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書物の帝国「購書日記2020.10.21」

有隣堂ヨドバシAKIBA店にて、仕事の本。残念ながらブックオフでは拾い物がなかった…。

小林照義『金融政策[第二版]』(中央経済社)
久保文明・金成隆一『アメリカ大統領選』(岩波新書)
宮内泰介・上田昌文『実践 自分で調べる技術』(岩波新書)
小坪遊『「池の水」を抜くのは誰のため?』(新潮新書)

の4冊。新書単価がじわじわと上がってきているなぁと感じる。1000円越えの新書が増えてきている。本の刊行点数は確実に増えている(たとえばちくま新書は月6冊ぐらい出ていて、単価1000円前後)ので、当たりはずれは考えないといけなさそうだ。

読了本
山口真一『正義を振りかざす「極端な人の正体」』(光文社新書)

なぜSNS等のネット上では、極端な人の意見が目立ち、前面に出てきてしまうのか、その理由をわかりやすく説明した本。興味深いのは、極端な人たちはとにかく発信し、非対面だと攻撃する。そして、ネット上では意見が正規分布せずに、極端な右と左に偏るという。さらにマスメディアが加担して、情報が広く拡散することによって、まるで悪貨が良貨を駆逐するように、極端な意見しか残らなくなってしまう(実際、14%の人たちが46%の意見をつくるという事実にびっくりする)。

また「自分たちの正義」で物事の尺度を測り、ネットの情報をうのみにして自分の頭で調べもせずに、精神的苦痛を他人に与え続ける人たちがいる。これらの行為がネット上に蓄積していくことから、トラブルに巻き込まれたくない普通の人たちは声を上げなくなる。そしてそれは、自らの境遇への日ごろの恨みを晴らすべく、自分尺度の正義を一方的に振りかざす。そのような案件が増加しており、被害者に過分な罰が与えられることがある。また被害者と誤認された人たちについては、風評被害を含め、仕事・人生が台無しにされる。このような事案で被害者が加害者の情報までたどり着くには、情報開示などの手順を踏まねばならず、非常にハードルが高い。仮に個人が特定できたとしても、賠償金が支払われないケースもあり、被害者が一方的に被害を受けるという非対称性がある。その例として、女子高生コンクリート殺人事件の少年と誤認され、19人から中傷を受けたスマイリー・キクチさんのケースがある。このケースでもキクチさんが受けた中傷や風評被害を勘案すると、加害者への罰は重くないものだった。

ネットにおける分断について、色々な疑問が氷解する本でした。


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