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人間モデル(経済人モデル)

人的資源管理と人間モデル

今回は、人間がどのような欲求を持ち、組織の中で行動する存在なのかという人間モデルと、それらを前提とした人的資源管理の制度や具体的活動について紹介します。人間モデルには、人はお金を求めて組織で働くと考える経済人モデル、所属組織において仲間意識や連帯感を求めるとする社会人モデル、仕事を通じて自己実現を求めるものであるとする自己実現モデルがあります。

経済人モデル

経済人モデルの社会的背景

経済人モデルは、人間が経済的に動機付けられて働くという考え方で、20世紀諸島のアメリカを舞台に、最初に登場した人間モデルです。

当時のアメリカ企業では、多くの場合において内部請負制度による間接的な労働者管理が一般的でした。内部請負制度とは、企業経営者が熟練労働者である親方を内部請負人とし、一定の金額を支払うことで一定量の製品の製品の生産を約束させるというものです。請負価格は、作業効率が向上すると切り下げられるものであり、労働者が頑張ると賃金が低くなるという特徴があったので、サボりが蔓延しました。これをテイラーが組織的怠業と名付け、この問題を解決しようとしました。この解決方法として客観的な手法による管理、科学的管理法(Scientific Management)が必要であると考えたのです。

テイラーの科学的管理法

課業管理

内部請負制では、労働者の1日の作業量は親方の勘と経験によって設定されていました。テイラーは、一日の標準作業量を課業と名付け、その管理の仕組みを整えようとします。これが課業管理です。この課業管理を行うために行なったのが、時間動作研究です。

まず、課業の内容を決定するために、一流の作業者を選定し、彼らが行う作業を分解し、それらをストップウォッチで測定します。その結果を用いて、最短で効率的な作業時間を決定しました。

時間的動作研究を徹底し家業管理を実施するためには、現場と管理の専門スタッフを置くことが必要です。管理専門スタッフは計画部に集められ、そこでは工場内の仕事を管理する役割を担いました。

各作業員は、計画部が作成する作業指図票に沿って仕事をしていきます。指図票には、その日の作業内容や作業手順、どれだけの時間を費やして良いかが明確に記載されており、現場の作業員や職長は、作業指図票通りに作業を行う必要がありました。この効果として、作業員は作業内容や方法について特段考える必要がなくなり、作業効率が上がりました。このように計画などの頭脳労働を現場から切り離すことを、構想と実行の分離と言います。

差率出来高賃金

差率出来高賃金とは、課業の達成度合いに応じて賃率の差をつけるというものです。課業を基準として、達成できた作業員はより高い賃率の出来高給をし支給します。作業員は頑張れば頑張るほど、高い賃金を得られるような仕組みになっており、科学的管理法の根底には経済人モデルがあると考えられています。

時間動作研究によって設定された課業は、最も効率的に作業できる一流作業員を基準にしているため、これまで意図的かつ組織的にサボっていた作業員をやる気にさせるには、経済的刺激によって課業管理する必要があると考えられていました。

ここで問題になるのは課業の設定が適切であるかどうかです。作業員の努力の仕方によって頑張れば達成できるのであれば、それが励みになって生産効率の向上につながると考えられますが、多くの作業員にとって達成が困難であるノルマであれば、労働強化につながります。この施策は産業界では歓迎されましたが、労働組合からは反対されました。

このように、科学的管理法のもとでは、人は経済的な動機づけによって働くとい存在であるという前提に立ち、達成困難な課業に向けて一生懸命働かせようとする仕組みが構築されたのです。

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