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【長編小説】ロング・ロング・ロング・ロードを書いて —あとがき―
たぶん、誰もやっていない世界を構築したい。
そんな思いで、物語を書き始めていました。
それなのに、この物語を書き終えたら人生を終えようと思っていました。まだ世界の塵一つを創造しただけなのに。
しかし、今は生きています(笑)
この物語のベースは、北海道179市町村を三ヵ月近くかけて巡った一人旅。
ツーリングまっぷるという素晴しい地図を見ながらの旅でした。主人公・獅子王誠が旅した道筋は、実際に自分が走った道とあまり違いはありません。
しかしその時は、小説にするなんて思ってもいませんでした。
ただ、長年かけて旅の準備をし、体調を整え、いつものロングツーリングよりも多くの荷物を積んで走り出しただけでした。
他の旅人に話を訊くと、辿り着いた苫小牧東港は一番何もない港だと言いました。
オレンジ色のライトの先は、ただ暗闇があるだけです。
『それにしても闇だ、暗闇だ。これもが北海道なのか。まったくウキウキとしない。』 ロング・ロング・ロング・ロード Ⅰ 十勝の空 編 プロローグ【上陸編】より
朝を迎えてからは晴天に迎えられ、素晴らしい旅の第一歩になりました。
最初、獅子王がなかなか北海道を感じれなかったのは、氷のように固まった人物の推移を書きたかった事もありますが、作者の私自身が、大阪というゴミゴミとした街から、この旅の為に琵琶湖のある滋賀県に引っ越しをした事が大きかったと思います。
なにせ、滋賀県も北海道に負けず劣らぬ広々とした空と宙がありますから、そこで旅へのトレーニング走行をしていた為、気持ちの良い景色に慣れ始めていたからでしょう。実際は、ひしひしと北海道を感じる刺激ばかりでしたが。
旅の行程が決まっていたので、そこに物語を嵌め込んでいく作業になりました。
創作のマストアイテムは、この物語限定で、旅を記録した“写真”という事になります。順を追って見ていくと、すべてが鮮明に思い出せるのです。
十勝の空 編では、全編に出てくる桜井彩香や他の人物達を、どう登場させるか考えました。(津田と川口は、もう出てこない予定でした)
その時、ウトナイ湖で出会った女性と、帯広のホテルのランドリールームで出会った女性が似ていた事を思い出したのです。
本来は、R18になるような描写を色濃く書いていましたが、やわらかい表現に変えました。昔、中学生の頃読んでいた小説達には、ドロドロとしたものが当たり前のように書かれていたのですが、時代の流れですね。
道東の霧 編では、二人の女性と、二人の男の話を中心にしました。そして、ひとり死を選ぶ女の話を絡めました。
その人達と出会う事で、獅子王誠がゆっくりと溶け始める。そんな思いがありました。
道北の蒼 道央の碧 編は、テロというとぴょうしもない事を基本ラインとしました。
そのイメージは、ラストの舞台となる千歳空港へ実際に行って、ソフトクリーム食べまくりをしていた時でした。丘崎が刺殺されるホールでベンチに座り、ごった返す観光客達を眺めていた時に、ここでひと騒動あったらどうなるのだろう?と、ふと思った事でした。
仲野は、他の物語でも登場する人物です。何処かで登場させるつもりでしたから、道北の蒼 道央の碧 編で登場させる事になりました。道上は、ただ忠実に任務を遂行するだけでした。いつかどこかで登場して欲しいと思っています。
道南の涙 編は、主人公・獅子王誠が青森港へ向かう船上で幕が下りているが、実際の旅はまだ半ばでした。東北六県を周り、東京、埼玉、愛知、三重を除いた県を巡って滋賀県へと戻ったのです。(東北六県を巡ったツーリング紀行はそのうちにこちらでアップしたいと思っています)
他の編には空や霧や蒼&碧と、自然な感じの文字を付けていましたが、最後の道南には『涙』を付けました。主人公の獅子王には理解不能な親子の愛情の話です。
自分的には、美枝子が一番好きな登場人物です。ですが、彼女が活躍する物語はこれで最後だと思います。もっと年老いて、穏やかさを身に纏うと、無敵の女性になるかもしれませんが。
金という物差しで生き死にを決めた獅子王が、広大な景色や、色々な思いで生きている人々に出逢ったあとに見た景色が、海から見る青森の街の風景でした。これからどう生きていくのだろうと書いた本人が一番思っています。
長々とした悪筆乱文をお読み頂いた方々には、心より感謝します。そして、ありがとうございました。
読んだ感想などを頂けると、大変ありがたく思います。
神舞 ひろし
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