壊れる男たち 何故セクハラは繰り返されるのか 金子雅臣
「合意だったはず」「自然のなりゆきで」―告発されて「加害者」となった男性たちは、事態を理解できず、相変わらずの言い訳を口にすると茫然と立ち尽くす。彼らはなぜ自らの加害性に無自覚なのだろうか。相談現場で接した多くの当事者の声を通して、「セクハラをする男たち」の意識のありようを探るノンフィクション。
女性からのセクハラやパワハラの告発によって、これまでの男性中心の職場運営の不合理な部分や根拠のない男性優位のシステムが問われている。
こうした変化により、男性は自らのアイデンティティーに向き合わざるを得なくなっている。
そして女性からのセクハラ告発に対して、自分が男性優位な職場環境を無意識に利用していることや女性を見下していることに気付かず、加害者男性はセクハラ相談窓口に来る。
加害者意識のない男性の意識には何があるのか?
「急な仕事上の相談と称して食事や酒に誘い、言葉巧みに人気のない場所に連れて行き関係を結ぼうとした」ケースでは、「仕事の相談というのはよくあるきっかけ作り」「男女の間ではよくあること」「男と女の駆け引きの一種」という会社内での上下関係に意識が行かず女性の意思や立場に思いが行かない男性の勝手な思い込みがあからさまになっている。
既婚女性にしつこく食事を誘う社長のケースでは、「付き合うのも給料のうち」「ここで仕事していきたいだろう」と関係を迫り、女性がセクハラで訴えると「何も出来ない女性に給料を払ってあげたのに、恩を仇で返された」「被害者意識が強い女」と逆ギレする加害者男性の不誠実さが露になった。
こうしたセクハラ加害者男性の共通点は、自分が置かれた立場や相手女性から自分の言動がどう受け止められるかどう感じるかに鈍感であること。男性は、自分の立場の優位性に慣れ過ぎていて、女性の意思を無視したり、女性の立場が弱いことが分からない。男性側は、平均で仕事とプライベートを混同して自分の職場での立場を無視して、自由な恋愛としてアプローチしているので、女性が拒否するサインを出しても駆け引きとしか受け止めない。仕事場の女性を、仕事仲間ではなく恋愛や性の対象として見ている。「イヤもイヤもスキのうち」「女性の抵抗はポーズだ」など、男たちの勝手な思い込みで勝手なストーリーを女性に強引に展開させようと、少しずつ逆らうことが出来ないところまで立場や酒などを使い支配をベースにした強引で一方的な性を求めている。セクハラで訴えられると、「派手な服装をしているから」「酒を飲んで酔っ払った時に彼女にも期待があったはず」と卑怯な言い訳を並べる。
セクハラ事件は、加害者男性の男尊女卑的な意識と旧来の「男性が女性に好き放題に振る舞っても許される」という意識から派生する。
セクハラ加害者男性になる可能性は、どの男性にもある。歪んだ「男らしさ」を表現するジェンダー意識が自分の中にある限り、男は加害者になる可能性がある。男性の中にある男尊女卑的なジェンダー意識を問い、意識改革するきっかけになるノンフィクションです。