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芸人になってモテようとしたらなぜかバケモノおじさんになっていた<前編> 〜人生やり直しタイムトラベル〜 【売れてない芸人(金の卵)シリーズ】 にっしゃん 著



はじめに




僕の名前は西村啓佑。芸名はにっしゃん。36歳。身長173㎝、体重112キロ。ピン芸人である。芸歴はもう15年目になる。

NSC29期生で、去年まで吉本興業にいたが、現在は東京でフリーで活動している。

売れてない芸人――。

僕のためにあるような言葉だ。僕は本当に売れてない。1ミリも売れてない。コンビニのレジの奥の上の方に置いてあるお菓子の詰め合わせぐらい売れてない。あれ買ってる人を未だに見た事がない。

売れてなさすぎて自分が芸人と名乗っていいのかも分からない。完全な自称芸人。自称ハリウッドスターとそんなに変わらないかもしれない。どうせならそっちの方が良かった。レッドカーペットあるあるとか言ったりしたかった。

ただ、こんな「売れてなさ」よりも僕の中でもっと厄介なものがある。

それは「モテなさ」だ。

僕は生まれてこの方、彼女がいない。彼女いない歴36年である。36年。干支3周してる。周りすぎて、そろそろ干支も「え? これいつまで周るの⁉」と困惑しているんじゃないだろうか。

とにかく、ひたすらモテない。モテなさすぎて、そもそも「モテる」という現象が本当に存在するのかも疑っている。僕にとってモテるは、UFOとかと同じ部類だ。

僕は、このモテなさにずっと振り回されてきた。凄いコンプレックスである。僕の中では布袋と吉川が常に暴れている。

このモテなさをどうにかしたくて、僕は芸人になった。でも、やっぱりモテなくて芸人としても売れなくて、結果、現在の僕が出来上がった。

現在の僕の特徴を挙げてみよう。

全く売れてない芸人、彼女いない歴36年、パチンコ大好き、貯金ゼロ、35年半実家暮らし、親のスネめっちゃかじる、生活力皆無、機械オンチ、キレやすい、バリ太い、ブサイク、それから、、、あ、吐き気してきた。ちょっとストップ。

そう。僕は一言で言うと

「バケモノおじさん」になってしまったのだ。

最初はモテなくて、それを何とかしようとしていただけなのに、いつの間にか気付いたらバケモノおじさんになっていたのである。

悲劇である。不幸である。シェイクスピアも口あんぐりだ。

でも、「他人の不幸は蜜の味」という言葉がある。

自分にとっては悲劇で不幸でも、他人からすれば美味しくて堪らないというわけだ。

僕のこのろくでもない人生が他の誰かにとっての蜜になれるのなら、こんなに嬉しい事はない。

だから今回はぜひ美味しくいただいてほしい。

「これはひでえや」と笑ってほしい。

1人のモテない男がバケモノおじさんになる過程を笑いながら見届けてもらえたら、これ幸いである。

あと、最後にもう1つ。

今回、各章の終わりに“ある話”が入っている。

これらの話に関しては「何言うとんねん!」とバカにしながら見るのが正しい見方である。

皆さん、それぞれ事前に「何言うとんねん」をいくつかお手元に用意しておいて欲しい。

たぶん思ってる以上に「何言うとんねん」を使う事になるはずである。

では、そろそろ始めよう。

売れてないクズ芸人のどうしようもなく滑稽な身の上話を。
にっしゃん




第1章 幼少期〜小学校時代 〜忍び寄るモテない〜



・労働者の香り

1984年8月28日。僕は大阪府の寝屋川市にて生まれた。西村家の一人息子。それはそれはかわいい子だったそうだ。

生まれてすぐの僕を抱きながら、父方のおばあちゃんは一言、こう言った。

「労働者の香りがする」

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