
お金の苦労 学生の拠り所は③ー学生が学生らしく生活するために
立命館大学3回生の学生Aさんは、入学当初から独立行政法人日本学生支援機構(以下JASSO)の給付奨学金を受給していたが、昨年10月に減額が決定したと通知が届いた。それまで月5万円の給付があった奨学金は、減額後、その半額の2万2300円となる。
我々はAさんの問題把握のために、奨学金を担当している学生オフィスに取材を実施した。それを踏まえて、いくつかの要素ごとに問題提起をしてきた。1つはJASSOの奨学金の審査に関する透明性、2つ目はAさんの相談対応をした学生オフィスに対する疑問に着目した。
今回取り上げるのは、大学のサポートの姿勢である。Aさんのような学生に向けた対応の限界は感じられるが、そのままでいいとは思わない。力を持たない学生にどれほどまでに寄り添うことができるのか、何が求められているのか。考えてみたい。
学生オフィス取材の中で、我々は最初の目的である「学生オフィスの管轄範囲を把握すること」、「Aさんの給付奨学金減額について、問題の所在を把握すること」を達成した。その後、我々は、質問を「学生の頼る場所」「相談窓口の場所」に焦点を変え、いくつかの質問をした。
Daylight
学生に対してどこまで寄り添うのか。
職員
難しいのは「寄り添う」こと。言葉でいうのは簡単。
経済支援型奨学金は家計基準と成績基準に基づいて厳しく決められているルールがある。どのように寄り添うのか、そのイメージを逆に教えていただきたい。
Daylight
もちろん資金的な支援があればいいけど、規則があってそれはできないことは分かっている。まず、家計基準や成績など、何が原因で区分を下げられてしまっているのかを数字で見せてもらうことはできないのか。
職員
適格認定がある。毎年3月に行っている。成績に関しては春セメスターの結果を踏まえて、警告などの通知をちょうど今の時期から送る予定。
頑張っていても、成績が思うように伸びない学生もいる。こういう学生にむけたSSP(Student Success Program)というサポートチームがある。全国の中でも一番進んでいる支援システムでもあり、他の大学から話を聞きに来るくらい注目されている。
立命館大学では、SSPを始め、学生サポートルーム(SSR)や障害学生支援室(DRC)など包括的学習者支援に力を入れている。これを奨学金とどう連動させていくか。
成績基準についての通知を送る際に、SSPの案内なども一緒にいれるなど工夫している。経済状況は改善しようがないが、学生への支援は我々も勉強しながら考えている。
「学生対応については自信を持っている」という。学生の成長におけるサポートは確かに充実している。それは、上記で触れられているサポート以外にも、学生に向けられた多様な支援制度が設けられていることによって証明されている。(実際に我々Daylightもそういった支援の中で立ち上げ、活動が行えている。)学生の生活におけるサポートがあれば、気持ちの面で余裕が生まれるかもしれない。ただ、やはり経済的な改善には限界がある。
職員
立命館大学費減免という独自のサポートがある。この原資は学費から得ている。皆からの授業料を経済的に厳しい人のために使うということ。だからこそ基準はどうしても満たすことが条件となってくる。
大学側は可能な限りの支援を提供していると話す。学びや成長を求めるものに、その機会が提供される仕組みが構築されている。職員が話すように、資金面で支援される者にはそれに相当した態度が求められる。当然のことだ。
しかしながら、Aさんの事例に立ち返ったとき、そこからもこぼれ落ちてしまう人がいることは忘れてはならない。お金の問題は学生にとっては本当にどうしようもできないのだ。親にも頼れない、大学の支援にも限度がある中で、もがく学生がいるということは、より広く認識されるべきだ。
一人一人に合わせた支援がどこまでなされるべきなのか。Aさんを事例に挙げ、ここまで相談窓口や支援制度についてみてきたが、その範囲で解決できる問題なのではないのかもしれない。海外に目を向けた時、日本よりも学費や奨学金制度が学生を教育するものとして成り立っている国があることも見受けられる。Aさんのような学生を本当の意味で救うには視野をより広範囲にして考えてみる必要があるのだろう。
(西澤あかり、吉江あかね)
ー参考-------------------------------
包括的学習者支援
2009年から2010年にかけて、2020年に目指す学園ビジョンと中期計画の検討の中で『包括的学習者支援』という学生支援の基本的な方針が定められた。正課・課外の枠を超えて、学生の学びと成長を多面的にとらえて支援していくことを目指す。この方針によって、多様な支援について大学が提供していくことが考えられるようになった。
参考
https://www.ritsumei.ac.jp/ssp/about/history/
〇SSP(Student Success Program)
立命館独自の学生支援プログラム。学生が正課と課外を両立し、学生自らが設定した目標に向かって学校生活を過ごせるようにサポートすることを目指している。
自らの特徴や状況を多面的に捉える力
自ら設定した目標を達成するために、学びをデザイン(創造・計画・選択)する力
他者に協力を求めながら、自ら計画を実行に移す力
自らの行動を振り返り、状況に合わせ調整・修正し、次につなげる力
上記の力をつけ、学生が自立し、成長するためサポートを行っている。専門のSSPコーディネーターが、学生一人一人の設定した目標に基づいた手法やアイデアを提供し伴奏支援を行う。
参考
https://www.ritsumei.ac.jp/ssp/about/
〇学生サポートルーム(Student Support Room/SSR)
自分らしい学校生活を送るための支援を行う。学校生活や課外活動、アルバイトなど幅広い環境について、精神的な悩みなどに対応する。臨床心理士の資格をもったカウンセラーもいて、相談内容に応じては学外以外につなげることも可能。
参考
https://www.ritsumei.ac.jp/ssr/about.html/
〇障害学生支援室(Disability Resource Center/DRC)
障害のある学生への支援に関わる総合窓口として設置。専門のコーディネーターが駐在している。
参考
https://www.ritsumei.ac.jp/drc/about/drc/
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