〔読書評〕水上勉 「越後つついし親知らず・はなれ瞽女おりん」
この短編小説集は鮮烈だった。
表題作「越後つついし親不知」は新潟から京都に出稼ぎに出た労働者たちの物語。
生の淵源を突きつけるような迫力が胸に迫る。
けれども何か温かい感情が湧きつづける不思議な作品...
「桑の子」は作品名からは想像もできないくらい凄絶だ。
牧歌的ながらまったく牧歌的ではない残酷な農村生活の一面が描かれている。
この作品が"妙"なのは語り部を「桑の子」の幼馴染にしていることだろう。
そのことによって、この凄絶な逸話が伝説に昇華されたかのような感がある。