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水滴が生まれる時

人の目から涙が生まれる瞬間を、初めて間近で見た日のことを覚えている

彼は気持ちが不安定で、当時、感情をコントロールする薬なんかを飲んでいた。ある日様々な悲しみが重なって、彼の体は音の無い悲鳴を上げていた。そんな時、彼の瞳に小さなまぁるい涙が生まれた。

その瞬間、わたしは癒やされるような感覚を覚えた。泣くのはストレス解消になると聞くけれど、人の涙を見た時にもそういう効果があるとは初めて知った。聞き上手な彼は自分の気持ちを吐き出すのは苦手で溜め込んでしまうのだけど、涙がそれらを外に出してくれたように感じたからかもしれない。

屋久島を旅した時、とどまる水はよどみ、流れる水は澄むのだとガイドの方が教えてくれた。人から涙が生まれ流れる時、その人の心は、小さく流れる小川みたいに静かに澄みはじめるのかもしれない。

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