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【DAY PEOPLE Vol.5 乾桃歌】 この場所に関わるみんなが「来てよかった」と思えるように

企画、デザイン、設計、運営の領域を横断しながら「新しい場所と価値」を生み出す活動をしているニューディベロッパー・DAY。

連載【DAY PEOPLE】は、そんなDAYで働いているスタッフが「日々考えていること」にフォーカスを当てたインタビューです。

5人目の語り手は、「dooop」店舗責任者の乾桃歌さん。DAYで働く中で変化した考えや大切にしていること、これからの夢についてインタビューしました。

乾桃歌(いぬい・ももか)

1998年大阪生まれ。調理・製菓の専門学校を卒業後、大阪や京都の結婚式場やレストラン、ホテルのキッチンを経験。2023年7月DAYに入社し、現在は居酒屋「dooop」の店舗責任者を務める。



「今まで誰のために料理をしていたんだろう」

ー乾さんは、DAYに入社する前はどんなことをしていたんですか?

調理の専門学校で製菓と調理を1年ずつ学んだ後、Plan・Do・Seeというホテル・ウェディング・レストラン事業を行う会社に入りました。最初は婚礼や宴会など大人数のお客様向けのお食事を作っていたんですけど、入社2,3年後にコロナ禍になり、人が集まって食事を楽しむ機会が減ってしまって、1年半くらいほぼ休職状態の期間がありました。

コロナ禍が明けてきた2021年にレストランの部署に異動することになり、大阪の結婚式場に併設されたイタリアンレストランで、1年半ほど調理を担当しました。さらにその後、今度は京都のホテルに異動になって、レストランとラウンジの両方で調理担当に。そこで半年ほど働いて、DAYに転職したという感じです。

ーこれまでずっと調理をされてきたんですね。転職をしようと思った理由は何だったんですか?

私はずっと、キッチンで調理のみをする仕事をしていたんですけど、転職する直前にいたホテルのレストランでは、カウンターキッチンで調理しながら接客もするスタイルになったんです。その時初めて接客を経験して、「自分は今まで誰のために料理をしていたんだろう」とハッとしました

口では「お客様のために」なんて言っていたけど、自分の料理をお客様が口に運ぶ姿は見たことがありませんでした。せっかく飲食業という自分の好きな仕事をしているのに「飲食のことを全然知らなかったな」とショックを受けて、それがずっと引っかかっていたんですよね。

ーはい、はい。

そこは高級なレストランだったのですが、もっといろんなお客様と出会いたい、グッと踏み込んだお店で働きたいと思うようになりました。せっかく飲食業に携わっているのだから、もっといろんな世界を見てみようって。それで転職を決意しました。

ーDAYを見つけたきっかけはなんだったんでしょう?

もともと、 DAYがやっている「HANTICA」にお客さんとして行ったことがあったんですよ。あと嵐山のレストランの「儘」の存在も知っていて、いつか行ってみたいなと思っていて。そうしたらInstagramでDAYの求人広告が出てきて、2店舗ともDAYがやっていると知って興味を持ちました。

話を聞かせてくださいってDMをしたら、代表の渡部さんと「儘」の店長兼料理長の虫明さんが対応してくれて、話した感じ「あ、なんかいいかもな」って思って。

ーどの感じが「いいかも」と? 

まずいいなと思ったのは、企画・設計から全部自社で行っているところです。前職では、歴史や価値のある建物をリノベーションして今の世代に伝えるというコンセプトだったのですが、自分自身、そんなふうに思いの込められた場所で働けるのが喜びだったんです。だから渡部さんと話した時、DAYはそれぞれのお店や場所に熱い思いを込めているんだなと知って、それがすごくいいなと思いました。

あとは、まだ若い会社なので「全部自分たちでやる」ところですね。大変そうではあるけれど、新しいことに挑戦しようと決めて転職活動をしていたから、ここはフィットしそうだなと思いました。


大きな悩みは「集客」と「人間関係」

―DAYに入ってからはどんな仕事を?

