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#このままいったらヤバそうだな_vol.02
社長の右腕として売上の半分以上を支えてきた松井さんからの「退職届」。
売上の半分がなくなってしまう可能性も・・窮地に追い込まれた社長。
そんな状況で迎えた 2019年1月16日。
社長が相談に来た。
<登場人物>
サカモト工務店(仮名)
創業42年、売上3億
大手ハウスメーカー " タハラホーム(仮)"の新築注文住宅および
一戸建て、マンションのリフォームを主軸事業としていた。
従業員は、社長、松井さん(仮名)、弟のタケシ(仮名)の3名。
私は会社がどんな経営状況なのかを把握するために" 財務三表 "を持ってきてもらうようにお願いしていた。
社長 「電話で話したとおりなんだけど、松井がね、独立するみたいなんだよ。いやー、まさか独立するなんて考えてもなかったから、いやーまいったよ。困っちゃってさ。」
嫁 「そうだよね。独立して何やるの?」
社長 「タハラホームの仕事は先々まで考えると体力的に厳しいから建物の検査とか診断とかそっちの方向にいこうと思ってるらしいんだよ。」
嫁 「ちゃんと考えての結論なんだね。それじゃしょうがないんじゃない。松井さんは一級建築士持ってるし自分でできるからね。」
社長 「まぁ、そうなんだけど、タハラホームの仕事をどうしようかと思ってね。松井が新しい会社で引き継いでやるっていうんだよ。ウチもタハラホームなくなったら困っちゃうからさ。」
嫁 「え?だってタハラホームとはウチの会社が元請けとしてパートナーシップ結んでるんだから、引き継ぐとかできないでしょ?」
社長 「うん、でもタハラホームのことは松井しかわかんないんだよ。だからウチから外注って形で松井がやる方法しかないかなって思ってるんだよね。」
嫁 「・・・」
社長 「まぁでも建設業免許って簡単に取れないからね。」
サカモト工務店は3人がそれぞれの業務をよくも悪くも完全に分担していた。社長はリフォーム、松井さんはタハラホーム、タケシは2人のフォローに回るという役割だった。社長と松井さんはお互いの仕事をまったく把握しておらず、サカモト工務店という会社のなかで2名の"フリーランス"が縦横無尽に仕事をこなす。そんな属人化した状況だったのです。
私 「財務諸表ってありますか?」
社長 「はい、これ。たぶん合ってると思うけど」
私 「売上のアベレージって月次でどれくらいなんですか?」
社長 「売上が上がる月もあれば、少ない月もあるよ」
私 「粗利率って何パーセントぐらいですか?」
社長 「タハラホームは低いかな。他はどのくらいだろうねー」
私 「販管費って毎月どれくらいですか?」
社長 「・・・ちょっと見てみて」
私はまず「PL(損益計算書)」の全体像をザクッと掴みます。
毎月どれくらいの売上(顧客からの信頼の指標)があって、粗利率がどれくらいあって(価値の指標)、販管費がいくらかかっているのか(生産性の指標)、本業のもうけがどれくらい出ているのか?を把握したいからです。
BS(貸借対照表)は業績の一時的なスナップショットなので後回しで、CF(キャッシュフロー計算書)でWC(運転資本)とお金の流れを把握します。
私 「今、見込みってどれくらいあるんですか?受注済みでこれから工事するものも知りたいんですけど。」
社長 「う〜ん、今月はあんまりないかな〜」
私 「上半期は予算に対してどれくらいで着地しそうなんですか?」
社長 「えっとね、毎月税理士の先生が集計してくれないとわからないから、来月10日ぐらいに来るよ。前期は赤字だったから今年はなんとかがんばりたいけどね〜」
私 「あ、なるほど・・・」
社長はまったく数字を把握していなかったのです。
「黒字化するには年度でどれくらいの売上と粗利が必要なのか?」
「どれくらいの売上と粗利をあと上げれば黒字になるのか?」
このとき私は"このままいったらヤバそうだな"と思ったと同時に、心のどこかで"42年も続いてるんだから"何かすごいしかけがあるんだろう。
そう思っていました。
・・To Be Continued
(第三話「驚くべき経営者」につづく)