影と雷と梅と
影と雷と梅と
磯景君が歩いてきていた.
雷君おはよう.
おはよう!
パーカー似合ってるね👖
ありがとう😊
約束のジーンズ持ってきたよ.
クラスで渡すから!
嬉しい😆
僕は水を買って階段を昇って下駄箱に向かう.
クラスに着くと磯景君が鞄から何かを取り出した.
これカムフェイスのジーンズだよ.
ありがとう.
これあげる.
なにこれ?
カムフェイスのベル君.
すごい!
こんなキャラクターいたんだ.
こういうジーンズいっぱいあるの?
宝箱に入ってるんだよ.
ジーンズって宝石みたいなんだね.
いい表現だね♪
ダイヤより価値があるよ.
世界史始まるね!
滝先生何話すんだろう?
ドアが開き先生が入ってきた.
おはようございます.
今日は教科書127ページを開いて.
私が鎌倉から東京まで歩いた時の話をします.
登山道具を背負って鎌倉から歩きました.
食事も底をつくと声をかけられた.
後ろを振り返ると鬼が立っていた.
うちにおいでと言っている.
さまざまな話をすると熱心に話を聞いてくれ泣いた.
そしてちょっと待っててというと卵を7個ビニール袋に詰め持ってきた.
私はありがたく頂戴いたしますと言った.
九死に一生を得た私はこの卵はどうすればいいのか?と持っていたフライパンを出して卵を割り太陽に向けた.
音を立てて卵焼きになっていく.
久しぶりの食べ物だった.
こんな卵焼きは初めてだった.
私はとてもしあわせな気持ちだった.
この嬉しさは何にも変えられないことを学んだ.
歩き出し横浜に着いた.
観覧車が回っていた.
もう夜中だった.
孤独だった私は前へ進んでいたのだった.
世界史を学ぶのは実際に現地に行かなければ分からないという哲学なのかもしれなかった.
僕はとても?な気分で教科書をその時間読んでいた.
前に座っている梅坂さんは何かをノートにメモしていた.
みるとラテン語で書かれていた.
彼女は一人で世界史を勉強していた.
机を見るとNewYorkの鞄があった.
鐘が鳴り皆が外に出たり喋ったりしている.
梅坂さんは着物で出かけたことある?
よく着物でお出かけしてるよ.
鎌倉って遠いの?
遠くはないかな,訪れてみたいの?
面白そうだなって.
鎌倉で能見たことあるよ.
今度磯景君と3人で着物を着て行ってみない?
能も見よう.
数日後地元から電車に乗って鎌倉へ向かっていた.
横浜を超えたあたりでこの間の話を思い出した.
歩いていけば確かに遠いけど交通機関を使えば遠くはなかった.
途中で二人が合流し空いた電車に乗っていた.
梅坂さんは朝顔の着物を着ていた.
磯景君は芭蕉,僕は風神雷神を着ていた.
和って感じだ.
鎌倉に着くとまずシラス丼を食べ大仏を見て商店街を回った後能楽堂に着いた.
演目は狂言柿山伏と能紅葉狩りだった.
山伏が演技をする.
柿を食べてた山伏は農家に怒られそうになるが山伏はカラスやサルの真似をする.
動きもコミカルでコントみたいだった.
休憩があり皆んなが外に出ていく.
20分ほど時間があったので食堂に行き和菓子とお茶を嗜む.
この後どうする?
もう帰ろうかと思ってる.
テスト続きで疲れてる.
なんでラテン語使えるの?
アメリカのいとこに教えてもらったの.
難しい?
私もそんなに使いこなせないよ.
ラテン語できるの?
ちょっとだけね.
狂言もわからなかったよ.
言葉って難しいよね.
この和菓子ハートの形してる.
パッと見てわかればいいのにね.
昔のものだからね.
開演5分前のブザーが鳴り3人は劇場へ向かった.
笛の音色が聞こえてきた.
シテが舞台袖から侍女役を率いてやって来る.
時雨を急ぐ紅葉狩から詞章が始まる.
舞台中央には厳かな紅葉に彩られた置物がある.
詩を語り終えるとシテとツレは腰掛けの椅子に座ってワキを待っている.
平惟茂役が現れる.
ワキも従者を連れている.
風の行方も心せよ.
その男たちは誰かが山の上にいることを勘づいた.
人が来るような山じゃないのに不思議だと言い合う.
紅葉が風に舞っていて観る者の心を引き止める.
酒を酌み何かの縁だと言い合う.
人の心も白雲の立ちわづらえる景色かな.
月の盃さす袖も雪を巡らす袂かな.
ワキは酒に酔っていく.
女達は消えていった.
眠りの中で天人が現れ彼は驚いて目を覚ます.
美しい女達は鬼に変わっていた.
惟茂は微動だにせず祈りながら剣を抜いて立ち向かう.
横では磯景君は夢の中,梅坂さんは真剣に見てる.
岩に登る鬼を惟茂は成仏させた.
梅坂さんは感動で泣いていた.
何がカタルシスになるのかはわからなかったけど感動した.
終わったよ.
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