ゆってぃの「初出し」 ――20年間、11軒の“最悪の引っ越し”を経てたどり着いた「家探しの真理」 編
「初出し」とは――
「どこにも話してないココだけの話」をコンセプトに、「初出し1テーマ」×「30分」(場合により延長アリ)で、狭く、深く、掘り下げるインタビューシリーズ。
インタビューを受けていただいた取材対象者の方に「ロイヤリティ」を支払う、新たな仕組みへの挑戦。
最初に20代で住んだ鬼ヶ島・和田さんらとのシェアハウス
――今日はよろしくお願いいたします! ゆってぃさんからいただいた初出しテーマが「今住んでる最高の家に出会うまでの最低な家たち」ということで、早速お願いできますか?
はい、今のお家が引っ越して2か月なのかな。
今までの家でナンバー1の家と自負しているんですね。
僕は一人暮らしをはじめて約20年ぐらい経つんですけど、11回、12回ぐらい引っ越してるんですよ。
――結構多いですよね。
そうなんです。
東京が実家なので24歳ぐらいのときに初めて家を出て、それが一人暮らしではなく芸人4人で住むという。
よくあるベタなシェアハウスじゃないですけど。それを最初にしたんですよ。
――そのとき一に緒に住んだ芸人さんで今も芸人さんを続けている方はいますか?
1人が鬼ヶ島の和田くん。
――あ、そうなんですね!
もう1人が今は作家さんになっていて、もう1人は今も沖縄吉本でやっている寺崎くんという。
その4人で新井薬師の4LDKみたいなところに住んで。
――4LDKはかなり広いですね。
そうなんですよ。ただ、地獄みたいな住み心地でしたけど。
鍵を24時間オープンにしてたので、開けたら知らない後輩がリビングにいたりして。
売れてない芸人4人で住むと、全員まず甘えはじめるんですよ。
全員が売れてないんで、それぞれに「何とかしてくれ」になってくるんです。
家賃も誰かが遅れはじめると、「あ、ありなんだ」になるんですよ。
――(笑)。
売れてないからみんなバイトするんですけど、バイトの時間帯もみんなそれぞれになってくるんで、そこでだんだん歯車が、仲良い4人で住んでるはずがズレていって。
歯車ズレてきてるのはみんなわかってるから、そのとき誰が言い出したのが「廊下に1日1個、大喜利のお題を書いて、それをみんな答えていこう」と。
――芸人さんらしい。
それで面白い人には◎つけてあげるという家の中のモチベーションをつくったんですよ。
でも、結局それも1週間ぐらいで終わるんです。
――(笑)。
2年ぐらい住んでその家を更新しないことになって、みんな出ていくことになったんです。
そのときに1階に住んでいた大家さんが、僕らが住んでいた3階を指して「昔はそこ病院だったのよ」って突然言って。
手術室だった部屋に住んでいた
――最後に(笑)。
そのせいか、思えばめちゃくちゃ空気の悪い家だったんですよ。
ドッペンゲルガーみたいな感じで、僕ら住居人が全員、いないはずの和田の姿を見ていて。
和田の部屋は玄関開けて最初の部屋で、そこの電気が消えてたからいないのかなと思って、突き当りにある僕の部屋に行って。
ちなみに大家さんに聞いたら、ちょうど僕の部屋が手術室として使われていた部屋だったと。
――(笑)。
僕の部屋を開けたら和田がゲームしてたんです。
「あ、いるんだ」と思って、シャワー浴びに行って戻ったらいなかったから、自分の部屋戻ったのかなと見たら部屋が真っ暗で。
出かけたのかな、和田に何か買ってもらおうと電話したら、
「え、今横浜の実家ですけど。今日家行ってないです」って言うんです。
「え、お前見たんだけど」「それ怖いからやめてください」と。
ただ、これは僕だけじゃなくて、他の同居芸人にも話したら「僕も見てるんですよ」って。
――全員が和田さんを。
だから完全に空気の悪いところに最初に住んでいて。
これは更新しないでよかったと思って引っ越したんです。
――次はどちらに?
