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NBC村山アナの小説『午前0時のラジオ局』シリーズから学んだこと。

情報とは何か、という根本的な質問をされた時、私は『実態から離脱した表皮だ』というようにしています。さらには『情報は実態を失っても残存する幽霊だ』といいます。さらには『世間には幽霊に敏感な人とそうでない人がいる』と前置きして『あまりに敏感な人は幽霊と実態の区別ができなくなります』と結びます。

ラジオはまさに、あらゆる実態を『音』というもっとも抽象的な情報に置き換えて、鉄塔から世界に発信しているわけです。

エジソンの最期の発明は『霊界ラジオ』でした。実用化には至りませんでしたが、その感覚と考えは、電波の世界に携わる人には、敏感に受け継がれています。

さて、ラジオと幽霊といえば村山仁志アナウンサーが数年前からリリースしている小説『午前0時のラジオ局』です。出演者のおよそ半数が幽霊ですが、おどろおどろしさよりも、それぞれの幽霊たちの魅力や愛され方がよく描かれているので、子供から大人まで読めるファンタジーSFとして高く評価されています。シリアスな話もありますが、むしろその魅力は第2巻に当たる『夏服少女からの伝言』で際立ってきます。そして第3巻に当たる『星空のオンエア』では、霊体どうしの論戦もあり、その内容は『神々の闘い』を思わせます。第1巻だけ読んで2巻以降を読まないのは本当にもったない。第1巻で活躍するあのかわいい登場人物、登場幽体たちのそれぞれの経緯にも迫るので、ぜひ三冊読んでいただきたいと思います。

当然、事件記者である星乃さやかさんのこともきになるでしょうが、こちらは、なんとハードタッチのサスペンスです。しかし、根底にある『命、愛、弱さ』に対する作者・村山さんのポリシーは貫かれていると思います。

放送史上、エッセイを何冊も出したアナウンサーや放送人はたくさんいますが、メジャーな出版社で何冊も『小説』を発表したかたを、放送史研究家である私は存じません。たいへん貴重で、魅力的な人と、われわれ、同じ時代にいるのです。嬉しいですネ。

スタジオには幽霊が集まります。それは情報という名の幽霊です。それは、風に載るように実態からフワリと剥がれて飛んできたのかもしれないし、記者さんが丁寧に、魚拓をとるように剥がしてきたものかもしれません。それらをうまぬ繋いだり、貼り合わせたり、重ねたりして、番組は出来上がります。番組も、スタジオから送り出されて仕舞えば幽霊です。

でも、この幽霊たちは、剥がれた実体を持たず意図的に作られたFakeとは、見た目は同じですが、全く違います。Fakeな情報は、妖怪であり、怨霊です。見た目が同じなので紛らわしいですが。

あ、シリーズには、そんな悪さをする妖怪も出ますよ。

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