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君は豆腐縛りの料理本『豆腐百珍』を知っているか!!

皆さん、一つの食材から100種の料理を思いつくことはできますか?
あったんです。江戸時代に!

江戸時代には鯛、芋、蒟蒻などなど
1つの食材でだいたい100種の料理を記した「百珍物」というジャンルの料理本が大流行します。

「百珍物」流行の発端となったのが『豆腐百珍』です。
この本ではその名の通り、豆腐料理を100種記しています。

『豆腐百珍』の斬新さは、豆腐縛りというだけではありません。
料理本の中に知的な要素も取り入れました。

これから料理本の革命児『豆腐百珍』の一部を
ご紹介していきます。


分けられる豆腐料理

『豆腐百珍』は100種の豆腐料理を日常使いのし易さ、
美味で見た目も良いものなどの観点から6種に等級分けしています。

これも『豆腐百珍』以前の料理本にはない斬新な構成でした。

江戸後期には相撲番付を真似して料理や温泉の番付もあったようです。
番付が大人気で『豆腐百珍』も大ウケして、やっぱりみんな最強議論とか大好き!

以下がその等級分けと指針です。
簡単に意訳しています。

  • 尋常品(26品) 多くの家で日常的に用いるもの

  • 通品(10品) レシピを書かなくてもいい程よく知られているもの

  • 佳品(20品) 味も見た目が尋常品より優れているもの

  • 奇品(19品) 風変りで人々の意表を突くようなもの

  • 妙品(18品) 味も見た目も優れているもの

  • 絶品(7品) 妙品よりも優れ、豆腐の真の良さを引き出しているもの

品数としては「尋常品」が最も多く、「絶品」が最も少なくなっています。

では具体的にどのような内容が書かれていたのでしょうか。
私のいちおし豆腐料理をご紹介します。

以下は日常使いしやすい「尋常品」に分類される「21 ふはふは豆腐」です。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション

21 ふはふは豆腐
鶏卵ととうふ等分にまぜ、よくすり合せ、ふはふは烹にする也。胡椒の末ふる〇鶏卵のふはふはと風味かわることなし。倹約を行ふ人専ら用ゆべし。
(訳)鶏卵と豆腐を等分に混ぜ、よくすり合わせてふわふわと煮る。胡椒を振る。〇「たまごふわふわ」と風味も変わらない。節約している人におすすめ。

当時、鶏卵は一個でうどん一杯が食べられる程の高級食材。
この料理は「たまごふわふわ」を豆腐でかさましして作る、倹約を狙った料理のようです。
ちなみに「たまごふわふわ」は茶碗蒸しに近いスフレ状の卵料理だそう。

私は豆腐を入れてかさましした豆腐ハンバーグを作るのでとっても身近に感じます。
やっぱり今も昔の豆腐は庶民の味方!

他にはこのようなものも。
以下は「100 真のうどん豆腐」です。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション


「17 ぷつかけ温飩とうふ」「67 縐紗(ちりめん)豆腐」「100 真のうどん豆腐」では、豆腐をうどん状に切る下ごしらえが工程の中にあります。
なぜ豆腐をうどんのようにするのだろう・・・

気になって試してみたことがあります。
うどん状に切っていてもやっぱり豆腐は豆腐なの脆く崩れやすく、うどんのように啜ることは難しかったです。

いつもの煮物と同じ味付けで食べたので特に味に変わりはありませんでした。
細長いうどん豆腐はいつもの正方形寄りのものと比べて、
新鮮な気持ちで楽しめた気がしないでもない!
もしかすると、毎日の食事で飽きないためのささやかな工夫として
この切り方が生まれたのかもしれませんね。


知識で料理を楽しむ


『豆腐百珍』の著者、醒狂道人何必醇(せいきょうどうじんかひつじゅん)は料理人ではありません。
その正体はおそらく文人・曽谷学川と推定されています。

さらにこの本の成立には、学川が所属していた「混沌詩社」という結社も深く関係していると言われています。

この特徴が強く表れている箇所が巻末です。
漢籍や詩などで豆腐に関する話が古今東西から集められています。

こちらはその一つ、実在した姓「豆盧氏」と豆腐をかけて擬人化した物語です。
このようにがっつり漢文です。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション

ところで、私はちょっといいお菓子を食べる時、付属するご由緒を見ながら食べます。
なんならスーパーで買うお菓子も誕生秘話を調べながら食べます。

ただ食べるだけでも美味しいものは美味しいですが、
知識を持って頭で楽しむことも意識はしていないものの、
すっかり当たり前の文化ではないでしょうか。

そんな当たり前のルーツがこの『豆腐百珍』にはある気がします。

どこで読めるの~?

食いしん坊な方にも歴史好きの方にもお勧めしたい『豆腐百珍』。
「国立国会図書館デジタルコレクション」で正編が公開されていますので、
気軽に読むことができます。
個人的には一品ごとが短いので、くずし字もニュアンスが伝わりやすい気がします。

くずし字から翻刻されているものであれば、こちらがおすすめです。

『豆腐百珍』の人気に乗って出版された続編や、他の「百珍物」も収載されています。
そして『豆腐百珍』や食文化の研究をされている原田信男さんの解説もあるのでより理解を深められますね。

『豆腐百珍』の料理を再現した本もあります。

現代でも扱いやすいように訳されていて、再現した写真もフルカラーで載せているので視覚的にもイメージしやすい一冊。

特に『料理百珍集』は大学やお住まいの地域の図書館で借りられる可能性も高いので、ぜひ一度蔵書検索で検索してみてはいかがでしょうか。





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