その次に新高円寺に引っ越して、それが初めてちゃんと一人暮らしというものになって。
その家を契約したときは何も考えてなかったんですけど、駅から歩いて17分ぐらいかかるという。
――結構遠いですね。
都内の駅で徒歩17分が最寄りってなかなかないじゃないですか。相当奥地にいっちゃって。
でも初めての一人暮らしだし、自転車買えばいいかと思ってたんですけど、3か月ぐらいして家帰ってきたら、家の家具が全部なかったんですよ。電化製品とか。
――え?
あれ、なんだこれ?と思ったら、明らかに泥棒なんですよ。
――(笑)。
それですぐ警察に電話して警察が来たら、「あ、このへんアジア系の泥棒多いから」と言われて。
僕の部屋は1階だったんですけど、1階の窓の外がちょっと野っぱらみたいになっていて、そこから入ってこられたみたいで。
確かに窓がバーンと割られていて。
そんなところに住んでられないと、すぐに一回実家に戻ったんです。
――実家に避難されて。
実家にしばらくいてお金が貯まったので、また一人暮らしをしようと、今度は中野坂上に築60年ぐらいの一軒家を見つけて。
そこに住み始めたんですよ。
角材を2階からぶん投げてくる隣人おじさん
――1人で一軒家に住んだんですね。
そこは一軒家が多いところで、管理会社から「回覧板が回ってくるから」と聞いて「あ、そういう近所づきあいいいな、楽しそうだな」と思ったんです。
実際に回覧板が回ってきたので向かいの家におばあちゃんのところに渡しに行ったんですよ。
「あら、若いのにこんなところ住んで」
「そうなんですよ、よろしくお願いします。今からこのへんを挨拶回ろうと思うんですけど、どこまで行ったらいいですかね」
と聞いたら、僕の家の左側にある高級そうな家を指して、
「あそこ行かなくてもいいわよ」
って。
――え、なんでですか?
「なんでですか?」と聞いたら、「別にあそことはご近所づきあいしなくても大丈夫だからね」と、意味深なことを言うんです。
「そうなんだ」と思ったんですけど、よくわからなかったので僕はその家にも挨拶に行ったんですね。
出てきたのが初老の男性で、「どうも」と低いテンションだったから、「あ、こういう感じ悪い人だから挨拶しないでいいと言ってたのかな」と思って帰ったんです。
――そんなに変な人ではなかったんですね。
はい、そのときは。
それで僕の家が一軒家の2階建てで、夏に2階のベランダに風鈴つけたんですよ。気持ちいいなと思って。
つけてみたら風鈴って結構うるさいんですよね。チリンチリンって。
――思った以上に音が響きますよね。
夜寝るときにうるさいかなと思っていたら、真夜中にいきなりドーン!とでっかい音がしたんですよ。
――え?
何事だろうと、窓を開けたら角材が1階のところに突っ込んできてたんです。
「え、何、この角材?」と思って。
そうしたら明らかに挨拶行かなくていいと言われた家の方向から、その2階あたりから飛んできてたっぽいんですよ。
「おーこえー」と思ったんですけど僕も若かったので「腹立つな」と思って、角材も突き刺さったままにして、風鈴も外さなかったんです。
――対抗して(笑)。
それでしばらくしたら1階のところの雨戸を閉めていたら、真夜中に雨戸をバーンバーンとぶん殴ってるんですよ。
「あ、これは2回目来たな」と思って2階から見たら、やっぱり隣のおじさんなんですよ。
でも、「おい!」とか言ったら怖いから言わなかったんですけど。
犯人はこの人なんだなというのはわかって、まぁ放っておこうと。
正体は現役の落語家だった?
――そのままにして。
僕はカギをよくなくすんで、その家のポストのところにカギを入れてから出かけていたんですね。
ある日、ポストを開けたらカギがなくなってたんですよ。
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