お金の苦労 学生の拠り所は②ー奨学金の相談と学生オフィスの対応
2024年10月15日、Daylightでは、立命館大学の中で奨学金を担当している「学生オフィス」に取材を実施した。今回の取材の目的は「学生オフィスの管轄範囲を把握すること」、「Aさんの給付奨学金減額について、問題の所在を把握すること」にあった。取材を依頼するにあたり、事前に質問事項を共有した。
今回、取材に対応したのは学生オフィスで奨学金を担当している専門職員である3名。
Daylight はAさんの話(前回記事)の中で、学生オフィスに相談に行ったときに職員の対応について疑問を抱えていた。Aさんは給付奨学金を受給していたが、その減額が決まった。その相談のために学生オフィスに伺うも、プリントを渡されるだけだった。この対応について我々はいくつか仮説を立てた。
仮説①
学生オフィスは仲介をしている。個別の対応は管轄外である。
仮説②
①の場合、JASSOの制度に問題がある。
仮説③
学生オフィスにおいて、Aさんの相談対応をした職員が本来とは異なる対応をした。
今回の取材では、学生オフィスの組織そのものを理解し、これらの仮説を証明することを目指した。その後、学生オフィスに問題があるとわかった場合、2度目の取材依頼をする予定だった。
Daylight
奨学金手続きの一連の流れの中で、学生オフィスがどのような役割をしていて、どこまで管轄なのか知りたい。
職員
学生の相談対応をするということがまず1つ。
奨学金について、 どのような目的で経済的な支援を受けたいのか。それによって、奨学金の種類は変わってくる。
大学の学費を自分の家庭だけでは負担ができない人について、国が学べる環境を支えようとようとしているのが日本学生支援機構(JASSO)。その奨学金は、学生が大学を窓口にして手続きをして、お金を給付としてもらったり貸与として借りたりという形で手続きができるもの。大学を窓口に手続きをするというルールだから、立命館大学でも学生オフィスを窓口にして学生の手続きを仲介している。その決定については全く私たちは判断ができるものではない。 あくまでも日本学生支援機構がやってるルールに則って、その手順を大学が窓口で代理対応しているという形。どうやって区分が下がるとか、給付の決定が決まるかとかっていうことについては、大学の意見とか意向が入ってるものではない。私たちはJASSOの決定を伝えるだけである。
Daylight
例えば、減額されたなどの相談に来た時に、どこまで対応するのか。
職員
事実を確認して、事実を伝えること。
JASSOから、マイナンバーなどを通じて、その人たちの家計とか収入状況とかを確認してきて、この人の区分が変わるという通知がくる。それを私たちは学生さんにお伝えする。
Daylight
減額されてしまった人の中で、本当に一時的に生活に困ってしまった場合とかの相談の対応は難しいのか。
職員
話を聞いたとして、JASSOの制度の中でできるものがあれば、 別の手続きや制度を知らせる。そのお友達のケースでは、他にアナウンスできる制度がなかったので、その決定を伝えることで終わってしまったのではないかと。
Daylight
他の奨学金の紹介や学外の窓口、奨学金以外の窓口などを紹介する機会などはあるか。
職員
メンタル的なものであれば、学生サポートルーム*がある。精神的に不安定になってきていたり、誰かの声を聞いてほしい状態だと思えば、その支援もする。学生支援コーデーターが、学生の困ってることを伺い、つなぐ窓口があれば、つなぐという仕組みもある。
学生オフィスはJASSOと学生を繋ぐ役割。学生が受給している奨学金に関わる家庭事情についてはマイナンバーカードなどを元に入手する。区分の上がり、下がりについては、その詳細を確認するための問い合わせを学生オフィスがすることはできない。できたとしても、対応されないという。
これによって、仮説①「学生オフィスは仲介をしているだけ。個別の対応は管轄外」が立証された。そして仮説②「JASSOの体制に問題がある」が問題点の所在として浮上した。(前回記事参照)
つまり、Aさんが学生オフィスに相談に行き、プリントを渡されるだけの対応は必然だったのだ。
また、学生オフィスで奨学金担当をしている職員は皆必ず研修を受けるという。
職員
フロントに立つ人は研修を受けている。その人たちはほぼプロとしてそこにいる。Aさんの件に関しては、大学として至らなかったところがあったのかもしれない。
この回答から、仮説③「学生オフィスにおいて、Aさんの相談対応をした職員が本来とは異なる対応をした」について考えると、Aさんの相談を担当した職員個人の対応が完璧でなかったとは推察できるものの、前述したとおり、学生オフィスの対応できる範囲外のことだったため、最大限の対応だったのだろう。
また、奨学金が減額されることや、学生オフィスがそのような学生の対して対応をすることができないことはほとんどないとし、今回のようなAさんに対するサポートの仕方は「とてもレアなケース。滅多に起きないこと」だと話す。しかしながら、1人放置されるAさんはどうすればいいのだろうか。
目線を学生に合わせられているのか。制度や決まりごとで語れる話ばかりではないはずだ。これにはJASSOの体制も関わっており、決して学生オフィスだけで解決できる問題ではない。広い視野で奨学金制度を捉え、議論する必要があるだろう。
今回例に挙げたように、制度からこぼれ落ちてしまう人たちへの向き合い方は社会全体で考えられるべきではないか。
(西澤あかり、吉江あかね)
参考
独立行政法人 日本学生支援機構
立命館大学HP