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舞台に関わる身として
2年前に思い立ち、音響機材を揃え始め、PA屋さんを始めた。と言ってもまだビジネスとしては成り立ってはいないけど。その前に学生時代を含め、ラジオ業界で20数年音響に関わらせてもらってきた。ラジオマンとはいえ、少なからず舞台に関わることがあった。誰に教えられたわけでもないけど、自分なりのルールを作ってきたので紹介します。もっと現場経験が豊富な方々から見たら「そんなこと当たり前じゃん」と言われるかも知れないけど
![鈴鹿市 音響](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/148489231/picture_pc_e276a0628a55f91ea9986ebcb8fc8073.jpg?width=1200)
①写真に映り込まない
舞台周りではあちこちで記念撮影が撮られる。出演者同士、たまたま出演者と開演前後に出くわしたファンと出演者の記念撮影などなど。
僕は裏方。だから決して表に出ないこと!と決めていた。
だからカメラの気配を感じると自然とカメラの被写体角度から外れる癖がついた。「ディレクターさんも一緒に!」と言われても丁寧にお断りしてきたし、フルスタッフ揃ってという時も人と人の間に入り目立たないようにしてきた。
そんな癖が抜けないのか、プライベートな同窓会などでの記念撮影でも、後ろの端っこの方で(端は目立つので端っこの方)「関係者ではありません」の顔で目線をそらしていたり…
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②火気厳禁
これは当たり前のことだけれど、舞台は火気厳禁。例えば演出で、喫煙の場面がある時やスモークを焚く場合などは、事前に消防署に届け出なければならず、届出しなかった場合は消防法違反となる。でもスタジオはあくまでも持ち主である会社の責任のようで、今ではあり得ないだろうけど、古いスタジオや放送局ではスタジオ内に灰皿があり、喫煙可能だったところもあった。昔いたラジオ局が開局した年、某大物グループがゲストに入ったことがあって、社内の上層部も大喜び。土曜の夜9時からの放送なのに何故か休みのはずの放送部長がいて、本番前に、自ら大きな灰皿を持ってスタジオにやって来た。「あ〜タバコどうぞどうぞ。うちはスタジオ禁煙じゃないので」だって。もちろんその時間のみの特別ルールだったけどあれは不愉快な記憶です。
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③水気持ち込み厳禁
舞台上は様々な信号や電気が行き交う場所。音声信号や照明に電源など。中には商用200Vなんて殺人的な電圧の電源ケーブルもある。いわば信号と電気のスクランブル交差点。基本的には水気を持ち込むのは御法度だと思っています。ただ、ライブになれば60分から120分、ボーカリストは歌いっぱなし。MCは喋りっぱなし。ステージドリンクは除外される。ただしフタのついたペットボトルのみ。
それはホールの舞台はもちろん、お祭りの小さなステージも同じだと思っています。会館などクローズドスペースではほとんど無いけど、屋外のイベント会場やお祭りステージでたまにあるのが、興に乗ったお客さんからの差し入れ。ペットボトルならまだいい。紙コップに入ったドリンクやビールなど差し入れられる。本番中にそんな場面があったら僕ら裏方はなす術がない。受け取った者の責任になると僕は思っている。
何故なら本番中に出演者に差し入れられたものは、受け取った出演者、またはその関係者しか対処できないから。
仮にその水分がこぼれ、音響機材を濡らしたら、当然ですが機材は壊れ、音声は断になります。
電源が絡んでいた場合、その機材が壊れる、最悪の場合停電、漏電、それによる火災、感電など危険極まりない事なんですね。こんな場合もほとんどの出演者さんは、即機転を効かせ、一口含んで、はるか後方、万一こぼしても大丈夫な場所にそのコップをハケる。それが普通だと思うんだけど。
昔々その昔のことですが、複数の音楽グループが出演したあるイベントでの出来事。
ずっとみなさん、持ち込んだお茶かお水のペットボトルで毎回フタを開け閉めしては喉を潤してました。
そんな中出てきた、いかにも演奏経験長いぞおじさん。ご自身も「キャリアだけは長いから」と堂々と仰ってましたが、2曲目あたりで、お客さんから大きな紙コップに並々注がれた生ビールを差し入れられて、ステージ上で「カンパーイ」とやり始めたんです。ほんの少ししか飲んでないので、残りの量は多いはず…と心配してました。そんなシーンが2回。終演後になんと舞台で孫を抱いて花束抱えてカンパーイ!だって。
案の定舞台上は水浸し、しかもビール臭プンプン。水浸しになったのはDI1台と、お借りしたモニタースピーカー。
終わってから本人は黙ってどこかに行っちゃったけど、舞台でビール飲んだお方は他にはいらっしゃらない。
普段はほぼ冷静にフェーダー操作してるんだけど、この日は正直なところ怒り心頭でした。
イベント終了後、客席にいるのを見つけ抗議したところ「お客さんから差し入れにもらったから仕方なかった」だそうです。普通の感覚なら真っ先に謝罪…いや100歩譲ってもこちらが指摘する前に謝罪だろう。あれだけステージをビールまみれにこぼして気が付かないわけがない。それでベテラン面するなっちゅうの。機材が壊れるくらいならまだマシ。停電したらイベントは中止。漏電したら?火災になったら?感電事故になったら?
僕に限らず全ての音響関係の皆さんは、出演者の方々が奏でる音を少しでも良くして客席に届けたい、その一心でやってます。「このマイクならボーカルもっと聴きやすくなるかも。どのDIならアコギの音がもっとアコギっぽく聴こえるようになるのかな。パワーアンプ替えてみよう。もう10台以上あるけど少しでも音が良くなれば良いさ」そんなことを日々思いつつ暮らしています。出演者の皆さんにとっての楽器への想いと僕ら音響屋の機材への想いは同じなんです。
例えば僕が、出演者の誰かのギターに無神経にビールぶっかけてスルーして、指摘されても「お客さんからもらったので仕方ない……ああぁごめんなさい」という態度だったらどう思うだろうか?この事件はトラウマになっています。
![鈴鹿市 音響](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/148491096/picture_pc_dc6a513ab18ef215c00d7c88c9a88338.jpg?width=1200)
舞台の主役は誰なんだろう?それは昔からよく考えてきたこと。演奏者?役者?芝居の主役?
あくまでも僕のポリシーですが、舞台の主役は絶対にお客さんだと思います。お客さんあっての演奏家、役者。
例えるならば(例えが多いですが💦)ステージはレストラン。出演者の皆さんは美味しそうに盛り付けられた料理の数々。レストランの最高の売り物(出演者の皆さん失礼!)
僕ら音響を始め裏方は料理人です。だから決して表には出ない。少しでもお客さんに美味しく召し上がって頂くために、我々は汗も流す。帰る時に「ごちそうさま」と言ってもらえたら僕はとても幸せです。