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2024年6月6日原宿クロコダイル。山内テツさんに会えた。

まず山内テツというミュージシャンについて。1970年代初頭、海外で日本人の音楽というと「スキヤキ」しかなかった時代、ベースギターを持って渡英し、FreeやFacesという英国を代表するバンドのメンバーになった。これがどれほど大変だったか、当時の英国は英国人演奏家を守るためという理由から、ミュージシャンユニオンという音楽家の組合に加盟せねばならず、その条件が英国人に限定されていたため、渡英したものの思うように演奏活動ができずかなり苦しい日々を送ったそう。そこで彼の音楽仲間やファンが働きかけて苦労の末ユニオンに加盟することができたという。日本人の演奏家の海外進出の道を切り拓いた人。以来半世紀、僕にとって伝説であり、尊敬し続けて来た人。
Faces解散後、日本に帰国してアルバム1枚、ライブアルバム1枚をリリース。いろんなミュージシャンと活動していたが、少しずつ表舞台に姿を見せなくなった。それでも僕は気になり、インターネットを手に入れてからは、しょっちゅう彼の名前を検索し続けた。去年になって友人のMr.MOROJIから「時々ライブやってるよ」と聞いてワクワクしてた。今年の1月に、原宿クロコダイルでライブがあり、なんと行ってきたと…。さらに6月6日にもクロコダイルでライブがあると。これは行くしかない。半世紀もリスペクトし続けた人の「今」が見られる。しかも彼のライブは初めてなのよ。ということで紹介しましょう。

山内テツ Tetsu Yamuchi
原宿クロコダイル入口にて

入口に到着ワクワクしてきた。長い間ラジオの仕事やライブの現場の仕事などの経験が染み込み、プライベートでライブに行っても、なんか気持ちはドライな僕。でも今日は純粋に楽しもうと決めた。

山内テツ Tetsu Yamuchi
ステージ上にセットされた棹の勇姿

お店に入って驚いた。席は最前列のテツさんの前。それにスタンバイされた棹もの達。まず上手から、これはかつてテツさんがイビザ島で手に入れたフラメンコギターだそう。とにかく古い!ボディにも大きなヒビが入ってるのに大事に使われてきたんだろうなぁ。弦はフラメンコギターなのでスチール弦が張ってあります。
そしてセンター。これはあのFaces時代から使われてた、いわばテツさんの代名詞みたいなゼマイティスのベース。僕にとっては世界で1番かっこいい、見栄えのいいベース。生でこいつの音を早く聞きたい。気持ちは高ぶります。
そしてステージの下手、Fenderのとんでもなく年季が入ったベース。これは同行した石井くんによるとFenderのMUSICMASTERというショートスケールのベースらしい。色は茶色く年季の入ったナチュラル塗装…と思ったら、ほとんどの塗装が剥げ落ちて下地が出てきた上に年季が入ってこんな色になったもの。上の方に元の色の白い塗料が残っているのがわかる、でもこの写真じゃ判別できないか。ということでアップを上げます。

山内テツ Tetsu Yamuchi
テツさんの演奏中の写真。よく見るとトーンノブが欠品してる。やはりゼマイティスはこのメタルプレートの彫刻が美しいよね。
山内テツ Tetsu Yamuchi
そうこの部分に彫られた文字が気になってたのです。この時がチャンスとどアップにしてみました
山内テツ Tetsu Yamuchi
まさに美術品ですな。
山内テツ Tetsu Yamuchi
使い込まれたヘッド。
山内テツ Tetsu Yamuchi
FenderのMUSICMASTERのボディ。
山内テツ Tetsu Yamuchi
そしてヘッド。もう元の色はわからないね
嶋田吉隆 山内テツ Tetsu Yamuchi
楽器に見とれていると…

僕の目は楽器にしばらく釘付けになっておりました。突然ドラマーの嶋田吉隆さんがドラムセットに座り、とても微細な音で音が始まった。彼はテツさんが帰国後組んだGOOD TIMES ROLL BANDのドラマー。1976年当時、嶋田さん17歳の時。プロデビューのきっかけだったそうな。実は僕と同い年。彼は早生まれの3月、僕は4月。1ヶ月しか違わないけど学年は彼が1こ上。余談になるがこの「学年でいうと…」というのは日本人独特なんでないかい?とても繊細な音で川の流れのような音から始まりました。

山内テツ Tetsu Yamuchi
いよいよテツさん登場
山内テツ Tetsu Yamuchi
2人の息も詰まるような展開
山内テツ Tetsu Yamuchi
足元のペダルはクライベイビー僕は勝手に「泣き虫赤ちゃん」と呼んでます

ということで本編が始まりました。テツさんの今の音楽はインプロヴィゼーション、嶋田さんのリズムに、テツさんの奏でる自由な音が絡まってくる。2人の音の糸が、奔放に空間を舞いながら絡み合い、そして美しい紋様を紡ぎ出す、嶋田さんが自由だけど規則正しいリズムを刻んだ上に、テツさんがその場の空気から適した音を見つけてきて作品に仕上げていく。例えるのが下手で申し訳ない。だから要所要所での2人のアイコンタクトを見たりして気持ちを想像すると、少し彼らの音に近づけるような気がする。音は自由なんだ、楽しむことが大事だよ。当たり前のことを教えられた気がする。

