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書物の帝国「購書日記2020.10.23」

アマゾンに注文していた本が1冊届く。
木下古栗『サピエンス前戯』(河出書房新社)

たしか早川書房から出ていた『ポジティヴシンキングの末裔』の作者さんだったので、買ってみようと思って買った。なんだか濃密な文体にやられそうだが…。

読了本
内田樹&岩田健太郎『コロナと生きる』(朝日新書)

日本のCOVID-19対策のちぐはぐさについて、感染症医である岩田先生と、リベラル系の思想家である内田先生が縦横無尽に語った本。日本の医療費が財源をひっ迫させるから、保健所の数、病床数をカットしてきた。医療体制が脆弱になったところに、今回のコロナ禍が起こった。医療は社会的共通資本(本書では使っていない用語ではあるが)であり、市場原理に任せると金持ちだけが救われる社会になってしまう。そのため、医療の本質を今回のCOVID-19の蔓延が起きたことで問い直す必要がありそうだ。また、官僚組織の無謬性についてはすでに崩壊しているのだが、官僚組織こそ効率化と人員補強が必要である。また専門家の意見が政治的判断で歪められることがないようにしていかないといけない。あとは経済を回すために、感染症対策よりも経済対策優先(Go toキャンペーン)という姿勢は、COVID-19の収束を難しいものにしている。このままダラダラ行くのではないか、と危惧はある。

専門家委員会の議事録がない、という話もそれ。そして日本は比較的死者数が少ない(とはいえ、現在で1700人強いるし、後遺症に苦しんでいる人たちもいる)のだが、このことを日本モデルと称して礼賛することだけはやめないといけない。そのあたりについても岩田&内田の両氏は厳しく批判している。感染症医が活躍しないでよいときほど、安心であるという岩田先生の言葉は重い。しかしながら今や感染症医が重要な役割を果たす時代になり、我々自身の行動変容も含めて、いかにCOVID-19を蔓延させないか、というところに注力を注がなければいけないと対談を読んで改めて再認識した。

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