「古代オリエントの宗教」青木健

原初の状態においては「光の世界」と「闇の世界」が対立していたとするグノーシス主義的な神話がある。マンダ教によれば、前者の中心は
「偉大なる生命(ハイイェー・ルベー)」で、それを囲繞(いにょう)して無数の「豊饒さ(ウトレー)」たちが祈禱をおこなっている。マンダ教の神聖地図にしたがえば、この光たちのあいだを天界のヨルダン川が流れて、そのまま地上のヨルダン川につながっているとされる。彼らが日常的におこなう洗礼儀式において、特にヨルダン川での沐浴が重視される根拠がこれである。

やがて天界では、「偉大なる生命」から順にヨーシャミーン、アバトゥル、プタヒルと呼ばれる三段階の流出がはじまるという。

最後のプタヒルの名称は、エジプト神話の「職人の神」から借用したらしい。他方、「闇の世界」の中心は「闇の主アドナーイ」で、女悪魔ルーハー、七惑星、黄道一二宮、および無数の怪物たちがそれに属していたとされる。

 あるとき、「光の世界」の最下位にいるプタヒルが、自らを造物主だと錯覚し、しかも「闇の世界」に属するルーハーと七惑星、黄道一二宮の助けを借りて、「この世界(ティビル)」を創造した。これが、我々が現在棲んでいるこの世界の起こりである。

ただ、プタヒルは悪なる物質から最初の人間アダムを創造したものの、どうしてもこれを起動させることができない。そこで、動力源として「光の世界」に由来する「内なるアダム=霊魂(アダカス)」を入れてみたところ、アダムは悪なる物質と光の霊魂の二重性を帯びた存在として一気に目覚めた。
こうしてアダムは、光と闇が交錯する地点で人間意識を得て、この世界に誕生することになった。ちなみに、こんなものを創ったプタヒルは「光の世界」の最高存在である「偉大なる生命」から咎められ、帰還できなくなってしまう
(グノーシスならこんくらいの馬鹿さ加減があってほしい)

わ〜い!😄