入社してすぐは「儘」に配属されました。 イタリアンレストランは経験がありましたし、新しい場所で刺激もあってとても楽しかったですね。でも1か月くらい経った頃に突然、「居酒屋の『dooop』に店舗責任者として行ってほしい」と言われたんです。

―え、1か月でですか?

そうなんです(笑)。dooopは私の入社と同時期にオープンしたので、そちらもまだ開店1か月目でした。「あまりうまくいっていないから」ってことで異動が決まったんですけど、最初はもう……(小声)めっちゃキツかったですね。

ーそうだったんですか。

まず、まだお店が認知されてないから、お客様も全然来なくて。食材のロスが出たり、アルバイトさんたちも手持ち無沙汰になっていたり。「このままずっとお客様が来なかったらどうしよう」「この店を任されたのにやばいな」って、最初はすごく不安でした。

ーそれは怖いですよね。

あとは、dooopの他の社員とちょっとぶつかってしまったり。向こうからすると、立ち上げからずっと準備をしていたのに、後からいきなり責任者として私が入ってきたので、あまり納得いかなかったのかもしれません。その2つが大変でしたね。

ー集客と人間関係の問題ですね。それはどう乗り越えたんですか?

まず人間関係については、とにかく「話し合う」しかなかったです。お互いにいろいろ思うことはあるけど、お互いにお店を良くしたくて言っているんだから、腹を割って話し合おう!と。そうすればちゃんと伝わるんだなと思う瞬間は何度もありました。今はもうその人は退職しているのですが、たくさん学びをもらった経験でしたね。

今まで私は調理だけが自分の仕事だと思っていたんですけど、ここに来てから人との関わり方や伝え方などをすごく考えるようになりました。 自分だけが楽しく仕事するのではなく、他の人にとっても「ここで働けてよかった」って思えるような環境を作りたい。そう考えるようになったのは、この時が初めてでしたね。

ーそれはすごい変化ですね。

はい。シンプルに、責任を持たせてもらったからっていうのは大きいと思います。前職でも後輩の育成を担当したことがあったけれど、大きな企業でシステムが出来上がっていたし、すごく乱暴な言い方をすると、心のどこかで「私の仕事じゃないかも」って思っていたところがあったんですよね。

でも、ここはまだできたばかりの小さなチームだから、システムもマインドも出来上がっていないし、空気感がダイレクトにお客様に伝わってしまう。「私がどうにかしないと!」と、考える範囲がグッと広がった時期だったなと思います。

ーもう一つの集客の問題には、どんなアプローチを? 

オープンしたばかりの夏はすごく暇だったんですけど、秋になって涼しくなった頃に、おでんを始めたんです。女性や若い世代にも楽しんでもらえるような見栄えの良さも意識して、メニューを少しずつ変えていきました。すると、Instagramや口コミなどでだんだんと知ってもらえる機会が多くなって、秋冬はすごく忙しくなりました。目に見えてお客様が増えていくのがおもしろくて、「やっぱり料理が一番大事なんやな」って改めて痛感しましたね。

―それはすごい!

それと同時に、接客についてもいろいろと悩んだ時期でした。作りながらお客様とお話しているので、忙しい時には落ち着いて話せない時もあって。何度か来てくださっている常連さんでも、話せない時にはすっと帰られたり。距離感や会話の質を上げるのってどうすればいいんだろう、話さなくても心地いい空間ってどう作れるんだろうと考えるようになりました。この悩みは、今でも全然尽きないです。特に私は今までサービス業を一切してこなかったので、余計に。

でも転職のきっかけになった「新しいことにチャレンジしたい」「作ったものを届けるところまで担いたい」という希望はちゃんと叶っていて、とてもやりがいを感じています。「飲食やっててよかったな」って、今すごく思いますね。


自分の仕事は「来てよかった」と感じる空間を作ること

―DAYで働くようになってから、成長したなと思うことはありますか?

