Aro/Aceパートナーとの話。体の関係について。

はじめに。
この記事はAro/Ace当事者ではなく、Aro/Ace当事者をパートナーに持つ、ヘテロセクシュアルな人間が執筆しています。（相手には許可を得ています）
性的関係に関する内容を含みますので、苦手な方はご注意ください。

　ぶっちゃけた話ではあるが、Aro/Ace、特にAceの人とパートナーである場合に必ず問題になることだから残しておこうと思う。
　行為の話というより、あくまでもその対応の話なので、生々しいことは書いていないつもりですが、性的な話題が苦手な方にはお勧めしない。たぶん、この辺の話を赤裸々にする人はあまりいないと思うのだが、同じ境遇の人がいなさすぎて手探り状態だったので、私と同じような人がいたら一例になれるかもしれないと想定して書いている。

　アセクシュアルというのは、他人に性的魅力を感じない指向なので、A（私のパートナーであり、Aro/Ace男性）と私はセックスレスだ。寝るベッドは同じだけれど、身体の距離を空けて寛いで眠れるように大きいサイズだし、良くて手を繋いで寝る生活。
　恋愛関係には当然身体の関係も含まれる、むしろないのはおかしいというような風潮の中で、少なくともその風潮に違和感を感じずに馴染めていた私にとって、セックスレスはなかなか衝撃的な問題だった。19歳でAと付き合い始めてからずっとそうなので、ちょうど周りの友人との話題が「彼氏・セフレ・性の悩み」になる頃と重なり、悶々と悩む日々が続いた。

　Aが自分の性的指向に「これかも！」となるまでは、こうなっている原因がわからず、私の魅力がないせいか？と何度考えて落ち込んだかしれないし、自分から誘うなんてはしたないと思ったことも数知れず。
　勇気を出して誘えばAからの返事は「うーん……」と歯切れが悪く、Aがすやすやと寝ている横で「セックスレス　原因」等で検索をかける始末。まだ20歳そこそこでこれ？今後もずっと？？？とモヤモヤしまくり気がつけば朝、みたいな日もあった。
　実は体の関係がほとんどないんだよね〜という話を友達にした時は、「触りたくなるくらいすべすべになるスクラブおすすめする」「すっごくセクシーな下着買って見せたら？」「デートの後家に帰るんじゃなくてさりげなくラブホに誘導したら？」「めっちゃ色気のあるムードになる香水あるよ！」などなどアドバイスを様々もらった。なんとなくどれも違う気がしたが、ダイエットはしたし、セクシーな下着も買ったし（見せなかったが）色々と試しはした。試行錯誤しながら、自分に魅力がないせいかな〜とかなり落ち込んだ時期が一番しんどかった。

　だからAがAro/Aceを自認した時は私もすごく救われた（変な表現かもしれないけれど）気持ちだった。私が否定されていたわけではなかったんだ！という点で。色気のある下着を探す必要もないし、体型を相手好みに変えようという意識もいらなくなった。同時に、もっと早くAと深い話をして、Aroかも、Aceかも、という発見をできたら良かったなとも思った。


　しかし悩みはまだ出てくる。私には欲がある。Aにはそれがない。私の欲の行き先は一体どうなる？？？？という悩みだ。
　Aとの関係を続ける上で、選択肢を色々と考えてみた。

①何ヶ月に1回と決める。
②私が他の人で解消する。
③しない。

　①はルーティン化する前にやめた。合意があったとしても、気の進まない行為を義務のようにさせることに対して抵抗があった。それってつまり、私の性欲処理にAを使うということでは？　数ヶ月に1回ならおそらくAは頑張ってくれてしまうと思う。実際、拒否し続けるのも骨ちゃんが可哀想だから、と彼は言っていた。
　義務感で頑張ってくれているんだな、とわかってしまうと申し訳なくなるし、Aにそんなことをさせたいわけではなかった。仮にそれでできたとしても、欲が解消されたとして心が満たされることはないと思う。そんな気持ちになってまでしたいかと言われれば違った。

　②を考えて、Aの同意を得た上でマッチングアプリを入れてみたことがある。ただ画面上に現れる異性の写真を左右に振り分ける段階で、「他の異性に全く惹かれない」ということに気がついた。それもそうで、私はAと出会ってから他の異性に対して少しでも「いいな」と思ったことが一度もなかった。たとえ、セフレ探しだとしても誰1人右にスワイプされなかった時点で、なんか違うなとこの方法は見送ることになった。
　女性用風俗というサービスも巷にはあるらしいが、見た目、声、全てがAではない時点で気持ち的に微妙な気がして、試してはいない。そこでうまく気持ちと欲を切り離して処理できるタイプの人にはいいかもしれない。


　あの手この手を試そうとしてわかったのは、私は好きな人としたいタイプで、恋愛と性欲をあまり上手に切り離して解消できないのだということ。
　そこで結論③に至る。色々考えた挙句A相手とじゃなきゃ嫌だ！となるくらいなら自分の欲は放っておこう。セックスレスもさすがに4、5年続くと慣れる。たまに「したいかも」と思う時は大抵ホルモンバランスの波だったりするし、私の体もしっかり動物なんだなと逆に感心する。その辺を乗り越えてしまえば基本的に平和だし、私とAはハグするくらいの距離感で上手く生活している。
　こうなったのは私もおそらく性欲が強いタイプではなかったことも大きいと思う。私の知る限り、ヘテロとAceの関係では体の関係が争論になってお別れすることになるケースが多い。求める頻度が高ければ高いだけ我慢するのも大変だろうし、乗り越えるのに時間がかかるかもしれないなと思う。


　当事者のパートナーがいてなお自分の感覚の解体は難しかったし、今でも難しい。話し合いが必要になれば話すけれど、今では年1で意見交換したり、将来子供を持つとしたらどうするかについて話すくらい。今のところ③の結論で平和にやっているが、この先どうなるのかは未知数だ。
　気をつけているのが自分の欲をなるべくAに見せないようにすること。自分が他者から性的に見られている/求められている、というのはどれだけ一緒にいてもグロテスクな部分があると思うので、なるべくそのあたりを感じさせないようにとは意識している。我慢していますよ、というのも見せないように気をつけている。それでAが私との暮らしに不快感を感じず、毎日にこにこしていてくれたら嬉しい。
　あくまでも、私とAの場合の話なので、全然解決策にならないかもしれない。でも、この人たちはこうやって折り合いをつけているんだな〜という一事例として残しておく。大事なのはやっぱりパートナーと話し合うこと、それから、嫌だと感じていることを無理やりしない/させないことだと思う。

　あと、レスなのはあなたに魅力がないせいじゃないから！！！！そこで落ち込まないでほしい！！！！というのは声を大にして言いたい。