山内テツ Tetsu Yamuchi
後半の様子です。ここでゼマイティス登場

後半が始まり、ここからテツさんはベースをゼマイティスに持ち替えて演奏。本体のメタルピックガードの彫刻によると1975年製造のFaces時代から使っている有名なもの。世界遺産的楽器とも言えるだろうね。途中からゲストでセネガル出身のウスマンさんを加えての演奏。僕はプライベートでライブに行っても仕事モードが染み込んでいて、冷静に見ちゃってるんだけど、この辺りからとうとう理性が吹っ飛んでおかしなモードになってきた。
そこでかねがねやってみたかったことを実行してしまった。それは…

山内テツ Tetsu Yamuchi

ライブに行くと客席で、アーティストの写真を掲げている人がいるじゃないですか。あれをやってみたい衝動に駆られまして…
なぜかたまたまバッグに1976年の「TETSU & GOOD TIMES ROLL BAND」のライブアルバムが入ってて…。その中にステージ写真のポスターも入ってて、なんと最前列で掲げてしまったのでした。当然ご本人達の目に留まり、太鼓は嶋田さんだし少しお笑いタイムとなってしまいました。緊張の糸をぶち切っちゃって申し訳ないです。笑
終演後にはメンバーの皆さんとの記念撮影にもお応え頂き大変光栄でした。以下少し自慢写真を掲載しますね。

山内テツ Tetsu Yamuchi
まずテツさんの隣に座らせてもらって

楽屋に入れてもらって少しお話しさせていただきました。見よ!この満面の笑顔。

嶋田吉隆 山内テツ Tetsu Yamuchi
嶋田吉隆さんと

お互いに1959年生まれと判明。イノシシで、伊勢湾台風の年で。…そうそう!などと盛り上がり。俺3月、僕4月。ひと月しか違わないけど、学年で言えば1こ上か…。という日本人的な「学年で言えば」トークをしている最中です。

山内テツ Tetsu Yamuchi
ゲストのウスマンさんと

ゲストパーカッションのウスマンさんと記念撮影。彼の奥様は日本人で彼も日本語は堪能です。本番中に、前述した僕が頭上に掲げた懐かしいポスターを取ってテツさんに渡してくれたのが彼です。

山内テツ Tetsu Yamuchi
テツさんとGrecoのEG650N

このギターはGrecoのEG650Nというモデル。形状はレスポールモデルだが、似て非なるもの。メイプル指板にヘッドインレイ、しかもボディの裏面はコンター加工と言って、お腹が当たる部分を切り落とし、角をなくすことで、フィット感を上げている。その他いろいろ。1974年と75年の短い期間しか作られなかった。1974年、僕が中3の時、このデザインに一目惚れし、購入した。一度手放したが、やはりこのデザインが恋しくなり、最近ネットで見つけて買い直した。実は買った当時1974年、楽器店のお兄ちゃんや、フリーペーパーなどで「山内テツモデル」と言われていた。でもグレコのカタログにはそんな表示はなかったんだよね。以来半世紀、ずっと気になっていた。せっかくテツさんのライブに行くんだから持ってっちゃえ!話せるかどうかわからないけど。ということで持っていきました。テツさん、これを見るなり「あぁ懐かしいね」と言って、このギターができた経緯を教えてもらいました。

山内テツ Tetsu Yamuchi
GrecoのPB750

当時、日本のギターメーカーのGrecoが山内テツさんとベースギターを開発しようということになり、それがこのPB750。この日のライブに一緒に行った友人の石井くんが持って来たもの。これはMr.MOROJIから巡って石井くんのところにたどり着いたもの。テツさん曰く「このベースの設計について打ち合わせしたいって、Grecoの奈良さん(故人)がわざわざロンドンまで来てくれたんだよ。その時一緒にこっちのギターもいろいろアドバイスしたんだ。デザインと色合いとか…」とはっきりと教えてくれた。
この辺りの経緯は、既にMr.MOROJIより、テツさんに確認済みだったんだけど、自分の耳でも直接聞きたい欲求に駆られてしまった。そしてこのギターをテツさんと巡り合わせたかった。テツさん本人の口からもそのことを聞けて実に幸せ。これで僕の50年に及ぶ謎は解けました。こんなに充実した1日って何年ぶりだろう。まだ興奮は冷めない。

山内テツ Tetsu Yamuchi
2人のサイン

サインはきっちりとこちらにお願いしました。末筆ながら、テツさんのライブの情報を教えてくれたMr.MOROJI、席を確保してくれたikukoさん、石井くん、きみがPB750を持って来たおかげで、僕もわざわざ三重からギターを持っていく決心ができた。そしてもちろん山内テツさんとご家族、嶋田吉隆さん、ウスマンさん、原宿クロコダイルはじめこのライブの関係者の皆さんに心から感謝の言葉を。
ありがとうございました。本当に素晴らしい1日でした。次回も赤福を持ってお邪魔します!
最後に、新しい夢ができた。テツさんのライブを地元の三重県で見ること。どうせならたっぷり時間をとって、山あり海ありの三重を堪能してもらったり、温泉に浸かって、美味しいもんたくさん食べてのんびりしていってもらえたらなあ…。三重の人たちはもちろん、近隣の人たちも見に来てくれたらなあ…。夢は広がる。
山内テツさんのX(旧Twitter)
https://x.com/tetsuyamauchi1?s=21&t=VbsxmP5ezvxzwlK9-wr6Sg

嶋田吉隆さんのFacebook
https://www.facebook.com/yoshitaka.shimada3

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