私、今までは人見知り気味だったんです。人と接する時一旦構える癖があったんですけど、最近はちゃんと人と話せるようになったかもしれません。 恐れずに自分を見せられるようになったというか。

ーそれはどうしてでしょう?

dooopに入ってから調理だけではなく、「ここにいる人に『来てよかった』って思ってもらう経験や空間を作る」ことが仕事になったのが大きいですね。私が怯えていてどうするんだ!っていう。それはお客様に対してもだし、スタッフに対してもそうで、結局全部繋がっているんだって気づいたんです。スタッフが楽しんでいないと、お客様も楽しめない。ダイレクトに雰囲気は伝わっているんだっていうのは、すごく大きな気づきでしたね。

―乾さんの意識や行動も、全部繋がっているってことですよね。ちなみに、スタッフが楽しく働けるように大事にしていることってありますか?

まず、なるべく一人ひとりにどんなことがしたいか聞くようにしています。「どのポジションが好き?」とか「今どういうことをしたいの?」とか、その子のいいところを見つけるようにしたりとか。なかなか聞き切れないときもあるんですけど、スタッフ一人ひとりがdooopのことを自分ごととして感じられるようにできたらなと。そうすると、「もうちょっと頑張ろうかな」って思ってもらえるかなって。

ー自分ごとにできると、自分らしく働けそうですよね。

そうそう。それはすごく大事にしていますね。


ただ数字を追うのではなく、人の心に寄り添うチームに

ーちなみに今、悩んでいることはありますか?

めちゃくちゃあります(笑)。やっぱり、集客と対人関係。これで悩み続けていますね。

対人関係で言うと、今dooopがかなり忙しくなってきているので、アルバイトさんたちの仕事量がグッと増えていること。みんないろいろ思うところがあるはずなので、今それを拾い上げているところなんですけど。何がやりにくいか、いろんな子に聞いています。

―どうしたらもっとうまく回るようになるか、とか?

そうですね。私は基本的に「みんなに楽しく働いてほしい」という気持ちがすごく強いんですけど、忙しくなってくるとどうしても、その人が苦手なことも頼まないといけないことが多くなって。それぞれ向き不向き、好き嫌いがあるのは仕方ないんですけど、その苦手な部分にどう前向きに取り組んでもらえるかが今の悩みです。みんなすでにすごく頑張ってくれている分、一人ひとりの希望を掬いきれないのがもどかしいんですけど、こちらの期待をどう伝えるかが難しいですね。

―そういう悩みごとって、誰かに相談するんですか?

代表の渡部さんに「聞いてください!」って相談しています。前の会社は大きかったので社長に相談するなんてできなかったんですけど、DAYでは社長との距離感が近いので、なんでも相談できてありがたいですね。

それに、渡部さんはいつもちゃんと私の欲しい言葉をくれたり、導いてくれるんです。今まで見えてなかった方法や視点に気づかせてくれることが多くて、本当に助かっています。多分、渡部さん自身がめちゃくちゃ勉強しているんだろうなと思うんですけど。

ーそれは心強いですね。

あと相談に乗ってくれる時、こちら側に寄り添ってくれるのもありがたいです。会社を経営するため、単に数字を上げるためのアドバイスではなくて、人の心に寄り添うアドバイスをくれるので。DAYという会社もそうですけど、dooopもそういうチームにしたいですね。

―では最後に、今後実現したい夢について教えてください。

今の夢は、「DAYといえばdooopでしょ」っていうくらい、dooopをDAYの中で一番勢いのある店舗にすることです。「京都に来たらdooopに行きたい」って思ってもらえるような、皆さんに選ばれるお店にしたいですね。

―とても素敵な夢ですね。ありがとうございました!

取材・文 土門 蘭
写真  辻本しんこ


現在、レストラン「儘」ではスタッフを募集しています。


詳細は下記の採用応募フォームにて


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