学館のビッグコミックスピリッツ増刊号に『弾けないギターを弾くんだぜ』が掲載されて、運よく漫画家デビューすることができました。
まぁ、僕はハンバーグを焼くのも好きでしたけどね!
③特技を収益化するうえで、これまでにあった苦労や失敗は?
最近までビッグコミックスピリッツで『シェアバディ』の原作担当として雑誌連載をしていましたが、漫画家は連載を打ち切られれば「無職」になるので、収益もクソもありませんでした。
僕はその状態を当たり前のことだと思っていたので、以前は収益化を意識したことが一切なかったんです。
今考えると、そこが漫画家として「大きな失敗」でしたね。
つまり、僕は心のどこかで「出版社や雑誌が僕のマンガを売ってくれる」と思っていたんです。でも実際のところ、そんなことは全くありませんでした。
書店に行っても僕の漫画は置いてないし、売れ筋でなければ広告も出してはもらえません。人気がないので雑誌のツイッターアカウントはリツイート一つしてくれません。
その経験を経て、僕は変わらなきゃまずいなと思いました。
今、僕は出版社を通さずに個人でnoteやcakesを使ってマンガのネット販売をして、お客さんから直接お金をもらうスタイルに変えています。そこで蓄積されたコンテンツを集めて、電子書籍として販売することも計画中です。
今も試行錯誤の日々ですが、漫画をつくることだけではなく、自分で販売や宣伝までするようになったことで、収益というか、「この先もマンガを描き続けるには、どうすればいいか?」ということを考えるようになりました。
じつは6月に佐藤漫画製作所を辞めて、いよいよマンガ一本に専念するので、ここからが勝負だと思っています。
④特技でメシを食うことの最大の喜びは?
調子よくマンガを描いているときは、とても幸せです。
「特技でメシを食っている」というと、特殊能力を持っているような印象を受けますが、僕の場合は全くそんなことはありません。ともかく続けていて、何とか形になりそうなものがマンガしかなかった、というだけだった気がしています。
僕は他のことは何にもできません。プログラムも組めないし、C言語も使えないし、パワポも使えません。
ハンバーグなら焼けますけどね。
⑤特技でメシを食うための「あなただけの秘訣」は?
特技だけで完全に食えているわけではないので、秘訣はまだありません。今から編み出さないといけませんね。
ひとまず作品数がないと戦えないので、量を描いていきたいです。今年は本をもう1冊出すのが目標です。
あとは思いついたことからどんどんやってみようという気持ちです。ニコ生やツイキャスなどのネット配信、ツイッターにアップするマンガ、noteやcakesでの販売、電子書籍、クラウドファンディングなど、個人での発表を主軸にすることで何でも自分から行動する覚悟ができました。
待っていてもビックリするくらい何も起きないんで。
このインタビューもそのおかげで実現したわけですからね。
これからも漫画家として、マンガを描き続けていくので、どこかで見かけたらぜひ読んでください。ありがとうございました!
―編集後記―
僕が吉田貴司さんの存在を知ったのは「ニコ生」だった。
先月、惜しまれながらも最終回を迎えてしまったが、吉田さんは佐藤漫画製作所から「居酒屋たかし」という名前で毎月ネット配信をしていて、そこで常に「どうしたら俺のマンガはヒットするか?」を探り続けていた。
ツイッターでバズらせる、インフルエンサーに献本する、出版社を通さずにマンガで生きていく方法を確立する・・・。ときに(いや、結構な頻度で)ベロベロに酔っ払いながら、ニコ生のコメントでネガティブな反応を受けながらも前へ進もうとする姿を見て、僕は同じ出版界の片隅にいる同世代の人間として、「この人は凄い」と思った。
実際に僕はファンになり、noteの『やれたかも委員会』やkindleの『フィンランド・サガ(性)』、単行本の『シェアバディ』を購入し、今回のクラウドファンディングにも少額ながら参加している。決して吉田さんの泥酔している姿に同情したわけではない、決して。
自分をネット上にさらけ出して、ファンを得る――吉田さんはネット時代の漫画家がマンガで生きるための1つの方法を明確に示していると思う。
取材・文:廣田喜昭(代官山ブックス)
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