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青インク~R-1グランプリ2021 ファイナリストのリアルタイム日記も収録~【売れてない芸人(金の卵)シリーズ】寺田寛明 著




ごあいさつ



おはようございます、寺田寛明です。朝だよ。

この度は本書をご購入頂き、誠にありがとうございます。

そもそも、寺田寛明を見つけてくださったこと自体に、ありがとうございます。

寺田寛明に出会うの、交通事故に遭うよりも確率が低いはずです。(基本的に本書はR-1決勝進出の遥か前に書かれています。最後のR-1日記を書いていたせいで、発売が非常に遅れました。)

この「金の卵シリーズ」のコンセプト通り、僕は売れてない芸人です。

自他ともに認める、売れてなさ。

弁明も思いつかないほど売れてません。

売れてないのは完全に売れてないのですが、売れてないほうでは幾分マシぐらいの売れてなさ具合でもあり、どの程度の売れてなさかと言うと、ライブで新ネタをやった次の週に別のライブで同じネタをやったら、お客さんが全員そのネタを知っていて「あーそのネタか」みたいなリアクションになるくらい、一定の固定された環境で活動しています。

オリジナルでアパレルグッズを作ったら、32枚売れました。そのぐらいの心地よい規模感です。

なので、基本的には本書を購入してくださった方は僕のことを知らないなんてことはそうそうないとは思うのですが、もしかしたらこの先、電子書籍を起点に寺田寛明が遠い海の向こうでムーブメントを起こし、夕方のニュースでハーフのおじさんコメンテーターが、

「日本ではあまり知られていないかもしれないが、西海岸でヒロアキテラダを知らないなんて言ったらバカにされるよ」

と、したり顔で話す、なんてことになる可能性がないわけでもないと思うので、ここで自己紹介をさせて頂こうと思います。

僕は現在、マセキ芸能社という事務所でピン芸人として活動しています。

スーツを着て、眼鏡をかけて、フリップをめくるネタをしています。

1990年生まれのブルゾンちえみ世代。
地元埼玉県で塾講師を10年以上しています。
メイン担当科目は国語。
独身。実家暮らし。箸の持ち方がヤバい。
年間130現場、アイドルを見に行っている。
塾講師なのにアイドルが好き。ギリギリの存在。

といった感じです。

こんなやつ、ムーブメントになるわけないだろ。

さて、冒頭で「自分は売れてない芸人だ」と言いましたが、私は決して自分の現状を悲観的に捉えているわけでありません。

今がぜんぜん楽しいタイプの売れてない芸人です。

もちろん、このままの感じが続いたら、いつか辞めないといけなくなる日がくるでしょうし、売れたくないわけではありませんが、今は大好きなお笑いに、塾に、アイドルオタクに、やりたいことがバランスよくやれてしまっている状態にあります。

「やれてしまっている」と書いたのは、芸人としての貪欲さみたいなものがまるで生まれないので、芸人として良い状態であるとは言い難いけれども、人生としては今のところ最高みたいな複雑さがあるからです。

なので、売れない芸人の下積み苦労話や驚くようなヤバいバイトの話、先輩芸人の感動的なエピソードなど、若手芸人がテレビ番組のオーディションやアンケートでやたら聞かれて、うんざりするあれを期待されていた方はすいません。

そういうの一切出てきません。

だから僕はオーディション最弱です。テレビにおいて売れてない芸人には苦労話しか求められていないのでね。

僕の人生には、これといった事件も起こりません。

天才でもない。国語を教えていますが、文章を書くのも、さほど得意ではありません。

ましてや電子とはいえ、書籍になるほどの量で自分のことを書くなんて、初めても初めてです。

お笑いはその場でウケたりスベったり反応が分かるから修正できるけど、文章でスベったときって2000文字くらいスベってしまう可能性もぜんぜんあるので怖いです。

本当に手探りの、新鮮な気持ち。自由曲でブルーノマーズを選ぶダンス部の高校生のようなフレッシュな気持ちで書いています。

あなたに「おもしろい」と思ってもらえる部分が少しでもあると嬉しいです。

どうぞ生暖かい目でご覧ください。

寺田寛明



さいしょのさいしょ



僕がお笑いを好きになったのは、小学校に上がる前のことです。

この頃の記憶なんてほとんどないけど、これはハッキリと覚えています。

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