サーカス
昔読んだ本にはしばしばサーカスが出てきた。
動物をつれて旅をして、テントを張って公演する。
町の人たちはサーカスが来ると広場に繰り出す。
「サーカスが来たぞ!!サーカスが来たぞ!!」
子供のころは一度もサーカスに行ったことはなかった。人混みが嫌いな両親は、遊園地とか繁華街とかそういったものが好きではなかった。出かける先は大抵海か、山か、川で、それはそれで楽しいのだけれども、行ったことのないキラキラとした場所に強いあこがれを持ちつつ親には言えずに過ごしていた。
そんな両親がどうしてだかサーカスに連れて行ってくれる言ってくれたことがあった。
サーカスに向かう車の中で私はとても心躍っていた。遊園地よりももっと珍しい催しにいけるというだけでもう楽しくて楽しくてしかたなかった。
そのウキウキした気持ちも、あっという間に終わってしまった。
サーカスの会場に向かう車の大渋滞に両親が早々に根を上げたのだ。
目の前がまっくらになるって本当なんだな、ショックなことがあるとお腹の中がズーンと重くなるんだな、そんなことを実感しながら普段言わない我が儘を言ってみた
「やだやだやだ!!サーカスを見に行きたい!!!」
普段言わなくなったのは、言ってもどうせ叶うことはないとわかっていたから。
今回も頭ごなしにしかられて、それで終了だった。
家につくまで涙が止まらなかった。
たかがサーカスだったけど、やはり自分の意見は通らないのだということと、キラキラとした非日常は自分には手に入ることはないんだという事実がただただ悲しかった。
始めてサーカスを見たのはもう親がいなくても好きなところにでかけられるようになってから。
横浜のみなとみらいで偶然みかけた木下大サーカスだった。
今でもテントで旅してるんだ、、、!!!サーカスってまだあるんだ!!
たぶん当時の恋人とのデート中のことだったと思う。その恋人が誰だったのかどんな会話をしたのか申し訳ないけど思い出せないけれど、サーカスをついに見ることができたという喜びはよく覚えている
シルク・ドゥ・ソレイユの破産宣告のニュースを聞いて真っ先に木下大サーカスを思い出した。
木下大サーカスは大丈夫だろうか?
シルク・ドゥ・ソレイユは素晴らしいショーだと思うけれども、それはサーカスではない。
サーカスという文化、わたしの憧れ、キラキラとしたステージと、郷愁。
なくならないで欲しいと切に願う。
どうか一日も早く世界が元の状態にもどりますように。
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