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偏愛ー異常なラーメン天国 つくば
つくばという土地にはさほど強い魅力があるわけではないが、どうしてもどうしても、ラーメンの実力だけは異常に高く、定期的に特定のラーメンを思い出しては、恋い焦がれてしまう変な存在である。つくばで9年間を過ごしたわたしの持論である。
そして今日、久しぶりにつくばのラーメンを口に含んでしまい、溢れてしまった、つくばラーメンへの愛をつらつらと書き残しておきたい。
どうしても想起せざるを得ない、七福軒
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七福軒の坦々鶏蕎麦である。店主さんがえいや、えいやと大きなスプーンでたっぷりと2杯、タッパーからすくって盛りに盛って提供してくださる。
スープを口に含んだ瞬間、美味いよりも辛いよりもまず、懐かしさが込み上げて涙が出そうになる。もちろん美味しくて辛いのだが、それ以上に身体がこの味を求めていて、喜んでいるのが伝わってくる。
わたしの身体のどこか一部、おそらく骨の髄にはつくばのラーメンのスープがいて、呼応しているんじゃないか。数多くの担々麺を食べてきて、好きなお店は数あれど、ここまでしっくりと来る担々麺をご提供いただけるのは、つくばの七福軒。
久しぶりにつくばに帰る必要があり、急遽取ったお休み。「何を食べようか」の問いは、「どのラーメン屋に行こうか」と同義である。
たくさん浮かぶのだ、あの麺この麺と。それでも必ず七福軒は候補に上がる。しかも、坦々鶏蕎麦だけでなく、担々まぜも美味しく、このお店のスペシャリテであるエスカルゴバターが載った鶏蕎麦も、(今回もあれば食べようとしていた)純鯛蕎麦も、どれもこれもが美味しく、どの味にも思い出が詰まっている。
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でも、坦々鶏蕎麦なのだ。久しぶりのつくばにふさわしいのは坦々鶏蕎麦なのである。スープを口に含むと、辛さの前に甘さを感じる。この甘さは、ゴマによるものではなく、確かに動物性の脂の甘さで、それは七福軒が鶏にこだわっているが故である。だって坦々鶏蕎麦だから、鶏が本当に活躍している一杯。
最後の最後まで適切な辛味と、それを支える鶏。当たり前に担々は食べ切るが、あやうくスープも飲み干すところであった。
思い出すのはあの松辰
在学当時は大学付近にあり、移転してしまったが故に車でないといけなくなってしまった麺や 松辰。車でつくばに行くことがあったら、必ず選択肢に入れたい。
当時は味噌ラーメンが複数あり、味噌は札幌…の道民プライドを持ったわたしでも唸る、良い味噌ラーメンを食べさせてくれる松辰。ただ、どうしても口が求めるのは、鶏油まぜである。
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わたしを太麺LOVERにさせたのは、松辰だと思っている。もにゅもにゅと咀嚼している時間は、口の中の麺のことのみが頭にあり、ただただ多幸に溢れている。
甘じょっぱい、そして鶏油がかなり効いていて、見た目以上にジャンクで罪深い味。写真を見ていただいて分かる通り、様々な食感の具材があり、一口ごとに姿を変えて舌を幸せにしてくれる。
しかも、である。この麺を5分の3くらい食べ終えた後に、スープ割ができるのだが、ここでの変化がとても素晴らしい。鶏の出汁が効いた淡麗なスープで割ると、ジャンクがコクに変わり、味わい深い塩ラーメンになるのである。
ラーメンって、どうしてこんなにも楽しませてくれるんだろう。過去、ラーメンを生み出してくれた誰かと、ラーメン文化を発展させてきた業界のみなさまに頭が上がらない。
究極の適材適所…鬼者語
車あり出ないといけず、並ぶ覚悟がないと入店ができない鬼者語は、来店のたびに楽しさや、新たな発見がある。
鶏もうまいのだが、ここでは魚介の限定もので淡麗と思われる一杯を選びたい。
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食材として、牡蠣は味が濃く、どちらかというと鰆は蛋白で、組み合わせるとどうなるんだろうと思いながら、スープを口に含むと、表現が軽いが、飛ぶ。
まず、初手で牡蠣の風味が強く口の中を支配し、鼻から抜けていく。でも、飲み終えた後味には、やわらかな魚の気配。可憐に香る、穏やかな残り香が鰆なのである。
