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「しにざま」【売れてない芸人(金の卵)シリーズ】いくよ(元「しめじ」寺本太朗)著
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“ここは家の中だぞ、まさか、そんなはずはない…エスカレーターだ。”
(スパイシーガーリック片山智勝『ゾンビ』)
まえがき
はじめまして、プロダクション人力舎所属、芸歴5年目の「いくよ」です。
以前は「しめじ」というコンビで3年半活動していました。
僕の前のコンビしめじの元相方であり、実の弟の寺本大樹は、昨年11月に不慮の事故でこの世を去りました。23歳でした。
僕らは売れていた訳でもライブで人気があった訳でもなかったので、そのこと自体を全く知らなかった人が大半で、そのニュースで名前を見た方でさえも僕らの芸風や人間性を知っている方はほとんどいないでしょう。知っている一部の方からしても「若いのに亡くなった可哀想な芸人がいた」くらいの認識しかないかもしれません。
そんな風に同情していただけるのはありがたいのですが、弟は誰かに死を悼まれるような人間ではなく、やりたい放題にやって、はしゃぎすぎて地獄に堕ちただけの、因果応報という言葉が相応しい男です。
そこで、この本は、その弟の悪行放蕩の限りとパーソナルな部分を少しでも多くの方々に知っていただきたいという思いで書きはじめました。
文才もなければ、高2の時に中二病になって読んでいた犯罪者のノンフィクションや、友成純一さんの「電脳猟奇」という、読んだ人間は必ず年内の賞レースは全て1回戦落ちするくらいスランプに陥るという不健康な本くらいしか読んだ事のない僕の拙い文章ですが、この本を書かせていただきました。
この本を読んで、「面白かった」「楽しかった」「つまらなかった」「不快になった」など、なんでもいいので読んでいただいた方の感情を動かせていれば幸いです。
いくよ
① 事故
「おまえ今どこで何してんねん? 大樹が今どういう状況か知ってんのか?」
父親からだった。
「あのな、…もう…言うたら意識不明の重体や。とりあえず今から送る病院の住所に早よこい」
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