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木下雄飛 世界の実在を証明する方法論を考え続けている。最終的に頭の中に残ったのは、真っ黒くて深い混沌の感情だけだった。 なぜ私は生存しているのだろう。なぜ私は死亡するのだろう。どのように生きたなら天国に行けるのだろう。どんな行いをした人が地獄に行くのだろう。哲学の領域に意識を拡大していくといつも私は行きづまって戸惑いを覚える。そして気がついたら朝になっていて毎日同じように一日が始まる。こんな風にして私の八年間は無為に過ぎ去った。 最初
歳を一つ重ねた。27歳になった。年齢を重ねることで変わることは特にないし、老化を感じる年齢でもない。しかしこの年齢には意味があると思っている。カートコバーンなどの名だたるロックスターが亡くなる年齢が27歳だという。石川啄木は26歳で亡くなった。彼の年齢は超えたということだ。自分はロックスターではないので27歳以降も生きるとは思う。ただ最近自分の人生にとっても危機的な状況があった。いのちに関わるかもしれない大事件だった。地球という規模で見たらありふれた日常茶飯事かもしれないが小
航空の森、宇宙の夢 木下 雄飛 とある国家のとある森の中で、切り株に腰かけた70歳近くの木こりの老人が、まだあどけなさを残した15歳ほどの年齢の男の子に対して、大事なことを話すときの重い口ぶりで、優しく諭すように言葉をかけていた。彼らの座る切り株の周辺には、春らしい陽気を感じさせる草花がパッと萌え出ていて、子鹿や小鳥などの幼い動物たちが、地面に落ちているクルミや葡萄な
グローバル・イノベーター 木下 雄飛 序幕 母の声 子宮にいるころからCDで聴かされていた音楽は、母の録音した声だった。胎教という単純な言葉で説明すればそれまでかもしれないが、彼女の肉声を聞いていたという事にもっと重要な意味があるような気がしていた。その声の音色は人々の運命を繋ぎ合わせ、新世界の鋭い息吹を光らせ続けていた。 第1章 彼が目を覚ました瞬間、すべてが変わっていた。世界がどうにも変質したようなのだ。なにが変わったかは、まだわからないが今までとは感覚や手応えが