適材適所と様々な場所で聞くが、こんなに適材適所に食材を当てはめたラーメンは、これ以外にあるんだろうか。あるんです。鬼者語では、季節に合わせて鮟肝と車海老だったり、海蛸とホヤだったり、適材適所を生み出し続けてくれている。
「うっま」とどうしても思わず口に出てしまう。これで終わらないのが鬼者語である。
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替玉を食べずして、鬼者語の退店することを、わたしは許さない。御覧ください。このパスタのように盛られたず太縮れ麺。ご想像どおり、麺一杯分である。鬼者語を志す日の前日はしっかり抜き、その次の食も取れないことを覚悟する必要がある。
この日選んだのは替玉④(毎回4種類〜6種類くらいある)で、赤雲丹のソース。雲丹の高級感のある香りがミルキーに香り、一方で生臭さがゼロというものすごいバランスのソース、しっかり絡めて召し上がっていただきたい。
替玉はスープに浸けるものでは?という質問に関しては、つくばでは野暮である。そのまま喰らうのが正なので、ご留意いただきたい。そこそこ食べ進めた後に、フライドオニオンを加えていただくと、ジャンクが顔を出す。ただし、雲丹はジャンクになっても上品である。
イチカワに行く覚悟さえあれば、いろんなことがうまくいく
Japan Best Ramen Awards という、ラーメン屋が選ぶうまいラーメンのランキングがある。イチカワは、第4位を獲ったことがある煮干しラーメンのメッカである。
とにかく並ぶのだ。平日だって暑くたって寒くたって並ぶのだ。何の変哲もない住宅街で、ただただ立ち、麺を待つ。1時間で食べられればありがたい方かもしれない(なお、平日の開店40分前で2番手。その後5分で20人の長蛇の列…運である)。
それでも、ヒトはイチカワを求める。煮干しの香りは人類の遺伝子に旨いものだと刷り込まれているんだと思う。中毒である。
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ガツンと煮干し。とにかく深い煮干し。味も香りもとにかく煮干し。にぼしニボシ煮干しニボシともうとにかく煮干しが脳内をいっぱいにしてくる、恐ろしい一杯である。
そしてこのパッツパツの細麺は、煮干しに一番合う麺だと思ってくれる。絡めぬいてくれて、レンゲを使わずともスープを口まで届けてくれるのでありがたい。豪快にすする幸せを、全人類に味わってほしい。
そして味玉をさぼってはいけない。煮干しの出汁を打ち込んだ玉子、色が薄いと思う方もいるのではないだろうか。想像の5倍は味が濃いので覚悟いただきたい。とろっとした黄身からも香る煮干し。どこまで煮干しを味わわせていただけるんだろうか。
そして、イチカワに関してもこの感動の煮干しだけで退店してはいけない。
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煮干しのオイルが効いた醤油ベースのソースに、煮干しの粉が振られた和え玉。ラーメンがどちらかというとTHE NIBOSHIで、和え玉に関しては良い意味で駄菓子のような親しみやすさのある味(とはいえ超煮干し)、良い。
3分の1ほど食べ進めたら、生卵につけながら召し上がっていただきたい。それはそれはまろく煮干しを包み、ド煮干しから退店を滑らかにしてくれます。机上に、煮干しが香る酢が置いてあるはずで、それを回しかけても美味しいのである。忙しい。
ほんとうは伝えたいこと
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今日は七福軒に行って、やっぱりつくばのラーメンはすごいと思い、休みだったので自由に時間も使えるので、とにかく想いを届けるべくタイピングをし続けている(なお、この文章はつくば駅近くのEngiというお店で麦雑穀工房のおがわポーターを嗜みながら書いている。とっても居心地が良くて最高のお店です)。
伝えられないのだ。おすすめのラーメンも、本当はラーメン以外も推しているお店があるのだ。
「筑波山に行くんで、おすすめ教えて」に答える記事を書きたいと思っているのに、おすすめがありすぎて絞る難易度が高すぎるのだ。
とはいえ、である。そんなことも言ってられないので、このラーメン狂いの記事を習作として、本気でつくばのおすすめを紹介する記事を書きたい。何名かの方をお待たせしている気がするので、梅まつりまでに書きたいなという気持ちのみ表明して、筆を置き、つくばの古い飲み仲間と焼鳥を嗜んで来ようと思います。良いおやすみでした。